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第百五十九話

アルージェはデゾルブ剣を見つめる。

「この武器を作った時、どれだけ師匠が恋しかったか。鉱石の知識が鉄で止まっていたので、知らないことだらけで大変でしたよ」


「カカカカカ、そうじゃろうな。それで新しい鉱石を触る時ワクワクしたか?」


「そりゃもちろん!けど無駄にしたくないと思って、知識不足の自分を恨みましたね」


「カカカカ!それを体験したということは、もう立派な鍛冶屋じゃな。当分村にいるんじゃろ?」


「そうですね。ゴブリン退治の予定があるんですけど、ささっと済ませてそれからは少しの間滞在する予定ですよ」


「そうかそうか。アルージェに色々教えていたが、すっかり抜けていたことがあってな。教えたいんじゃがどうじゃ?」


「えっ!?新しいこと!?ぜひやってみたいです!ゴブリン倒したら武器の修繕しないといけないので、また来てますね!」


「おう!いつでも待っとるぞ!」

グレンデはニカッと笑う。


「ありがとうございます!なら先にちゃっちゃとゴブリン倒してきます!」


「おう、いってこい!」

アルージェはグレンデに手を振ってグレンデの家を後にする。

その足で村長の家に向かう。


他の家より一回り程大きな家の扉をノックすると、リベルが出る。


「むっ、君はフリードのとこのアルージェか?戻って来ていたんだな」


「はい、フォルスタでゴブリン退治の依頼を受けたので、確認や開始の連絡の為に来ました」

アルージェは背筋をピンと伸ばして話す。


「なるほど、君がか。いやその身のこなし、実力を疑っているわけではない。サイラスよりは明らかに強くなっているのが分かるよ」


「ありがとうございます。それで今日ゴブリン退治に行こうと思ってるんですけど、問題ないでしょうか?」


「あぁ、そうだな。あいつらを退治するのは早い方がいい。集落になっていて、数が多いから気をつけてくれよ」


「はい、お気遣いありがとうございます。そういえばサイラスは?」

家の周りをキョロキョロと見渡すが、声もしないし姿も見えない。


「あぁ、サイラスなら向こうの広場で自主訓練をしてるよ。あいつも努力して、今では私を抜いて村で一番強いんだ。君には到底及ばないがね。ハハハ」


「そうなんですね!本当に変わったんですね」

アルージェは昔のことを思い出す。


「そうだな。更生させるために私が本気で訓練したからな。後にも先にもあれほど恥ずかしい思いをすることは無いだろうな」

リベルは視線を上に向けて、あの時のことを思い出す。


「サイラスに会ってもいいですか?」


「あぁ、もちろん。サイラスも喜ぶだろう」

自主訓練しているという広場に向かうと、他の村人達と一緒に槍の訓練をしていた。


「おぉ!ほんとにやってるや。それにリベルさんが言ってたことは本当だったね。強くなってる!おーい!サイラス!」


アルージェは手を振りながら広場に駆けて行き、サイラスの名を叫ぶとびくっと体を震わしてこちらに振り向く。


「おいおいおい!アルージェじゃねぇか!戻ってきたのか!」

サイラスは嬉しそうに、アルージェに駆け寄る。


「うん、少しの間だけだけどね。ゴブリン退治と少し故郷が恋しくなって戻って来たんだよ」


「なに?お前がゴブリン退治?お前そんなに強くなったのかよ」

ゴブリン退治と聞いて、サイラスが驚く。


「どうだろ?打ち合いでもしてみる?」

アルージェがアイテムボックスから木剣を取り出す。


「おっ!いいな!お前負けても泣くんじゃねぇぞ!」

サイラスがアルージェから離れていく。


「おぉ!お前達戦うんか!おーいお前ら集まれ!二人がやり合うらしいぞ!」

ぞろぞろと広場にいた村人達が集まってくる。


「どっちが、勝つだろうなぁ」

「村で一番つえぇサイラスが負けるわけないだろ!」

「どうだかな、アルージェも村を出て訓練してきたかもしれないぞ!」


「俺はサイラスに今晩の酒を賭けるぜ!」


「なら、俺はアルージェだ!」


村人達はアルージェとサイラスどちらが勝つかで賭けまで始める。


サイラスは長い棒の先に布を巻きつけた木槍を構える。

身体強化はしないようだ。


アルージェも身体強化せずに木剣を構える。


サイラスが木槍をアルージェの方に向けて駆け出す。


アルージェは木剣で木槍の先を弾く。

サイラスはすぐに木槍の穂先をアルージェに向けなおす。

そのまま木槍で何度もアルージェに突きを繰り出す。


それもアルージェは全て最小の動きで躱す。


アルージェは躱しながら、徐々にサイラスとの距離を詰めていく。


そして、サイラスの槍をはじき飛ばす。

「な、なんだよ。全部避けるとか嘘だろ!お前強くなりすぎだ!」


「あはは、僕なんてまだまだだよ。どっちかって言うと鍛冶師とか付与師だからね。それにもうサイラスには負けられないからさ」

アルージェは、木剣をアイテムボックスに片付けながら笑う。


「お前、そんな嫌味な奴だったか?」


アルージェはそそくさとアイテムボックスから、訓練用の槍を取り出す。

「さぁ、もっとやろ!」


アルージェは槍を構える。


「いや、ちょっと待て!明らかに相手に・・・」

サイラスは叫ぶが、アルージェは槍を構えてサイラスに駆け始める。


「お前、だいぶおかしいよ!」

サイラスは槍を構えて、アルージェの槍に応戦する。


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