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第百五十八話

朝目を覚ます。

「うぅん!」

アルージェは伸びをして、部屋を見渡す。

土を固めて作った仮設の家なので、ひんやりとしていて気持ちがいい。


ルーネは相変わらず丸まって寝ているが、一瞬目が空いたので恐らく起きているけど目を閉じてるだけだろう。


ミスティはまだ眠っていたが、マイアと秘密結社らびっといあーの姿は既になかった。

エマはむにゃむにゃと眠っている。


二人の寝顔を見て、少し微笑む。


「それにしてもマイアさん、ほんといつ寝てるんだろ?大丈夫かな」

アルージェは立ち上がり家から出る。


「そういえば僕は川で水浴びはしたけど、みんなは大丈夫なのかな?でも、そっかみんな魔法使えるから、その辺りはなんとかしてるんだろうな」


仮設では無いアルージェの家に向かう。

畑を横切ると、既にフリードがせっせと畑仕事をしていた。


「父さん、おはよー!」

アルージェがフリードに向かって叫ぶと、フリードがこちらに気付き手を振り返してくれる。


そのまま家の中に入るとマイアが炊事場に立ち、食事を作っていた。

秘密結社らびっといあー達はせかせかとマイアの手伝いをしている。


「あら、アル起きたのね。他の皆は?」

サーシャは机に座って、飲み物を飲んでいた。


「おはよう、母さん。まだ二人とも寝てるよ」


「そうなのね。着いた初日だもの疲れてたのね」


「あはは、それもあると思うけど、そもそも僕達が起きるの早すぎるんだよ。王都ではもうちょっとみんな起きるの遅いみたいだよ」


「そういえば、そうだったかもしれないわね」


「アルージェ様、食事が出来てますよ」

マイアの声に合わせて、秘密結社らびっといあーのティラノサウルスっぽいぬいぐるみが机に食事を置く。


「ありがとうね」

持って来てくれたティラノサウルスにお礼を言う。


ティラノサウルスは口を開けたまま、ただアルージェを見つめる。


「マイアさんも朝からありがとうね。それよりマイアさんちゃんと寝てる?」

マイアにも感謝を述べてから食事を食べ始める。


「えぇ、もちろん寝てますよ」


「そっか、それならいいけど。恥ずかしい話なんだけど僕達マイアさんに頼りすぎて、マイアさんが倒れたら僕達生活出来なくなるかもしれないからね」

アルージェは笑いながら話す。


「ふふふ、そうかもしれませんね。肝に銘じておきます」

マイアは微笑み炊事場に戻る。


サーシャは二人の会話を聞いてニヤニヤしていた。

「アル、いつの間にいい男になったわねぇ」


「なんのこと?」

パクパクと食事を食べながらサーシャにききかえす。


「ううん。なんでも無いわよ」


食事を終えて、マイアにもう一度感謝を述べてから席を立つ。

秘密結社らびっといあーの大きい方のパンダが、そそくさと皿をマイアの方に持っていく。


「さて、なら僕は師匠のとこに行ってくるよ!」


誰からの返事も聞かずに、鍛冶場に向かう。


鍛冶場に近づくに連れて、金属を一定のリズムで叩く音が聞こえる。


「師匠、朝早いんだな」

邪魔したら悪いと思って、ノックせずに家に入る。

鍛冶場でグレンデが何かを修理している姿が見える。


「集中してるし、邪魔したら悪いね」

終わるまでアルージェは師匠の家を物色することにした。


「うぇ、師匠お酒のゴミばっかりじゃん。それより、まだこんなにお酒飲んでるんだ。ほんと元気だな」

散らかっているゴミを纏めて、少し部屋を片付ける。


片付けを始めてからしばらく経つと、金属を叩く音が聞こえなくなる。


「おっ、終わったかな?」

アルージェは鍛冶場に向かい、置いてあった机をノックする。


音に気付いたグレンデが振り返る。

そしてアルージェのことを見て、笑顔になる。


「アルージェか、よく戻ったのぉ」


「はい、お久しぶりです」


「まさかフォルスタで何かやらかしたか?」


「あはは、まさか!少し事情が有って戻ってきました」


「そうかそうか、今でもちゃんと武器は作っておるのか?」


「はい!もちろんです!」

アイテムボックスから作った武器を取り出す。


「ふむ、腕は落ちていないようじゃな」

グレンデはアルージェが作った武器を手に取り、武器を観察する。


「後こんなのも作りましたよ!」

魔道具の付与を解除するために作った、可変式片手半剣トツカノツルギを見せる。


「これは、ミスリルか!いい出来じゃな!刻印の刻んでおるのか面白いの!どれどれ?」

グレンデは可変式片手半剣トツカノツルギの刻印を読み解く。


「ん?これは大きな剣かと思ったら被せものか?」


「これはこれで剣ですよ。でもちょっとした仕掛けがあります。可変式片手半剣トツカノツルギ・弐式=ヤタノカガミ」

アルージェが呟くとミスリルが外れて、アルージェの周りをフヨフヨと浮かび始める。


「おぉ!なんとも面白い構造を思いついたな!そっちの剣はデゾルブ鉱石か!」


「えっ、すごい!見ただけでわかるんですね!」

アルージェはデゾルブ剣もグレンデに渡す。


グレンデはアルージェから剣を受け取る。

「当り前じゃ!何年やってると思っておるんじゃ。ん?おかしいのデゾルブ鉱石なのに魔力を持っていかれないぞ?」


「そうなんですよ!デゾルブ剣にも刻印を刻んでいまして、特定の魔法を発動しないと魔力を吸わないようにしてるんです。見ててくださいね」

アルージェは魔力を練って、大きな水の塊を出し空中に常駐させる。


それに向かってパスを繋げる。


すると、水の塊は徐々に小さくなっていく。


「こんな感じで、僕が指定したものだけから魔力を吸い取るようにしたんです」


「ほぉ、なかなかやるな!そうか、アルージェは付与魔法まで身に着けたか。デゾルブ鉱石に刻印をするのはさぞ骨が折れたろう。こりゃ儂を抜くのも近いじゃろうな」


「何言ってんですか、師匠!最近また張り切って鍛冶やってるって、父さんから聞きましたよ?」


「えぇい、フリードの奴、余計なことを!」

グレンデは少し恥ずかしそうにする。



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