「あっ!サイラスの声聞こえなくなった。きっとビシバシと扱かれてるんだろうなぁ。あんだけ強い人達に囲まれてたら強くなるしか無いからね。村の為に頑張ってもらわないと」
グレンデの家に入り鍛冶場に行くと炉に火を入れて、グレンデが待っていた。
「やっと来たか。遅かったな」
「あはは、サイラスと会ったんで少し話し込んでました。今日もまた辺境伯様からの依頼分ですか?」
「あぁ、まぁ今日には終わるじゃろ。ささっと終わらしてしまうぞ」
「はい!そういえば、この鎧には付与魔法刻まないんですか?」
「んあ?そこまでは頼まれてないからな。まぁ兵卒の為の鎧じゃ向こうで付与魔法をすることも無いじゃろうから、アルが練習したいならやっても良いが」
「なら鍛冶をササっと終わらして、刻印刻んじゃいます!」
アルージェは肩を回して、鎧の製作に取り掛かる。
空がオレンジ色になる頃になんとか鎧を作り終わった。
「やった!暗くなるまでに完成しましたね!このまま付与魔法します!」
アイテムボックスから刻印に必要な道具を取り出す。
道具は無くても出来るがある方がやりやすいので、なるべく使うようにしている。
「なんの付与つけとこうかなぁ。みんなが使うんだったら
アルージェはニマニマと笑いながら何を付与するか考える。
「その顔見て毎回思うのじゃが、子供がする顔じゃないな」
アルージェが武器や鎧を見ながら笑っているいつものことなのでグレンデは気にしていなかったが、第三者が見ると間違いなく衛兵を呼ぶだろう。
「よし!決まり!
置いてある鎧を見渡す。
辺境伯からの依頼ということで、なかなかの数の鎧を製作した。
「まぁ、今までこれだけまとめてやるなんて考えたことも無かったしなぁ。今から付与魔法手伝いの
アルージェはどうするのが一番効率的かを考える。
「あっ、そうか
アルージェは酒を飲み始めていたグレンデに話しかける。
「んあ?どうしたんじゃ?」
グレンデの前にはほとんど減っていないつまみと何本か空の酒瓶が転がっていた。
「相変わらずいい飲みっぷりですね。鎧のことなんですけど、納期って近いですか?」
「んあ?いや、まだしばらく余裕はあるぞ。もともと一人でやる予定だったからの。長めにしてもらったんじゃよ」
「おっ!ならちょっと別のこと先にしたいので、今日は帰ります!では!」
アルージェはグレンデの返事も聞かずに家を出ていく。
「カレン教授はどこかなぁ?」
当ても無いので、まずはアイン達がいるであろう訓練場に向かう。
「うぎゃぁぁぁぁぁ!もう無理!もう無理だってば!」
訓練場に近づくにつれてサイラスの悲鳴が聞こえてくる。
「何を言っている。今日は五倍だからな。まだまだ終わらんぞ」
「そうだよ、サイラス。まだ半分過ぎたところじゃないか」
「みんな頑張ってるなぁ。特にサイラスは二人に囲まれて逃げ場なさそうだ」
ミスティとアインがサイラスをビシバシと鍛えているようだ。
サイラス以外の村人達が地面に倒れ込んでいた。
訓練場を見渡すと、ラーニャは端でエマと一緒にアインに教えてもらった棒術の型を練習している。
「おぉ!ラーニャさんの棒術形になってる!すげぇ!ん?あれ?カレン教授いないじゃん」
エマとラーニャさんがキャピキャピと型を練習しているのを邪魔するのは申し訳ないので、サイラスから離れたアインに声をかける。
「アインさん、カレン教授ってここにはいないんですか?」
「おっ、アルージェ。同じ村にいるのになんだか久しぶりにあった気がするよ。カレンはアルージェの家に行くって言っていたな。なんか最近、アルージェの家の近くで魔力の動きがおかしいとかなんとか」
「魔法・・・?もしかしてマール!?ありがとう、アインさん!」
アルージェは急いで家に戻る。
走って家まで戻るとルーネとマールそしてカレン教授が居た。
「あ!にぃにぃ!」
マールがアルージェに気付き、駆け寄って抱きついてくる。
「マールはいつも元気だね」
頭を撫でると、マールは嬉しそうに撫でられる。
「アルージェ、ちょっとこっち来て」
カレンがジト目になり、アルージェを呼ぶ。
「は、はい・・・」
カレンがジト目で見てくる時は、大体怒られる時だ。
嫌な予感がすると思いながら、カレンに近づく。
「君さぁ魔力操作での魔法行使方法、マールちゃんに教えてないよね?」
「えっ、なんのことでしょうねぇ。ははははは」
カレンがギロリとアルージェを睨む。
「うっ、すいません。教えました・・・」
カレンの威圧に負けてアルージェは身体を窄める。
「はぁ・・・。やっぱりね。こんな辺鄙な村でバリバリに魔力が動いてたからおかしいと来てみたら、マールちゃんが魔力操作して魔法使ってて驚いた訳よ」
「魔法使いたいって言われたので、つい・・・」
「別に魔法を教えるのは問題ないわよ。ただ、こんな小さい子が魔法を使って、もしものことが有ったらどうするの?ちゃんとそこらへん考えてた?」
「うぐっ・・・、すいません。そこまで頭が回ってなかったです・・・」
「でしょうね。魔法って確かに便利だけど、それ以上に危険なの。マールちゃんみたいな小さい子は何が良くて何が駄目なのか、まだ判断できないことが多いわ。だから学校では教師がいて、何かあればすぐに対処する。それに万が一が起きないように細心の注意を払ってるのよ」
「はい、おっしゃる通りです」
「まぁ良いわ。私もちょうど手持ち無沙汰だったし、マールちゃんに魔法教えてあげるわよ」
「えっ、ほんとですか!?さすが、教授!最高です!助かります!」
先程までのしおらしい態度はどこに行ったのか、アルージェは急に厚かましくなる。
「はぁ。君ってほんと調子良いわねぇ」
カレンはため息をついて呆れる。