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第百八十三話

呼びにきたメイドの後ろをみんなでゾロゾロと着いて行く。


食卓が見える部屋の横を通り抜け、そのまま廊下を進む。


あれ?食卓から離れていっちゃうぞ?

とアルージェが疑問に思っていると、中庭に到着する。


中庭ではメイド達が慌ただしく動き準備をしており、私兵団達も可能な限りメイド達の手伝いをしていた。

どうやら今日は中庭で盛大にパーティをするらしい。


スベンも団長と呼ばれる程の地位に居るのに自ら大きな鉄板を肩に担ぎ、しっかりと準備を手伝っている事に親近感が湧いた。


スベンの後ろに続いて別の私兵団が三人がかりで大きな肉を運んでくる。


「おぉ!肉デカい!」

アルージェは大きな肉をみてテンションが上がる。


この世界でなんていうかは不明だがアルージェが知っている言葉で言うなら、バーベキュー形式で肉を焼き食事にするようだ。


「よし!早速始めようか!」

辺境伯がメイドに指示を出すと専属シェフが肉を食べやすい大きさに切り始め、そばに置いてある皿にどんどんと置いていく。


メイド達はそれを受け取り、せかせかと鉄板の前に待機しているもう一人のシェフに渡す。

そしてシェフは鉄板に置いて焼く。


ここでも非常に連携が取れた動きだ。


「ここのメイドさん達はテキパキと動いてて凄いな。みんなマイアさんみたいに出来るメイドさんなんだろうなぁ」


「ほ、ほんと凄いですね」

エマもメイド達の動きを見ながら、アルージェに同意する。


アルージェが動いているメイドさん達を見渡す。

「それになんだか綺麗な人が多いような?」


「むっ、その台詞は看過出来ないな」

ミスティがアルージェを睨む。


「いや!ちょっと待ってください!そういうつもりじゃなくてですね!」

アルージェは慌てて手を前に出し、あわあわと上下させる。


「ははは、早速愛娘の尻に敷かれているようだな」

辺境伯は二人の仲が良さそうで嬉しくなる。


「いやぁ、ミスティさんとエマには色々お世話になっていて何も言えないんですよ。あははは」

アルージェは話しながらもミスティから徐々に距離をあけていく。


「待て、アルージェ。まだ話は終わってないぞ」

ミスティがアルージェの手を掴もうとするがスカッとからぶる。


「あっ!あっちでスベンさんがなんかしてる!見に行こっと!」

アルージェはミスティの手をスルリと躱して、私兵団の元に向かう。


「こら!アルージェ!」

ミスティが振り向いた時には、身体強化をしてかなり離れたところまで移動していた。


「むっ、もうあんなところに、アルージェは魔力と体の使い方が上手すぎる」


「確かに今の身体強化発動から完了までの速度はすごかったわね。あそこまで魔力の操作を自由自在に出来るのは本当にすごいわ。私が詠唱破棄してもあんな速度で魔法発動できないわよ。世間に公表したら魔法の概念がひっくり返っちゃうわね」

カレンもアルージェの魔力の動きを見ていたらしく、感心する。


「アルージェ君は本当に元気ですねぇ。さっきすごい魔力を使って戦っていたんでしょ?」

ラーニャはアルージェの体力に感心する。


「そうでしょうね。屋敷の中まで魔力で震えるなんて尋常じゃないわよ。私には無理ね。そもそも訓練であんな魔力出す方がおかしいけど」

カレンがやれやれと首を振る。


「くっ、やっぱり教会でもっと戦いたかったよ」

アインは少し悔しそうに拳を握る。


「バカ言ってんじゃないわよ。あんたとあれがぶつかったら、教会丸ごと潰れちゃうじゃない」

カレンはアインを睨む。


「あー、ちょっとした冗談だよ。ははは・・・。あっ、僕は私兵団の人達に挨拶してないなぁ。ちょっと向こう行って挨拶してこようかな!」

そそくさとアインは私兵団達の元に向かう。


「アインさん・・・。あんなに強いのに、カレン教授とラーニャには頭上がらないんですね・・・」

エマがボソッと呟く。


「男はね、理想を追い求める生き物だからね。自分の為に尽くしてくれる女性には頭が上がらないものなのさ」

辺境伯はうんうんと頷きながら話す。


ミスティの小言から逃げてきたアルージェは私兵団達の話の中には入ろうとしたが、既にグループが出来上がっていて話に入ることができなかった。

仕方ないので、外巻きで頷いたり笑ったりして話を聞いている雰囲気を出してみる。


「おっ、こんな後ろの方で何してんだ?」

アルージェが振り向くと先程戦ったジェスが立っていた。


「あっ・・・」

アルージェはジェスの姿を見て俯く。

訓練なのに安い挑発に乗って、頭に血が上ってしまったと後ろめたかったのだ。


「ははは、何俯いてんの。俺、別に気にしてないからさ」

ジェスは軽い調子で話す。


「本当すいません。ミスティさんの事悪く言われて頭に血が昇って・・・」


「だから気にしてないって!お嬢もいい男に出会って俺は嬉しいぜ。ハハハハ!それより、あんなに強いなんて驚いたなぁ。ここまで結構死線潜ってきたつもりでいたけど、本当に死んだと思ったのは、これで三回目だわ。ハハハハ!子供に殺されるって思ったのは初めてだけどな」

ジェスはアルージェの肩に手を回す。


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