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Chapter7 - Episode 33


「さて、と」

『おや、確認は終わりですか?』

「えぇ。ちょっと他に確かめないといけないモノが出来ちゃって」


そう言いながら、私はオンラインヘルプを開き問題の項目を探し……見つける。

『特殊ランクアップについて』。


「何々……?medium magiになったプレイヤーはプレイ中の行動によって特殊なランクアップ……?」


書かれていた内容を要約すれば、分野の専門家になった、という事だ。

例えば、戦闘ばかりしていて習得魔術も攻撃系ばかりとなっていた場合、そのプレイヤーは戦闘の専門家である『pugna戦闘 magus術師』に。

周りのサポートを主にしていたならば、『auxiliaris補助 magus術師』に。

プレイヤーの行動ログを参照して、そのプレイヤーの一番専門としているコンテンツの特化したランクへと昇格させるというもの。

勿論昇格する事によって、より対象のコンテンツに対して専門的に、効率的に物事を進めやすくなるという恩恵もあるようだった。


そして私の場合。

Lingua言語 magus術師』はその名の通り、言語関係に専門化したランクだ。

魔術言語やそれ以外……例えば、私はあまり触れていないものの、このArseareには特有の共通語が存在しており、普段はゲーム側が翻訳してくれているソレを研究している、だったりだとか。

そういう事をしていると主にこのランクに昇格する事が多いらしい。

掲示板を確かめてみると、このランク専用の掲示板が存在しており……中身を覗いてみると、大体が検証班や世界観考察系のプレイヤーだった事から、ある程度察する事も出来た。


……このランク、私みたいに戦闘ばっかりやってる人がなるランクじゃないね?

私の場合はある意味特殊な状況、と言ってもいいだろう。

戦闘や普段の移動などから魔術言語を多用し、それ以外でも……先ほどまで行っていた等級強化や、アイテム作成にまでそれを用いている。

それに加え、今は【羨望の蛇】からセーフティロックの外れた魔術言語を教わっている状態だ。

ある意味ではそこらの専門家よりもプレイに根付いているといっても過言ではないのかもしれない。


「十中八九、フィッシュさん達はpugnaだろうなぁ……」


そして普段共にプレイする事の多い面々がどの専門ランクになっているかはある程度察する事が出来る。

フィッシュや灰被りなんかは戦闘特化のpugnaであるだろうし、バトルールはauxiliaris。

メウラやRTBN辺りは使役系の専門があるならそれになるだろう。


『専門家になったのですか?』

「えぇ、なんか魔術言語系の専門家になったらしいです」

『あら……良いじゃありませんか。よく使ってますし、丁度良いのでは?』

「まぁデメリットとかは別段ないみたいですしねぇ」


そんな会話をしつつ。

私は元々の作業である、新しい魔術の作成に戻る為に使う素材の選別を行っていく。

あまりこういう専門だの何だのというのは私の得意な所ではない。

今まで通りにプレイしていて、恩恵を感じたらありがたいと感じる程度くらいが頭を使わなくて丁度いいのだ。



次に取り掛かるのは、魔術言語を意図的に暴走させた上で、その暴走した魔術言語によって生まれるモノらのヘイトを私の敵対者だけに向ける為の魔術の作成だ。

構築に失敗し、瘴気を纏った魔術言語は意志を持って周りを襲う。

それには術者も含まれており、放っておけば厄災となる……というのが【羨望の蛇】の言っていた事だが。

ある程度魔術として制御できる状態に出来てしまえば、多少のリスクはあるものの素の状態で使うよりはずっと良い使い方が出来るだろう。

問題はそれを達成するためにどんな魔術を創り出すか、という点なのだが。


……出来れば、敵対してる対象をそこに閉じ込めるタイプが良いけど……。

生憎と、私の手持ちの素材の中には相手を閉じ込める類の性質を持ったものはない。

だが、暴走した魔術言語のヘイトを意図的に私からずらす事くらいなら出来るかもしれない……そういう性質を持った素材ならば心当たりがあった。


「よし、じゃあ新しい魔術を作っていきますよー」

『おぉー』

「まず、適当な魔術を創ります」

『お、おぉー?なんで適当な魔術を?』

「狙った効果の魔術を創る為に、一旦別の適当な魔術を創った上で、等級強化の時に出現する魔導書を書き換えるんです。一部の書き換えは絶対ありますけど、まぁ大体は狙った性能になるので、システム側に全部任せるよりはこっちの方が良いんですよ」


私の説明についてこれているのかいないのか。

巫女さんはふんふんと首を縦に振って頷いていた。


兎に角。

私は適当な素材で適当な魔術……【ああああ】を創りだした。

本番はここからだ。


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