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Chapter7 - Episode 34


【魔術の等級強化が選択されました】

【【ああああ】の等級は現在『初級』となっています】

【習得者のインベントリ及び、行動データを参照します……適合アイテム確認】

【『霧霊狐の血液』、『霧兎の血液』が規定数必要となります……規定数確認】

【【ああああ】の強化を開始します】


既定文を読み飛ばしつつ、私は魔導書に書かれている魔術言語をほぼ1から書き直していく。


改めて再確認するが、私が今回魔術を創る上でやりたいのは、暴走した魔術言語に襲われないようにする事だ。

その為に転移系の性質を持った素材をかき集めてきたわけだが……そこからどう、魔術言語に作用する魔術にするかは、実の所全く決めていない。

一応、今現在書いている魔術の効果に当たる部分には『魔術言語に作用するように』などと書いてはいるものの……システム側にここを書き換えられてしまったら致命傷どころじゃ済まないだろう。


それに加え、どの範囲で作用するかも決めておかねばいけない。

例えば、単体指定型であれば私が魔術言語を暴走させる度にこの魔術を使わねばならない可能性が出てくる。

例えば、範囲指定型であれば私がその範囲内に入る事が出来なくなる。

メリットもデメリットもあるものの、今回考えるべきはデメリットの方を重視した方が良いだろう。

元よりデメリットでしかないものを安全に使う為の魔術なのだ。

飲み込むのが大変なデメリットを、ある程度許容できるデメリットに変えるだけでも十分仕事をこなしていると言えるのだから。


「……ん?」


と、そんな事を考えつつも順調に魔術言語を書いていた時。

私は開いているページの右上辺りに変なマークを発見する事が出来た。

まるで鎖のようなアイコン。

当然ながら魔術言語の中にそのようなアイコンは存在せず、今まで……というより、先ほど等級強化を行った時は見た記憶がない。


先程と現状で変わった所を考えれば答えらしきものは思い当たる。

……ランク、かな?

Lingua magusとなった私は、ゲーム内では一応魔術言語系の専門家という事になる。

そして今開いている魔導書は、中身が魔術言語で書かれた……ある意味、専門家である私が取り扱うべき代物。


「とりあえずやってみれば分かるかなっと」


詳細が分からないまま、というのは専門家としてはいけないだろう。

そう考え、試しにその鎖のようなアイコンをタップしてみると。

次に私の前に現れたウィンドウによって、そのアイコンの意味を理解した。


目の前に出現したウィンドウの中には、複数のが表示されており。

それぞれのタイトルは【魔力付与】や【衝撃伝達】……【血狐】や先程等級強化したばかりの【血求めし霧刃】の名前も発見できる。

今このウィンドウ内に表示されている、私の習得魔術の名称が付いた本達。

そして鎖のようなアイコンから導き出される答えは、


「もしかして、連携とか連鎖とか……そういう機能?」


そう呟くと同時、新たにウィンドウが出現する。

トピックスが久々に出てきたようだ。


――――――――――

Tips:魔術同士の連携機能


等級強化などによって魔導書をプレイヤーが編集する際、既に習得している魔術を連携させる事が出来る。

連携の仕方によって、魔術を連鎖的に行使する事ができ、様々な状況に対応する事が可能となる。

また、この機能は魔術管理画面からいつでも解除可能。


※この機能はLingua magus到達者に対してのみ開放される。

――――――――――


「成程」


習得している魔術に左右されるものの、同時に2つの魔術を扱えるようになるというのは魅力的だ。

今までも同時に使っているように見えて、結局発声行使と動作行使を重ねる事によって無理やりに発動させていただけのこと。

それがシステム的に同時に発動、もしくは連携元の魔術の効果にシナジーがある形で発動するのならば……十二分に戦力強化に繋がるだろう。


……なら方向性は決まったかな?

連携が出来るのであれば、少しばかり事情が変わってくる。

今書いている魔導書側に必ずしも転移能力を付けるのが必須ではなくなるからだ。

ならば、と私は今まで書いていた魔術言語を改めて書き直し……構築を大幅に変えていく。

魔術のメイン効果を転移能力を用いたものから別のモノに変え、連携する魔術も指定する。


すると、連携する魔術が発動するタイミングなどが魔導書のページにリアルタイムで記された。

それも弄れるかと触って確かめてみると、他の魔術言語と同じように編集する事が可能であった為に、自分に都合の良いタイミングで発動するように変更し……魔術が完成した。


「よし、確定」


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