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ShortStory1 - Episode 3


「先に言っておくと、ここでいう魔術っていうのは西洋魔術。東洋魔術の事じゃあないからそこは頭に入れておいて」

「あー、東洋魔術っていうと……神道とかそこらへんのやつだったっけ?」

「そうそう。あとは陰陽道なんかもそうね。ただ今回、というかこのArseareというゲームにまだ陰陽道みたいな魔術体系が発見されてないから説明を省くだけよ」

「成程ね。あ、続きどぞ」

「……魔術は大きく分けて8つって言ったわね、その中でも知ってるものとかあったりする?」


魔術の種類。

キザイアがいうのだから8つほど本当に種類があるのだろう。

かといって、私の乏しい知識の中にはそれらしいものは……いや、あるか。


「それってルーン魔術とか?」

「あぁ知ってるのね……って、ゲッシュ関係からかしら」

「まぁ一応。他だとよく聞くのは魔女術とかだよね」


ルーン魔術に魔女術。どちらも魔術というものを少しでも調べてみようとすれば目に触れる単語である。


ルーン魔術はその名の通り。

北欧に伝わる、ルーン文字を使った魔術のことだ。

魔術言語に似ている所がある、というか元ネタは恐らくこれだろう。


そして魔女術。

おまじないや占いから、製薬などの知識や技術の事を指すもの。

ウィッチクラフトなどとも呼ばれることがある大まかな括りのことだ。


「そうね、ルーン魔術と魔女術。どちらもこのArseareにも存在しているものだわ」

「魔術言語とルーン魔術って違いあったりするの……?」

「一応あるにはあるわよ。汎用的に使うのなら魔術言語、局所的に使うのであればルーン魔術ってくらいには」

「?……あー、成程。ルーン魔術の方が効果量が高いのね」

「そういう事。まぁその分習得するのに色々とやらないといけないらしいから、使い手も少ないのだけど」


結局の所、魔術言語は汎用的に魔術と同じような現象を起こせるだけの文字だ。

それの効果は組み合わせれば目の前にいるキザイアのような、格上のプレイヤーでも倒せるし追い詰めるための決定打にもなり得る。

だが、ルーン魔術はルーン文字を扱う都合上、その場でぱっと組み立て行使できるような魔術ではないのだろう。だからこそ、使用する場面が限られてしまう。


「元々杖や媒介なんかも用意して、ルーン文字を掘って、それを血で染めたりなんかをしないといけないし、コストも高いわ。だからこそ、戦闘で使うなら……場所を決めて、罠として使うなんてのが一番いいかもしれないわね」

「成程ね。確かにそれを考えると罠が一番楽か……ステータス強化系は?」

「あるにはあるけれど、効果が切れたら破棄しないといけないからコストが嵩むわよ?」

「まぁそれはそれで罠で使う場合も同じだから」


実際に使うかどうかは分からないし、そもそも習得できる可能性があるのかどうかもわからない。

良くも悪くも情報が充実していない現在はあまり運用に関して考えても仕方ないかもしれない。


「で、魔女術の方は?」

「そっちはまぁまぁ簡単、というか生活に根付きすぎててどれから説明した方がいいのかってレベル。ほら占いとかおまじないの説明とか言われても仕方ないでしょう?」

「それは確かに。じゃあ製薬の方は?……もしかして、この世界って薬剤師っていないの?」

「居ないわよ?店に卸すようなクオリティを出せるのは一部の魔女っていう存在だけらしいわ」


魔女。

誤解されることが多いが、実の所、魔女という存在は女性だけではない。

それこそ、現実の最大宗教の認識では男性の魔女もいるし、実際調べてみると魔法使いというよりも魔女の方が使われている資料の方が多い。


「成程ね……じゃあ私たちプレイヤーもやろうと思えば薬を作れると」

「そういう道具さえあればね。知ってる?乳棒とすり鉢ですらまともに売ってないのよ、この世界」

「……え?マジ?あ、いや確かに見た記憶がない……」

「そういうこと。それこそ自分で作った木の器と石で何とか真似事が出来るならいいけれど……薬を作るって事は、同様に危険も伴うから」

「それにこんな世界で薬を作ったらどんな効果が表れるか分からないから、とりあえず強引にやるのは得策じゃない、と?」

「そういうことね」


魔術やそれに準ずる技術が存在する世界だ。

現実で行う製薬と、この世界で行う製薬では全く違う工程があったり、それ以外にも魔術によって変化を促す必要がありそうで考えるだけでも頭が痛くなってくる。


「ちなみに魔女術に関しては学ぼうと思えば図書館でも本があったはずよ。そっちを調べてみるってのも一種の手ね」

「あぁ成程……確かに図書館ならそういう本もあるか。まぁ薬を作るかは置いといて、実際に作るってなったらレシピも必要になってきそうだねぇ」

「……たまーに『魔女の遺したレシピ』っていうアイテムがダンジョン内に転がってることもあるらしいわ」

「うげ、私割と見逃してそう」


新しく頼んだ紅茶に口をつける。

紅茶の良し悪しなんてものは分からないが、それでも香りが良いものだというのが分かる。なんとなくで頼んだが、ハーブティだろうか?


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