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ShortStory1 - Episode 2


思ったよりも近くに呪術へと繋がる道があったようだ。

思い返せば私の知る系統である【血術】や【霧術】というのも、文字を分解していけば、【血の術】と【霧の術】なのだから、【呪の術】として【呪術】があってもおかしくはない。

そうなってくると、だ。


「ん、じゃあ系統分けで【呪術】があるとして、その2種類に分かれるってのは何かしらの影響が出たりする?」

「する。類感呪術と感染呪術、っていう種類にはなるんだけど……そうね、まずは類感の方からいきましょう」


そう言いながら、キザイアは虚空からそれらしい藁人形を取り出した。

呪術、というよりは呪いをかけるならこれ!と言ったような雰囲気のもの。


「ほら、昔から呪いたい相手に模した藁人形に釘を打ち付けてー……っていうのがあるでしょう」

「あぁ、あの。よく鬼女板の人たちがやってそうな奴」

「やめなさい。……で、ここでのポイントは『相手を模した』という点。類感呪術の基本は、類似したもの同士は互いに影響しあうって所にあるのよ」

「あぁ、じゃあ相手に模した藁人形に釘を打ち付けて相手を苦しませるっていうのはそういうこと?」

「そういうこと。正式な名前としては丑の刻参り、なんていった方が分かりやすいかしらね。あれは最終的に呪われた相手が死ぬわけだけど……そりゃあ心臓に当たる位置に釘なんて打ち付けられたら死ぬわよね?」

「死ぬねぇ。そりゃあ死ぬ。吸血鬼でも死ぬのに人間が生きられるわけないじゃんね」


類似したもの同士が互いに影響しあう。

キザイアの出している例でいうのならば、胸に当たる部分を釘で打ち付けられた藁人形に影響されてしまえば……それと同等の痛みや、場合によっては肉体の損傷まであり得るのだろう。

実際に肉体の損傷まで行くほどに濃い呪いであったら、他の方法をとった方が色々と効率的だろうが。


「他にも太陽を模したとされている、てるてる坊主なんかを晴れてほしかったら吊るすように類感呪術には色々な形があるわ。別に苦痛を与えるだけが呪術じゃないし」

「成程ね……じゃあ感染呪術ってのは?」

「そっちの方が説明はしやすいかしら。その呪いたい相手の一部……例えば髪の毛とか爪ね。それらを呪術に用いることで相手に影響を与える事が出来るとされてるやつ」

「……それってもしかして」

「私たちが等級強化に使う『追記の羽ペン』もそれに関係するものでしょうねぇ。思いっきりその人間の一部……それも影響が強そうな血なんてものを使ってるわけだし?」


思えば、他にも色々とそれに関係してそうな魔術を知っている。

というか、もしかしなくとも【血術】は感染呪術に関係する類の系統なのだろう。

とはいっても、私の取得している【血狐】や【血液強化】はそれらしくはないし、唯一それらしいと言える【血液感染】に関しても、本当にそうであると声を大にして言う事は出来ない。


「あ、相手の一部を使うっていうなら、ほら。コトリバコとかどうなの?アレは感染呪術って類でいいの?」

「あれは……どうでしょうね。魔術よりは呪術寄りの話ではあるし、代物でもあるでしょうけど、相手の一部を使っているわけでも、相手を模しているわけでもない。あぁ、でも類感が近いのかしらね。多分アレを作る過程で使われた材料達の方に寄っていくんでしょう」

「対象は女性と子供だっけ。確かに使われてる物を考えるとそれっぽいかなぁ」


コトリバコ。

水子の死体、動物の雌の血で作られる、呪う対象の一族を絶やす事を目的とした呪いの箱だ。

その呪いの強さは使われた水子の数によって変動し、『ハッカイ』と呼ばれるコトリバコの中でも非常に強力なものになれば、呪う側すらも命を落とす可能性があるとされている、危険な代物。

都市伝説などとして有名ではあるものの、もしかしたら現実に存在しているかもしれないそれは、想像しやすい呪術の1つだった。


「……Arseareにコトリバコみたいな呪物とかあるのかな」

「あるんじゃないかしら。魔術があって、【呪術】も存在して。呪いの力なんてものがあるんだから、それに準ずるものがないとは言い切れないわ」

「うわぁ、相手にしたくない。私とか対象だよ?キザイアは……どうなの?それ」

「……そういう性別対象の呪いはアタシにとってはどちらともとれる、って事で」

「オカマつえー……」


実際の所、システム的にオカマはどういう判定になっているのか気になるものの。

私の取得魔術の中に、性別を判定して効果を発揮するような魔術はないため、確かめる事は出来ない。

現実でもそうだが、どうやら仮想現実でもオカマは最強の生物だったらしい。


「呪術については割と分かったかなぁ。……で、魔術の方にも種類が結構あるんだっけ?」

「そうね。大体……大まかに分けたとしても8種類くらいかしら」

「多いなぁー……ちょっと頭の休憩にケーキでも食べようか」


ウェイトレスに対し、適当なケーキを注文し一時頭の休憩時間にすることにした。

キザイアもなんだかんだぐちぐちと文句は言っていたものの、ケーキを一口食べるといい笑顔で次々と口の中に放り込んでいく。

長い授業となりそうだ。


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