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うさちゃん助け隊

「モフモフ!」


 レナさんは面倒くさがると思ったのですが、ウサギの獣人を助けると聞いて走ってきました。普段動いていないのに急に走って大丈夫ですか?


「あなたが神に選ばれし勇者様ですね!」


 アルストロメリアさんが笑顔でレナさんを迎えます。確かにそうなりますが、選んだのは暗黒神だしレナさんは妖術師ですよ? 勇者とか言うとまた余計なものがついてきちゃうからその呼び方はやめた方が。


「さて、ギルドを通して闇エルフの依頼を受けると貴族がうるさいので、ここは匿名の人物による依頼という形にしましょう」


「えっ、ギルドで依頼を引き受けてくださるんですか?」


「うちの冒険者が働く以上、貴族が何を言おうがギルドのサポートはしたいですからね。貴重な戦力が知らないところで失われたら大損害ですから。それにハイネシアン帝国は他の冒険者達とも因縁がありますし、ギルドとしてもあの国の内情を把握しておきたいという思惑があります」


 冒険者は死んでも自己責任な職業ですが、ミラさんはサブマスターですしレナさんもこれで無帰還の迷宮の第一功労者ですから、ギルドとしても無関係ではいられません。


 だいたい、特に何をしてくれるわけでもない貴族が単に気に入らないというだけで文句を言ってくること自体、私が気に入らないんですよね。盗賊の件でどれだけの犠牲を払うことになったか忘れたのですか。いい加減に学習してくれませんかねあの役立たずの見栄っ張り達は。


 闇エルフだろうが死霊術師だろうが、悪さをしないなら依頼を受けても冒険者になっても構わないと思うんですけどね……さすがに人間の国の宮廷に仕える身としてこれは過激な発想でしたね。でも過去の件の反動からか、本当にそんな気持ちになっています。だから色々と理由をつけてこの闇エルフを助けようとしていますし、もしかしたらミラさんも同じ気持ちなのかもしれません。


「それじゃ、報酬はどこから出るの?」


 レナさんが現実的な質問をしました。普通に考えて依頼主からですが、この方はお金を持っているのでしょうか?


「お金のことならご心配なく! こう見えて闇エルフにはけっこうな蓄財があるんですよ。カーボ共和国のお金持ちが服を買っていきますので!」


 服ですか?


「闇エルフは華やかな服を作るのが得意なのよ~」


 そうなんですね、なんか意外です。


「では、適正な額の依頼料を請求させていただきますね。その分ギルドが責任を持ってサポートしますから」


 変にサービスすると甘えが出ますからね。ちゃんとした対価を貰えば、妥協なく任務の成功を目指せます。


「プロ意識ってやつですね、素敵です!」


 アルストロメリアさんはなんだか感激しながらお金を出しました。何やらヒラヒラした装飾の付いた袋を開けると中には金貨が沢山。本当にお金持ちですね。これは闇エルフとの関係構築をもっと真剣に考えなくてはなりません。


「目がD(デント)マークになってるわよ~」


「そ、そんなことないですよっ!」


「金貨はシエラですもんね」


 そうそう、デントじゃ銀貨ですもんね……ってそうじゃないです!


「なんにせよ、話がまとまったなら私達はハイネシアン帝国に向かうからね。サラディン、コウメイ、行くわよ!」


「ああ」


「ウサギの獣人もなかなか興味深いですねぇ」


 どこから出てきたんですかあなた達!?


 いつの間にかその場にいたサラディンさんとコウメイさんがやる気満々で返事をします。


「えっ、サラディンさんとコウメイさんも行くんですか? もうほぼ最強チームじゃないですか」


 うちのギルドの強い人を上から順に選んだような人選ですが、なんで皆さんそんなにやる気なんですかね?


 というか、エルフの森の開拓はどうなったのでしょうか。アレキサンドラ女王を助け出した(まだ帰ってきてない)から任務終了でいいのですが。


「ギルドとしてハイネシアン帝国の情報を把握しておきたいだろうと思ってな」


 サラディンさんがニヤリと笑って言いました。なるほど、偵察も兼ねているのですね。そういうところ抜け目ないですよね、さすが最強傭兵です。


「うさちゃん助け隊の皆さん、よろしくお願いします!」


 いつの間にそんな名前がついたんですか。アルストロメリアさんも一緒に行くようです。闇の教団とはいえ司祭ですから、このパーティーにはありがたい仲間といえるかもしれません。


「モフモフ!」


 レナさんはそれしか頭になさそうですね。大丈夫ですか勇者様?

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