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第93話 遊園地を堪能!

■その93 遊園地を堪能!■


 ゴーカートは、遊園地の外周をぐるっと回るコースで起伏がある箇所や、森の中を走ったりもするので、人気があります。保護者組や双子君達は1人一台で走りましたが、主と桃華ももかちゃんは2人で一台。

 梅吉さんは、ミラーハウスでの怒り? 悲しみ? ストレス? そんな感情を爆発させて、爆走していました。その後を、元気よく夏虎かこ君・冬龍とうりゅう君と続いて… 主の運転する車は起伏の激しいコースで、なぜだかクルクル回って止まってしまいました。桃華ちゃんに運転を変わりましたが、今度は森の中で木に挟まりました。心配で後ろを走っていた三鷹みたかさんと笠原先生は、その度に車を立て直してくれました。

そして…


「「この二人に、免許はとらせない」」


と、それぞれの心の中で誓いました。




 フリーホールでは、垂直に自由落下している間に、梅吉さんが悲鳴と共に心臓も飛び出したんじゃないかと、錯覚を覚える程でした。途中で円弧に沿って水平になった瞬間、青空が真上に見えて、「死んだ」と思ったようです。そんな顔面真っ白の梅吉さんを、乗らなかった笠原先生はスマートフォンで録画です。もちろん、青くなった三鷹さんも一緒です。

 双子君達は連続2回乗っても元気でした。主と桃華ちゃんは、1回で満足したみたいです。


 定番のお化け屋敷では、梅吉さんがチームを作りました。主・冬龍君・三鷹さんチーム。桃華ちゃん・夏虎君・梅吉さん・笠原先生。あまりの怖さに、双子君達は泣いて出て来ました。主と桃華ちゃんは、カタカタ震えていました。


「桃ちゃん、今夜は一緒に寝ようね」


桜雨おうめ、ナイスアイディア」


「「お姉ちゃん、桃ちゃん、僕たちも一緒に寝るー」」


 出口で先に出ていた主と冬龍君は、泣いている夏虎君と手を繋いでいる桃華ちゃんが出て来ると、一番に駆け寄って抱き合っていました。


 夕方にあるショーは見ないで、お土産を買う事にしました。園内のお客さんの8割がショーに集まるので、お土産選びもゆっくりです。


 買ったお土産を持って、最後の観覧車は皆で乗りました。夕日も落ちて、すぐ近くに園内の明かり、遠くに町の明かりが見えました。皆で夜景を見ながら今日の感想を言い合っていると、一周はあっという間でドアが開いた時には、双子君達は遊び疲れてぐっすり眠ってしまいました。


 帰りの運転は、笠原先生です。真ん中の列では、梅吉さんにもたれかかって、桃華ちゃんがうつらうつら… そんな桃華ちゃんの膝を枕にして、夏虎君が寝ています。後ろの席では、三鷹さんにもたれかかって、主もうつらうつら… 右手は確りと三鷹さんと繋がっています。もちろん、主の膝枕で、冬龍君が寝ていました。

 ラジオも音楽もかかっていない車内は、双子君達の寝息が良く聞こえます。


「梅吉兄さん… 今日はありがとう」


 不意に、主が呟きました。もう、寝言に近いですね。


「ん?」


 梅吉さんは、バックミラー越しに、主をチラッと見ました。主、8割、寝ています。


龍虎りゅうこ… いっぱい笑ってて… 私も… 楽しかった…」


 言葉が途切れ途切れなうえに、最後は完全に寝落ちです。がくん!! と主の頭が落ちそうになって、三鷹さんがそっと支えながら膝枕をしてくれました。


「… うん。良かった」


 主の言いたいことは、ちゃんと梅吉さんに伝わったようです。梅吉さん、「お兄ちゃん」の顔でニッコリ笑いました。そして、自分に寄りかかっている桃華ちゃんを見ました。桃華ちゃんも安心しきった表情で、梅吉さんに寄りかかって、完全に眠ってしまっていました。


「… お兄ちゃん、辛いよぉ…」


 小さく、本当に小さく呟いて、梅吉さんは桃華ちゃんの頭をナデナデしました。


「二人とも、もう少しで卒業だもんなぁ…」


 梅吉さんの呟きを聞いて、笠原先生はバックミラーでチラッと梅吉さんを見ました。

 三鷹さんは主の左手、冬龍君の背中に置かれている手を撫でながら、薬指にはまっているガラスの指輪を見つめていました。




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