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第243話 小さな恋心2

■その243 小さな恋心2■


 皆さん、こんにちは。ミタカさんのワンコのアキ君です。


 今日は、オウメちゃんの弟の双子君達が、ボクのお散歩をしてくれています。学校、お昼ご飯食べたら、終わりだったらしいです。早く帰って来てくれて、ボク、嬉しい。


 最近の商店街は楽しい音楽がいっぱい流れてて、お店もキラキラしていて、とっても楽しいです。いつもは、商店街と住宅地の間にある、大きな公園で遊んでから帰るんですけど…。今日は住宅地の奥までお散歩みたいです。


「押す?」


 双子のお兄ちゃんのトウリュウ君が、一軒のお家のベルを押そうとしました。10分。


「… 僕が押すよ」


って言って、お家の前に立って、10分経ったんですよ? カコ君、ボク、そろそろお散歩再開したいです。


「お、2人とも、どうした?」


「「佐伯君」」


 大きな花束を抱えた、サエキ君が来ましたよ。


「佐伯君、お仕事?」


 サエキ君、お店のジャンパーの上から、お店のエプロン付けてますもんね。


「ああ。ここの家に、クリスマスプレゼントの花束。近いから、歩いてきたんだけどさ… 2人とも、どうした?」


 サエキ君、お勉強もしているのに、お仕事もするなんて偉いです。


「うん、あのね、友達に少し早いんだけど、クリスマスプレゼントをと思って…」


 いつも元気なカコ君が、モジモジしてます。


「あー… そっか。うん、ちょっと待ってな」


 何か考えながらそう言うと、サエキ君はお家のベルを押しました。カコ君、慌ててトウリュウ君を引っ張って、後ろに下がります。ピンポーンって可愛い音がして、ちょっとすると痩せたおばさんが出て来ました。


「こんにちは、シラカワフラワー店です。花束をお届けにあがりました」


 サエキ君、何かお話をしながらカコ君を見ました。おばさんは何回か頷いて、カコ君に微笑みながら手を振ります。


「んじゃ、行こうか」


 お家のドアが閉まったけど、サエキ君は花束を抱えたままです。抱えたまま器用にお電話しながら、トウリュウ君とカコ君に声をかけて、歩き出しました。



 歩いて、電車に乗って、また歩いて… 今日のお散歩は、いっぱい歩きますね。ボク、そろそろ疲れたんですけど、ここで休憩ですか?


「佐伯君、ここ…」


 ミタカさんちの病院ですね。外も中も、とっても大きいんですよね。ボク、オウメちゃんが入院している時、連れて来てもらったから、覚えてます。本当は、ボクとかは入っちゃダメだけど、特別だよって、ウメヨシさんが。


「おばさんが、病室の番号教えてくれたから、手渡ししろよ。秋君、しばらく縫いぐるみな」


 了解です!

 サエキ君は、ボクをジャンパーの中に入れてくれました。お顔は出させてくださいね、苦しいから。目の前にいっぱいのお花があって綺麗だけど、葉っぱがくすぐったいですね。


 ボク、縫いぐるみになりきるの、慣れてます。すれ違う人達はサエキ君が抱えてる大きなお花と、お顔だけ出してるボクを見て、ニコニコ笑ってます。トウリュウ君とカコ君は、仲良く手を繋いでサエキ君の後ろをついて来ました。

 サエキ君が入ろうと入り口で止まったお部屋には、4つのベッドがあります。けれど、一番奥の窓際のベッド以外、誰も居ないですね。窓際のベッドには、女の子が座ってご本を読んでいます。


「香川さん、クリスマスのプレゼントをお持ちしました」


 サエキ君が入り口で止まったままドアをトントンってして声をかけると、その女の子がこっちを見ました。


「プレゼント?」


「失礼しますね。隣の県の、伯母さんからみたいですよ。ああ、お家の方にお届けしたんですけど、こっちに持って来て欲しいって、お母さんが」


 サエキ君、お話ししながら、どんどんお部屋の中に進んで行きます。


「わぁ… 大きな花束。ありがとうございます」


 女の子は、とっても白いお顔です。痩せていて、黒い目が大きく見えます。髪の毛を全部入れてるのかな? ピンクの毛糸の帽子が可愛いですね。


「花瓶が、ベッド横のテーブルの下にあるって聞いてて… あ、これだ」


 サエキ君はベッドの横にある小さなテーブルの下の扉をあけて、ガラスの花瓶を出しました。


「お花、入れて来ますね。それまで、あの子とこの子、よろしく」


 サエキ君、ボクを女の子が座っているベッドの横のイスに置いて、代わりに花瓶を持ってお部屋を出て行っちゃいました。入り口で立っていた、トウリュウ君を連れてっちゃいました。


「あなた、本物のワンちゃんなのね」


 女の子の手が、優しくボクに声をかけてくれました。本当なら、「わん」ってご挨拶したいけど、まだ縫いぐるみのフリですもんね。


「秋君って、名前なんだ」


夏虎かこ君」


 カコ君、いつもはスタスタ歩くのに、今はオズオズって感じです。遠慮、してるんですか?


「病室まで… ごめんね。おばさんが教えてくれたから… あの…」


 カコ君、顔を下げて、ほとんど自分の足先を見てるんですけど、女の子の顔もチラチラって見てます。


「今日は、気分がいいから大丈夫。薬も少し前から飲んでないから、浮腫むくみも出てないんだ。イス、座って」


 女の子が笑うと、カコ君はすんご~くホッとしたみたいです。


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