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第261話 雪と温泉・雪合戦

■その261 雪と温泉・雪合戦■


 皆さん、こんにちは。ワンコのアキ君です。

 今日は雪がすんご~く、いっぱいいっぱいある所に来ました。大きな旅館に、2回お泊まりするんですって。お約束を守れるならワンコもどうぞって、ボクも連れてきてくれました。今回はぬいぐるみのふりしなくていいから、楽チンです。けど、ず-っと電車にのってたし、寒いし冷たいし… ボク、皆が遊んでいる時は、お部屋でお昼寝してました。


「秋君、ただいま~」


「雪、すごかったよ~」


「楽しかった~」


って、双子のトウリュウ君とカコ君とナオちゃんが、お手々もホッペも真っ赤にして帰ってきましたよ。


「秋君、秋君、スキーってスッゴク早いんだ! 雪の上でも足が埋まらないし、スイスイ動けるんだよ!」


 カコ君、スキーって、こないだTVでやっていた、あの長~い板を足につけるやつですか?


「ショートスキーなら、秋君も出来るんじゃないかな?」


 トウリュウ君、『ショート』って、『短い』って意味ですよね?サエキ君がしていたお勉強で、ボクも覚えましたよ。


「あのね、秋君、大きな雪ダルマがあったよ。私より大きいの! カマクラを作ってる人も居たんだよ」


 ナオちゃん、カマクラって、何ですか?


「秋君も、少しは雪で遊ぼうよ!」


って、カコ君がボクを抱っこしてお部屋から飛び出しました。後ろから、慌ててトウリュウ君とナオちゃんがついて来ます。


「宿の裏に居てね~。お風呂の準備出来たら、お迎えに行くからね~」


「はーい」


 ミワさん、3人はボクがちゃんと子守りしておきますからね。お任せください!!


 旅館の中には、ボク以外のワンコも居ました。大きかったり、小さかったり… 皆、良い子にご主人様と一緒です。ボクのご主人様は、オウメちゃんから放れないんですよね。ご主人様の方が、ボクなんかよりワンコっぽいです。なんて事を思っていたら、いつの間にかお外でした。

 もう、お月様が出てます。でも、雪が旅館の窓からでてる光を反射して、キラキラキラキラしています。カコ君がいつもの調子でダーッと奥まで走ったら、すぐに暗い所に入っちゃうぐらいですけど。


「寒いね~。上着、忘れちゃったね」


 ナオちゃん達は、ボクみたいに毛皮が無いですもんね。


「動けば熱くなるよ」


 カコ君、ボクを抱っこしたまま、ぴょんぴょんね始めました。


「秋君、カコ、もう暗いから、あんまり放れちゃダメだよ」


「はい!」


「わん!」


 トウリュウ君、ボク、ちゃんとお約束しますよ。


「ほら秋君、雪だよ」


 カコ君もボクと一緒にお返事して、ボクを雪の上に下ろしてくれました。ボク、雪は初めてじゃないですけど… やっぱり冷たいです。


「秋君、抱っこしようか?」


 ボクがぴょんぴょん撥ねるように歩いてるのを見て、ナオちゃんが抱っこしようと両手を広げてくれました。


「秋君、男の子だろう!」


 カコ君が、ボクに雪玉を投げつけて来ました。


「わん!」


 当たりませんよ~!!


「ほらほらほらほら!!」


 カコ君、次から次へと僕に雪玉を… 最初だけでした。飛んでくる雪玉を右に左にと、どんどん噛み砕いていたら、カコ君は雪玉を作る時間が無くて、雪をザッカザッカかけて来ます。


「わんわんわんわん!!」


「秋君、雪食べたら、お腹壊しちゃうよ」


 トウリュウ君は、カコ君に雪玉を投げました。


「秋君、尻尾フリフリして、可愛い~」


 ナオちゃんが、雪玉を作ってるんですね。お握りみたいにギュっギュっギュっ… 硬そうですよ?試しに、作り置きの雪玉をかじってみたら、やっぱり硬いです。


「痛い! ちょっ、和桜なおちゃん、握りすぎ!! 冬龍とうりゅう、加減して投げろよ!!」


 うん、当たったら、痛いですよね。ボクも、この雪玉には当たりたくないです。


「クスクス」


 そんなボク達を見て、笑っている女の子がいますよ。少し奥に行った、木の影に居ますね。暗くて、よく見えませんけど。


「君も一緒に遊ぶ?」


 カコ君が、声をかけました。


「いいの?」


 ちょっとだけ、ビックリした声が返ってきましたね。


「もちろん」


「一緒に遊びましょう」


 トウリュウ君とナオちゃんも声をかけると、木の影から女の子が出て来ました。髪の毛が短くて、青い毛糸のワンピースを着ています。


「いっくぞー!!」


 って、カコ君が雪玉を投げ始めました。雪合戦の再開です! 上に下に、色んな所から雪玉が飛んできて、いい加減ボクの目も回り始めた頃、ミワさんがお迎えに来ました。出入り口で、ミワさんが呼んでいます。


「3人とも、お風呂行きますよ~」


「あらあら、上着も着ないで… 一生懸命遊んだのね、体から湯気が立ってるの、ここからでも分かるわよ」


 ミヨさん、皆を見てビックリです。汗、ビッショリかいてますもんね。


「体冷えちゃうから、早く温泉に行きましょうね」


 苦笑いしているカズミさんは、ナオちゃんのお母さんで、ミワさんの妹さんです。


「あのね、お母さん。お友達が出来たの。お友達も一緒に、お風呂に行ってもいい?」


 ナオちゃんは、ボクを抱っこしてカズミさんに駆け寄りました。トウリュウ君とカコ君は、まだ雪玉を投げ合っています。


「もちろん、良いわよ。でも、その子のお母さんに、一声かけなきゃね。心配しちゃうから」


「うん。ねぇ…」


 ナオちゃんが嬉しそうに振り返って、女の子の声をかけようとしました。


「あれ? 帰っちゃったのかな?」


 あの女の子、居ないですね。いつの間にか、帰っちゃったんですかね?


「泊り客なら、そのうち会えるわよ。さぁ、早くお風呂に行きましょう」


 ミヨさん、寒そうですね。ミヨさんも一緒に、雪合戦しますか?


「2人とも、お風呂行くわよ~。早くしないと修二さんや佐伯君に、二人のご飯食べられちゃうから」


「「ダメダメ!!」」


 ミヨさんに言われて、2人は慌てて走ってきました。


「さ、あったかい温泉に入って、美味しいご飯を食べましょう!」


「「ごはーん!!」」


「わん」


 ボクも、お腹すきました!


「あれ、これ、ナオちゃんが作ったの?」


 旅館に入ろうとした時、トウリュウ君がドアの側にある小さな雪だるまを見つけました。小さな小さな雪だるまが3つと… これ、ボクですか?


「あの子と、またここで遊べたらいいなと思って」


 雪だるまのお腹に、字が掘ってありますね。『ま』『た』『ね』


「明日の朝も来てみようよ」


「時間、まだあるしね」


 2人は、雪だるまの下に『遊ぼうね』て、手をグーにして雪を押しながら書きました。太い字ですね~。


「明日遊ぶときは、スキーのグローブを付けた方がいいわね」


 3人とも、お手々が真っ赤っか。その手をスリスリしながら、皆でお風呂に向かいました。ボクも、ペット用の温泉に入れるんですって。楽しみだな~。


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