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第262話 雪と温泉・エネルギーチャージ

■その262 雪と温泉・エネルギーチャージ■


  年明け早々、バタバタと始まった団体旅行。主達は夜の大宴会場で、ようやく新年を迎えたことを実感しました。浴衣姿の24人の前には、お正月の特別なお膳が皆を歓迎しています。主と桃華ももかちゃんは、お気に入りのかんざしで簡単なお団子ヘアーです。席は…


↓勇一さん・美世さん・三島先生 ・梅吉さん ・桃華ももかちゃん・笠原先生

↑修二さん・美和さん・和美さん ・小暮先生 ・桜雨おうめちゃん・三鷹みたかさん

↓坂本さん・冬龍とうりゅう君 ・和桜なおちゃん・夏虎かこ君・佐 伯 君・田中さん 

↑岩江さん・高橋さん・工藤さん ・松橋さん ・近藤先輩 ・大森さん


 こんな感じで、大宴会場の真ん中に座っていました。勇一さんの列と修二さんの列は向かい合わせ、坂本さんの列と岩江さんの列が向かい合わせ。修二さんの列と、坂本さんの列は背中合わせです。ワンコの秋君は、主と三鷹さんの間にチョコンと、専用のお膳を用意してもらいました。

 他にも、大宴会場にお客さんは居るんですけど、主達が一番人数が多いみたいですね。


「あけましておめでとうございます」


 あと4時間もすれば元旦も終わるこの時間に、ようやく皆揃って新年のご挨拶です。乾杯の音頭は修二さん。四の五の言わず、スパッと一言でした。


「今年もよろしくなー、乾杯!」


 大人はアルコール、子どもはジュースで乾杯です。今日は、旅館の女中さんが全部やってくれるので、主達は楽しく食べることに集中です。

 皆、いっぱい遊んだから、お代わりも沢山です。お膳だけじゃ足りなかったみたいで、メニューを貰って別注文もしたりしました。


「子ども達、お腹壊さなきゃいいけれど」


 双子君達や和桜ちゃんだけじゃなくって、主や桃華ちゃんの食欲も目を見張るものがあります。美和さん、心配になっちゃいますよね。でも、お隣の修二さんも、お酒相当呑んでますよね?


「美和ちゃ~ん」


 あ~あ、修二さん、マタタビ嗅いだニャンコみたいに美和さんのお膝にスリスリしてますよ。


「修二さん、お部屋まで誰にオンブしてもらおうか? 三鷹君? 工藤君? 近藤君? あ、坂本さんがいいかな?」


「自分で歩きます」


 坂本さんの名前を聞いたら、ピッ! って座りなおしました。しかも、胡坐あぐらじゃなくて正座。


「あら、遠慮しなくていいのに」


 それを聞いていたらしく、背中合わせに座っている坂本さんが修二さんの肩に手を置きました。


「俺の好みは美和ちゃんだから、野郎は無理!」


 修二さん、肩に置かれた手を撥ね退けて、グラスの日本酒を呑みます。


「あら、坂本さんは素敵なレディーじゃない。私なんかより、面倒見はいいし、美容関係は詳しいし、綺麗よ~」


「やだ、美和さんったら、そんな本当の事~」


 美和さんと坂本さんは、お顔を見合わせてウフフフ… って笑い合いました。


「じゃぁ、修二さんにはフラれちゃったから、和桜ちゃんを抱っこして戻るわ」


「あら、寝ちゃいました?」


 坂本さんの言葉に、美和さんの隣で食べていた和美さんが慌てて振り返りました。和美さんの後ろに、和桜ちゃんが座っているんですけれど…


「限界だったみたいで、食べながら…。あら、冬龍君」


 坂本さんもそっちの方を向くと、冬龍君が正座してお茶碗を持ったまま寝てしまった和桜ちゃんの手から、そっとお箸やお茶碗をとってお膳に戻していました。


「坂本さん、まだ呑み足りないでしょう? 僕がオンブして行くよ」


 冬龍君は言いながら、和桜ちゃんのお膳をずらしてオンブしようとしゃがみました。


「やだ、冬龍君たら… 私、キュンとしちゃったじゃない」


 坂本さん、後ろで修二さんがお酒を盛大に吹きだしましたよ。あ~あ… 前に座ってる勇一さんの顔にかかっちゃった。


「冬龍君、大丈夫?」


 言ったはいいものの、どうやってオンブしようか悪戦苦闘している冬龍君に、和美さんが心配そうに聞きます。夏虎かこ君が、見かねてお手伝いしてくれました。


「… 大丈夫」


 冬龍とうりゅう君、男の子ですね。何とか和桜なおちゃんをオンブして立ち上がった冬龍君は、背中で熟睡してグニャグニャになっている和桜ちゃんを落とさない様に、少し前傾姿勢になりました。


「俺も、部屋に帰ります」


 そんな冬龍君の隣に、主をお姫様抱っこした三鷹みたかさんが立ちました。


「お姉ちゃんも?」


「ああ、食べながら寝た」


 それは、まばたきした一瞬だったと、桃華ももかちゃんは皆に言いました。


「ありがとう、三鷹君。お願いね。冬龍もしっかりね」


 そう言う美和さんの横で、修二さんはブッスーとした顔で、お酒を呑んでいます。一緒に戻ろうとした桃華ちゃんは笠原先生に止められて、こちらもちょっとだけ眉間に皺が寄りました。


「僕は、もう少し食べてから」


 そう言って、別メニューで頼んだ肉じゃがを食べ始めた夏虎君を置いて、冬龍君と三鷹さんはお部屋に向かいました。お腹いっぱいでウトウトしていた秋君は、慌てて三鷹さんの後を追います。


 廊下はとても静かで、和桜ちゃんの規則正しい寝息が耳元で良く聞こえます。その音に安心しつつも、冬龍君は隣を歩く三鷹さんをとても羨ましく思っていました。


「僕も、早く大きくなりたいな」


 体も手もまだまだ小さくて、熟睡した和桜ちゃんをオンブして歩くのは、本当はとってもとっても大変なのに… 隣の三鷹さんはいとも簡単に主を抱っこして、スイスイ歩いてて… これが、大人と子供の違いなんだと、冬龍君は痛感しました。


「そうだな」


 そんな冬龍君の気持ちに気が付いた三鷹さんは、優しく微笑んでゆっくり歩いてくれました。



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