■ その264 雪と温泉・初夢■
ああ… これは夢なんだ
僕の主の
―ホワイトアウト―
強烈な吹雪きの中、主は身動きが取れません。前後左右、真っ白な雪が吹きすさんで方向感覚どころか平衡感覚も狂って、聴覚も荒ぶる雪の音しか聞こえず、ただただその場に立ちすくんでいるだけです。
真っ白な空間に、ポツンとあるオレンジ。スキー板もスノーボードも無く、スキーウェアだけで主は立ちすくんでいました。
けれど、主はとっても落ち着いています。スキーのグローブをつけた手が見えるだけで、それより先は真っ白。容赦なく顔に当たる雪は痛いし冷たいけれど、主は胸元に手を置いて僕(キーホルダー)に声をかけてくれました。
「カエルちゃん、出てきてくれると、嬉しいな」
ウェアの下に、僕は大切にしまわれています。キ-ホルダ-としては不格好だけれど、ここは主の夢の中。僕は主の思いのままに、形を変えられるんです!
ポン!
って、僕は事故にあう前の姿、ただの黒い折りたたみ傘で、主の手の中に現れます。
「ありがとう、カエルちゃん」
主はご機嫌に、僕をさしてくれました。すると、今までの吹雪が嘘のように大人しくなって、フワフワと優しく落ちてきました。
「
そんな雪が降る空を見上げて、主は僕をさしたままクルクルと回ります。いつの間にか、スキーのグローブは消えて、スキーブーツはカエルが付いた黄色い長靴になっていて、オレンジのスキーウェアはカエルがポッケに付いた黄色いカッパになって、真っ黒な折りたたみ傘の僕は、持ち手にカエルの顔が散らばった黄色い傘になっていました。それを身に
「
そんな主に、黒い折りたたみ傘をさした男の子が声をかけました。傘の影から、黒いスニーカーが見えました。小さな主が、視線をあげていきます。細身の白の学ラン、袖口には細い青の3本線は、
中学生にしては、少し高めの身長でした。髪は少し硬そうな、黒のベリーショート。褐色の肌に、力強い黒の三白眼はとっても優しく主を見つめていました。そして、傘を持つ親指の付け根に、小さなホクロ。
「私の、カエルの王子様」
カエルの傘がポン! と消えました。両手を広げて、満面の笑みを浮かべた主の姿は、小学2年生への進級を控えた頃の姿に成長していました。
カエルの長靴やカッパは卒業したけれど、同学年のお友達の中でも小さくて痩せています。薄く入れた紅茶色の猫っ毛も背中まであって、ハーフアップにまとめて、薄いピンクのフワフワしたリボンを付けています。
「俺の、カエルのお姫様」
雪が、桜の花弁に変わりました。ヒラヒラ舞い散る薄ピンクの花弁の中で、カエルの王子様は黒い傘を手放して剣道着を着た大人に成長すると、主を軽々と抱き上げました。
高校生の、今の主です。白いセーラー服姿の主は、確りと
「三鷹さん、大好き」
僕と、小さな主が持っていたカエル柄の傘は、緑色の雨蛙に姿を変えて、そんな主達を見上げていました。