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第300話 小さな恋のライバル?

■その300 小さな恋のライバル?■


 ワンコのアキ君です。

 オウメちゃんのお家は、9人で住んでます。オウメちゃんの家族5人と、従姉妹のモモカちゃんの家族4人。3階建ての一軒家で、1階はオウメちゃんちのお花やさんと、モモカちゃんちの喫茶店が半分づつ。2階は2つのキッチンと、広いリビングと、2つのトイレと、2つのお風呂。3階は2つのトイレと、皆のお部屋です。お部屋は10個あって、1つは使っていなかったんですよね。


「その使ってないお部屋を、私とママに貸してくれるって」


 早めにお昼を食べたら、トウリュウ君とカコ君とナオちゃんは、商店街のスーパーにお買い物です。ボクのお散歩も、ついでに行っちゃいます。けれど、いつものスーパーにボクは入れないから、出入り口でいい子に待ってます。

 日曜日のお昼過ぎだから、人がいっぱい通ります。お散歩友達のワンコも通ります。顔なじみのおばあちゃんがオヤツをくれたり、小さな子が撫でてくれたりします。今日の商店街の音楽は、ウキウキしますね。


 重たいものは、後でウメヨシさんが買いに行くからって、今はタイムセ-ルの卵とかお野菜を頼まれました。だから、トウリュウ君もカコ君もお買い物袋にはいっぱいお野菜が入ってます。あ、ボクが食べられない玉ねぎもある。

 卵のパック係はナオちゃんがピッタリですね。卵のパックが3つ入った袋を、割れないように大事に大事に抱えてます。


「じゃあ、4年生から同じ学校に行けるんだね」


「クラス、一緒だといいな~」


 トウリュウ君とカコ君は、同じクラスなんですよね。


「あ、白川じゃん。お使い?」


「秋君、お散歩?」


 トウリュウ君とカコ君のお友達です。人がたくさん行ったり来たりしている中で、よく見つけましたね? ボクみたいに、お鼻で分かるんですか? 2人とも、どこ行くんですか? 大きなお荷物持ってますね?


「あ、白川の従姉妹ちゃん! 今日、遊びに来たの?」


「なになに? 今日はご馳走? 白川のお姉ちゃんのご飯、食べたいー」


 お友達たちは、ナオちゃんに気が付いて近づきますけど、近すぎません? ボクだったら、そんなに近づかれたら、噛みますよ。


「友坂、近いよ」


 ほら、トウリュウ君が怒った。お野菜の入った袋を、お友達とナオちゃんの間に強引に押し込んだけど、潰れてませんかお野菜? やっぱり、卵はナオちゃんに持っていてもらって、正解ですね。


「今日、お姉ちゃんはデートで居ないから、桃ちゃんとお母さん達の料理だよ」


「えっ! 白川のお姉ちゃん、彼氏居るの?! ショックなんだけど」


 カコ君の言葉に、大きい方のお友達がしゃがみ込んじゃいました。


「なに? サトル、白川のお姉ちゃんの事、好きだったの? 年上じゃん」


「年上って言ったって、憧れの女子高校生だよ! しかも、あんなに可愛いなら、年上なんて気になんないし!」


 お友達のトモサカ君に言われて、サトル君は勢いよく立ち上がりました。

サトル君、年上が好きなんですね~。でも残念でした。ボクのご主人様、オウメちゃんが他の人とお出かけしたりするの、許すわけないですもんね。


 トウリュウ君、トモサカ君が少し放れたから、ナオちゃんを自分の方に引っ張りました。… ボクのご主人様みたいですねぇ、トウリュウ君。


「オレ、白川のお姉ちゃんより従姉のお姉さんの方が好み。美人だし、ほら、オッパイ大きいじゃん」


 それは、カサハラ先生が怒りますよ。無表情で、モデルガンを乱射してきますよ。


「残念でした。桃ちゃん、もう結婚しちゃったよ」


「わん!」


 そうですよ。


「「け、結婚?!」」


 わっ! そんなにビックリしないでくださいよ。ボクのお耳、キンキンしちゃったじゃないですか。


「通行人に迷惑」


 そうですよね、トウリュウ君。


「だって、結婚だよ?! 結婚!」


「高校生じゃん!」


「女の人は、親の許可があれば16歳で結婚できるんだよ」


 さすがトウリュウ君、物知りです。


「しかも、桃ちゃん来月には高校卒業だもんね」


「わうわう」


「… ショックだ。とっても、ショックだ。ショックだから、帰る」


「オレも」


 2人とも、どこに行こうとしてたんでしょうね? ガックリ肩を落として歩き始めましたけど、すぐにトモサカ君が戻ってきました。


「従姉妹ちゃんがいるじゃん! オレ、友坂ともさか浩二こうじって言うんだ。父さんも母さんも身長は高い方だから、オレも高くなる予定。成績は中の上。もちろん、得意教科は体育。特技はサッカーで…」


「だから、近いって」


 トモサカ君、ナオちゃんの手を握ろうとして、トウリュウ君に思いっきりお顔を後ろに押されました。トモサカ君、ひっくり返っちゃいました。体、硬いですね。カコ君だったら、ブリッジしますもんね。


「白川、友達に酷くない?」


「うちの親戚に、手を出そうとするからだよ。梅お兄ちゃんやお父さんなら、さっきの挨拶の時点で吹っ飛んでるよ」


 トウリュウ君、鳴き真似するトモサカ君を見る目が怖いです。

まぁ、でもそうですね。ナオちゃん、オウメちゃんにそっくりだから、ウメヨシさんもシュウジさんも、もちろんご主人様も容赦しませんね。


「友坂、オッパイ大きい方が良いんだろう? ナオちゃんはまだ…」


夏虎かこ、煩い」


 トウリュウ君の手が、隣のカコ君のお顔を思いっきり後ろに押します。

おおお~! 綺麗なブリッジ!! カコ君、さすがです! でも、道行く人が皆見てますよ。注目の的ですね。


「ともかく、うちの親戚をそういう目で見ないでね」


 トウリュウ君、言いながらナオちゃんの手を握って歩き出します。

カコ君、いつまでもブリッジしてないで、行きましょうよ。


「2人とも、また明日ね~」


「わん!」


 ボクがカコ君の腕をカプカプ甘噛みすると、勢いよく元の体勢に戻って、お友達に手を振ってトウリュウ君を追いかけます。ボクは、そんなカコ君を追いかけます。


「オレ、従姉妹ちゃんの彼氏に、ちゃんと立候補しようかな」


「友坂、マジ?!」


 周りの人の声とか、商店街に流れる音楽でザワザワしてますけど… ボク、ワンコだから聞こえちゃいましたよ。後で、トウリュウ君に教えてあげなきゃですね。

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