■その323 拳で語った後の重大発表■
皆さんこんばんは、キーホルダーのカエルです。
学校から帰って来た時、
殴り合いを始めた時、双子君と和桜ちゃんも学校から帰って来ていて、お庭に居ました。慣れっこの双子君は、サササササと和桜ちゃんをお家に入れて、美和さんに報告して、3人で仲良くリビングでオヤツを食べながら、宿題をしていました。
双子君のおかげで、和桜ちゃんは殴り合いをちょっとだけ見ただけですんだんですけれど、和桜ちゃんの心臓は、時間が少し経ったお夕飯の今でも、修二さんを見るとドキドキしちゃうみたいです。なので、
「ほら…」
「どうも…」
当の二人は、お風呂に入ってサッパリして、主を間に挟んで
「あれだけ殴り合ったんだから、アルコールは止めておいた方がいいんじゃない?」
「内側から、アルコール消毒してんだよ」
呆れながらビールを呑んでいる
「修二さん、先輩が「今日ぐらい暴れたいなら、道場作ってそこで暴れてくれ」って、言っていました」
梅吉さんは注いでもらったビールを一気に呑み干します。
「ああ、作るよ」
修二さんもビールを呑みながら、サラッと言います。
「そうそう、道場作って…」
「だから、作るってば、道場」
あまりにも修二さんの返しがサラッとしていたので、梅吉さんはもう一度言います。それに、被せてくる修二さん。
「お父さん、道場作るの?」
三鷹さんと修二さんにお肉を取り分けながら、主が聞きます。
「正確には、道場みたいなスペースだな。アパートの隣の家を土地ごと買い取ったんだ。あの古い家を壊して、小さいけれどマンション建てる。まだ各家の間取りとかは決めてないんだけどな、1階に大勢が集まれる部屋を作るつもりなんだ。皆、体が大きくなってきたし、集まる人数も増えたから、大きいスペースの方がいいだろう? それこそ、剣道の練習に使ってもいいぞ」
修二さんは主に取り分けてもらったお肉を、とっても嬉しそうに頬張ります。ご機嫌は、すっかり直ったみたいですね。皆は… 美和さんを覗いて目が点になっていますけれど。
「
話を振られて、桃華ちゃんはハッと我に返りました。
「その事、母さんと父さんは?」
「もちろん、知ってるさ。アパートと一緒で、マンションも4人の共同経営だしな」
そんな事、少しも聞いてなかった。と、梅吉さんと桃華ちゃんはお顔を見合わせます。
「本当は、美世さん達が旅行から帰ってきたら発表する予定だったんだけどな」
ようは、お口が滑ったんですね。
「お父さん、私、桃華ちゃんとお隣のお家がいいな」
機嫌よくビールを呑んでいる修二さんに、主がニッコリ微笑みながら言います。その一言に、空気が凍りました。
「
修二さん、張り付いた笑顔の口元が、痙攣しています。
「あ、すぐじゃないよ。大好きなお父さんと
主の話を聞いて、修二さんの張り付いた笑顔は融解しました。張り付く前より崩れたお顔は、一気にアルコールが回ったようで、真っ赤です。
「うんうん。それ、最優先にしような。そうだな、絵を描くお部屋、作ろうな。そうか、桜雨ちゃんはまだお嫁に行かないか。うんうん」
修二さん、誰が見てもとってもとってもご機嫌です。アルコールも進みます。今なら、お小遣いの値上げもすんなりOKが出るだろうな… と、
そんな修二さんとは打って変わって、三鷹さんは眉間に深い皺を作っていました。皆、三鷹さんに視線を向けません。主だけが、せっせと三鷹さんの前に取り分けたおかずを置いて行きます。
梅吉さん達は、三鷹さんが纏う空気の重さに冷や汗をかいていました。桃華ちゃんは、ちょっとだけ嬉しそうにニマニマしていましたけれど。