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第79話 再び始まる戦いの序曲

〇笹本リゾートホテル イベント用大広間会場


著名人のパーティーにも使われてそうなひと際大きな宴会場を貸し切りにして集められたメンバーはドレスコード等無縁な無骨な面々が所狭しと集まって各自割り振られたテーブルに用意されたお酒と軽食を前に壇上の犬飼会長に注目している


「まずは、皆よく集まってくれた、この場を借りて礼を言う」


犬飼会長の話が始まり会場は言いしれない緊張感が張りつめていた・・・


「先に伝えていたように、近いうちにこの地にて35年前に封印したオロチが復活する」


犬飼会長の話に流石に会場がザワつき始める・・・当然だここに居る殆どが当時の富士防衛戦を情報でしか知らない世代だ、中には実際に見聞きした中年のハンターも居るみたいだが、実際に戦闘に参加したハンターは居ないだろう


「まだ儂の話は途中だ・・・黙って聞いてもらおう」


犬飼会長の威圧感のある雰囲気に再び会場が静まり返る


「さらに今回は魔物のスタンピードも同時多発的に発生する事になる」


この話は聞いて無かったのか、流石に会場に集まった参加者も黙っては居れない様だった・・・その中で一人手を上げ発言の許可を求めて来た


「・・・・鳥居スタッフサービスの鳥居君か・・・良かろう発言を許可しよう」


犬飼会長の許可を受け他の参加者をかき分け犬飼会長の前の壇下で軽く頭を下げる傑さん


「発言の機会を頂き有難う御座います、質問というか確認なのですが、前回の富士防衛戦においてもオロチの進撃に反応し魔素が異常発生したとは聞きました、その為富士の樹海は立ち入り禁止区域になっているとも・・・しかしスタンピードと言える様な魔物の氾濫の記録はありません、何故今回に限っては同時にスタンピードが発生するのでしょうか?」


犬飼会長は一瞬背後に立っている俺の方をチラッと見てから傑さんに向き直り


「それは今回のオロチ復活の裏で暗躍してるのが魔族だからだ」


「!?魔族!!?」


「!?」


犬飼会長の言葉に傑さん含め皆が驚いてる中、一人の中年のハンターの男性は苦い顔をして俯く


「如何にも・・・鳥居・・傑、お前の所の娘と小五郎の所の娘が先の南口ミッションにてテーマパークで仕留めたというコボルドキングのネームドの化け物ベルセルクだったか・・・その進化を促したのも魔族の女だった・・それは聞いてるな?」


「!?・・・・はい・・」


小五郎に方にも視線を移すと苦笑いして頷き肯定した


「実はその魔族の女が、この地で暗躍しておった事が最近になり判明したのだ」


「!?魔族が・・・・人の社会に混じり・・・虎視眈々とオロチの復活を画策していたと・・・そういう事ですか?」


「うむ・・・そしてオロチが封印を破る際に、35年もの間、封印内に蓄積していたであろう魔素が一緒に溢れ出す・・・」


「それがスタンピードの引き金だと・・・そう仰るわけですね・・」


犬飼会長は黙って頷き傑の考察を肯定した、源蔵は会場が落ち着いた事を確認し口を開く


「我々は3班に分かれ富士の樹海で魔物を迎え撃つ!!」


「左翼は鳥居 傑をリーダーに据え、鳥居スタッフサービスとハンターパーティ10組、そして後方サポートとして蜂須賀クリニックの看護師長 蜂須賀 雪菜に任す!」


「右翼は十文字 南斗をリーダーに据え、サザンクロスギルドとハンターパーティー20組 そして後方サポートに蜂須賀クリニックの医院長 蜂須賀 小五郎に頼む」


「そして中央は 儂が直接指揮を執る・・・作戦参謀には協会職員の犬飼 真理恵 戦力としてハンターパーティー10組に参加してもらう」


「そして残りのハンターパーティー10組は近隣の住民の避難誘導及び警護とうち漏らした魔物の掃討を任す」


指名されたメンバーは緊張感の籠った表情で力強く頷き同じチームのメンバーと拳を合わせて気合を入れてる


そんな中で十文字さんが手を上げ発言を求めてきた


「南斗か・・・構わぬ発言を許可する」


「師匠・・発言を許可頂いたので質問させてもらいます・・・スタンピードへの対応と配置は分かりました、しかしオロチへの対応は如何されるおつもりですか?」


「・・・・その事か・・それなら最初からメンバーは決まっている」


「オロチと魔族の掃討に当たるのは、儂の背後に居る龍道 進だ」


「んなぁ!?まさか、コイツだけで向かわせるのですか!?」


「・・・龍道君には同行者は一任している、儂が彼から聞いておる同行者は、鳥居 五月と蜂須賀 雫、熊井 星奈の3名だ」


「え?五月!?ちょっと待ってくれ進君!?どういう事だ?娘が参加するとか・・・俺は何も」


「私は進と行くよ?」


「ふふふ、当然私も参加します」


そう言うと壇上で俺が経っている反対側から五月と雫が現れる


「さ、五月!?お前・・・そんな・・いや・・解ってるのか!?今回は先のクエストの比ではないんだぞ!?生きて帰れる保証も無いんだ」


「だからよ?」


「五月!?」


「だからこそ私は進の力になりたいの・・・その為に授かった力だと思うから、私は誰になんと言われようとも進と行く」


動揺しそれでも何か言おうとしてる傑の背中に手を置いて首を振る美月


「美月・・・しかしだなぁ・・・」


「あなた、もしあなたが進君のポジションを任せれていたら私も五月と同じ事を言うわ・・・それが女だから・・」


壇上の前に雪菜さんが歩み寄り雫と見つめ合う


「雫?私は孫は男の子と女の子どっちも欲しいの、分かってるわよね?」


雫はニヤリと笑い長い黒髪を手で払い、自信に満ち溢れた笑顔で答える


「まぁ各3人は楽勝ね、ママも孫に着せる服を沢山用意しておいてね」


笑顔で見つめ合う親子の間には、余人には理解できない想いが通じてるのだろう、雪菜さんは静かに目を瞑り納得した表情で自分の席に戻る


一連のやり取りを、表情を変える事無く眺めていた犬飼会長は再びテーブルの前に立ち


「では作戦決行は2日後、笹本ホテルを宿泊施設として貸し切りにしている、各自本日はゆっくり休んで明日から準備を怠る事の無い様に!では解散!!!」




それだけ言うと犬飼会長は壇上から降り会場から退出していった


「五月・・・雫・・・二人も呼ばれていたんだ・・・」


「ふふふ、サプライズよ」


「本当なら、すすむんの言上の後で出てくる予定がちっと変わっちゃったけどまぁ驚かせられたなら良かったのかな?♪」


この地でかつて多くの人の犠牲の上で終結させる事が出来た富士防衛戦の第二ラウンドが35年という年月を経て再び始まろうとしていた









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