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第80話 宝剣布津御霊と晴明の宝珠

〇笹本リゾートホテル 最上階スイートルーム



ピィン♪


エレベーターは笹本ホテルの40Fに到着した、ここは由利さん達の居住している最上階と同じフロアにあるVIP御用達のスイートルームだ


部屋の前でベルを鳴らし「龍道 進と鳥居 五月、蜂須賀 雫、熊井 星奈お呼びにより参りいりました」と伝えると


ガチャと音がしドアのロックが解除されインターフォンから犬飼会長の声が聞こえる「うむ、入って来てくれ」


中に通されたが部屋の中は高級そうな調度品にインテリアが置かれていてスイートルームに相応しい雰囲気の部屋だった


オープンリビングのソファーには犬飼会長が腰を掛けておりおれは傍まで行き頭を下げる、五月達は真理恵さんが話があるとゲストルームへと連れて行った


・・・・・・・・・・・


・・・・・・


「犬飼会長、俺達だけここに呼んだのには何か理由が?」


目の前のソファーに座る犬飼会長、奥のゲストルームでは五月と雫と真理恵さん、それに星奈さんが書類を確認しながら打ち合わせをしている


「先に要件だけ伝えると、今回の作戦で君たちには我々より先駆けて富士の樹海を迂回して富士山頂を目指してもらう」


犬飼会長は富士山周辺の地図を指でなぞりながら俺に突入ルートを示す


「君らの作戦遂行の為、我等が富士の樹海前で防衛線を張り魔物の注意を引き付ける」


「し、しかしそれでは・・・・」


「君は何を成すべきか・・・それを気づいたのでは無かったのか?皆が自分たちの成すべき事を成す・・・君も覚悟決めたまえ」


静かだが犬飼会長からは強い意志を感じる・・・成すべき事を成す・・


「悩んだり悔んだり出来るのは、前に進んだ者だけに許される事だ何も成さない者には、その権利も得ることは出来ないだろう」


「会長・・・・」


「君はまだ若い・・・これから多くの悩みや後悔、時には失敗する事もあるだろう・・・だがそれも又、龍道 進という男の人生を彩るはずだ」


「しかし儂の見立てでは君たちはこの作戦を無事遂行してくれる未来しか見えない、儂は眼力には自信がある」


「解りました・・・その任謹んで御受けいたします」


「うむ・・・では・・・真理恵、例の物を」


奥のゲストルームで打ち合わせしていた真理恵さんは犬飼会長の言葉に反応し同席する他の女性に声を掛け奥の部屋に入っり豪華な装飾を施された包の細長い物を大事そうに持ち俺の前にやってきた


五月達も何事かと俺たちの所に集まる


「これなるは、この国に伝わる宝剣である【布津御霊】、かつて儂がオロチを封印するのに使った【天叢雲剣】に匹敵する霊力を持つ強力な神具だ」


真理恵さんは装飾された布を少し捲り宝剣の柄を見せると犬飼会長は柄を手に取りゆっくりと鞘から刀を抜く


シュゥ―――ッと周囲の空気すらも切れる様な音と共に淡く輝く刀身には僅かに水滴が付着している


「見るだけで解る・・・引き込まれそうな美しい刀ですね・・・」


目を細め刀身を見つめる犬飼会長は何も言わず再び納刀する


「それと・・・これを」


犬飼会長は自分の首にかけていた小さな巾着袋を外し俺に手渡す


「??これは?」


「結界を張る為の宝珠だ・・・古の陰陽師であった晴明が残したとされる破魔の結界の術が仕込んである・・・現代の魔法では再現出来ない古に潰えた結界術だ」


「この布津御霊の剣と晴明の宝珠を使いオロチを再び封印するのが君の任務だ、当然魔族の妨害が予測される。決して簡単では無いだろうが遭えて君に任せたい」


「はい、必ずこの任果たして見せます」


俺は宝剣と宝珠を受け取るが・・・・ポロッ


「!?」おれは宝剣を床に落としてしまった・・・・・


「ほう~君が武器を扱えないと言うのは本当だったか・・・君に同行者が居るのはある意味では運命だったのかもしれないな・・・」


犬飼会長は俺の足元の布津御霊を拾うと五月に預ける


「傑の娘と小五郎の娘だったな・・・彼を・・・龍道君を宜しく頼んだ」


「はい」「任せて下さい」


二人は布津御霊と晴明の宝珠を受け取り、揺るがない決意の籠った目で犬飼会長に答える


「では、龍道チームによる決戦部隊の出動を命ず!!明朝、まる なな まる まる(7時)より作戦開始の為、行軍を開始し、まる きゅう まる、まる(9時)より富士山頂へのアタック開始」


「「「はっ!!」」


「君達がこの作戦の要だ健闘を祈る!!」


犬飼会長が敬礼し、俺たちもそれに倣う


「会長も真理恵さんも、皆さんも!・・・・どうかご無事で・・・・」


そう告げ俺たちは犬飼会長と真理恵さんの居るスイートルームを後にした


〇笹本ホテル1Fロビー


「進、私も一度旅館に戻って・・・・母さんに・・・」


「星奈さん・・・・・」


不安そうに俯く星奈さんに、なんて声を掛けたら良いのか分からず言葉が詰まる


「心配しないで、私も今回の件当事者なのよ・・・時夜は私にとっても幼馴染だった訳だし何よりこの町は私の故郷、大事な家族との大切な思い出も一杯詰まった場所なの」


「だから私も私も自分に出来る事をする!!」


「ふっふふ・・・女狐にしては根性があるわねぇ~」


「雫ぅ~聞こえてるからねぇ~あんま大人の女性を甘く見てると進を無理やり奪っちゃうかもよ?」


「は、はぁ~!!そんな事許すわけないでしょ!!」


「ぷっ・・・あははは、なんか緊張してたのが馬鹿みたい・・・明日の朝・・・またここで・・それじゃ」


星奈さんは運転してきた自分の車に乗り込み帰っていった


「ねぇこれから私らだけで決起集会しない?」


「あら五月いいじゃない!」


「ははは、それじゃコンビニで何か買って帰ろう、鰐淵さんにも明日の事断らないと・・せっかくバイトで雇ってもらってるのに・・また迷惑かけてしまうからね」


五月と雫は俺の背中をポンポンと叩き元気出してって言いながら3人でコンビニに向った


テレレ♪テレレ♪


「いらっしゃませぇ~」


「え?」


「あっ・・・・・その節は・・・どうもお世話になりました・・」


店内で挨拶してくれたのは・・・


「慎吾さんの、お母さん?」


「おおお、進君じゃないか!話はきいたぞ大変だったみたいだな」


驚く俺に気づいた鰐淵さんが声をかけてきた


「あ、あの鰐淵さん・・・この方は・・」


鰐淵さんは俺の視線の先に居る女性の方を見て笑顔で紹介する


「ああ、実は昨日からここでバイトしてくれてる立花さんだ、実は娘さんも30Fのレストランで働いてて、旦那さんも清掃スタッフとして一緒にこのホテルで働いているんだ」


「そ、そうだったんですね・・・実は昨日レストランで麻美さんとはお話させて頂きました」


慎吾さんのお母さんは少し気まずそうな表情をしていたが、ぎこちない笑顔ながらも俺に向き直り


「はい・・お恥ずかしながら娘に諭されまして・・・何時までも慎吾の事で恨んだり、後悔したり、悲しんだり・・・慎吾はそんな事を望んでるのか?と慎吾は家族が幸せになって欲しくて今まで頑張ってきたんじゃないのか?なんて・・・だから慎吾の頑張っていた場所で私達家族も頑張ってみようって・・・何も変わらないかも知れませんが、私達が何かを始めなきゃ慎吾とも永遠に分かり合えないと思いまして」


「そうですか・・・凄い事だと思います・・・乗り越えるのではなく一緒に前に進む・・・慎吾さんはそんな大事を守ったんですね・・・」


ただならぬ雰囲気の俺と立花さんをキョロキョロと訝し気に見ていた鰐淵さんはパン!と手を叩くと


「まぁ立花さんと何があったかは聞かないよ?それより何か買いに来てくれたんだろ?」


「あ、そうなんですが・・・実は明日から暫く大事な用事でバイトに出れなくて・・・せっかく雇ってもらってて申し訳ありません・・・」


俺の表情を真剣な表情で見つめる鰐淵さんは


「なるほど・・・良い目じゃないか、まぁこっちは心配するな立花さんも入ってくれてるし、私もここ最近は時間超過を解消していたし進が戻るまで何とかするさ!」


「有難う御座います」


鰐淵さんは豪快に笑いながら俺の背なかをバシバシ叩きながらも、期限ぎりぎりの惣菜やお菓子を沢山サービスしてくれた


俺たちは鰐淵さんと立花さんにお礼を言い、俺の部屋へと戻った



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