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閑話16  この地にて・・・④


〇笹本ホテル  従業員宿舎部屋101号室(進の部屋)



俺は机の上に此れまでに集めた親水の入った瓶と妖馬の鬣を並べ考え事をしていた・・・・


(2つまではある程度めぼしはついていたが...やはりオロチの牙が・・・)


俺はスマホで検索したオロチの牙についての記事を確認する



龍壮暦1199年7月21日の〇〇新聞記事より抜粋


10年前に突如、富士の火口より出現した大型の龍族は自らを竜王「オロチ」と呼称し人類に対し一方的な宣戦布告を告げ進軍を開始しました


古くの文献に登場する古の化け物であるオロチは八岐大蛇と呼ばれる所以である八つの頭を持ちその巨体は80メートルゆうに超えており、力ない者がその姿を見るだけで魂ごと金縛りになったと言われてます


その古の文献の通り竜王オロチの咆哮一つで人々は意識を失い、その口より吐き出すブレスは鉄をも溶かす高熱の吐息で近代兵器の悉くが無力化されました


しかしこの国の危機に全国より500名近いハンターが集い富士の樹海を超えた先、大室山で一代防衛戦を展開...政府より匿名を受けた医薬品メーカーは古き文献よりオロチを無効化する神酒(ソーマ)八塩折之酒(やしおりのさけ)を生成する事に成功


悲劇のヒロイン部隊サクヤ隊を始めとした多くの犠牲者を出しながら一時的にオロチを無力化する事に成功し富士の火口付近まで押し込む事に成功した


しかしその時点で神酒の効果が消え、富士山頂上火口にて最後決戦を繰り広げ大勢の賢者や呪術師の命を賭した結界により足止めと宝剣 天叢雲剣の理力により富士の火口深くに封印されました


ほんの10年前に起こったこの国の一大事件を後世に伝える為、歴史博物館が韮山(にらやま)反射炉跡に建造され目玉として「オロチの牙」が展示されるとの事です


博物館には多くの集客を見込み学生の修学旅行や海外からの観光客に対する解説をより解りやすくする為に・・・・・



他の記事も調べてみたが何れも韮山反射炉跡の博物館に展示してるオロチの牙しかヒットしない


「やはり・・・この展示してあるオロチの牙を譲ってもらうしか無いのか・・・」


「旦那様、まだ調べておられたのですか?」


俺の背後からお茶の入った湯呑を机の上に置いてくれるのは紅だ・・・


「あ、あ・・・ありがと、牙の回収がな・・・!!??ブッ――――!!」


「きゃっっ如何されました旦那様!?」


俺は口に含んだお茶を盛大に噴出した・・・・


「如何しました?じゃないよ!紅、なんて恰好してんだぁぁぁ!!」


「え?お気に召しませんか?」


紅の姿は...


「お気に召します、召しませんの次元じゃないよ、殆ど裸じゃねーか!!」


紅は何処から手に入れたのか、その大きすぎる胸の先だけ辛うじて隠れる位の布面積のピンクのブラとギリギリ局部だけしか布が無い殆ど紐のピンクのパンティを身に着け首を傾げている・・・


「しかし、旦那様と初夜を迎える妻の正装だと・・・・」


「は、はぁぁ?イヤイヤどこ情報だよ!!」


「え?いや旦那様が持っておられた此方の書物にその様に・・・ほら、ここに」


紅が手にして捲ってる本は俺の秘蔵の一品「幼な妻ドキドキ初夜から旦那はゾッコン朝まで延長戦」だ


「うわぁぁぁ!!」


俺は慌てて紅の手からR18指定の本を奪い取る


「きゃっ!!」


その時紅のブラの紐に手が当たり・・・フサッ・・・・・


「あれ?・・・俺の指に引っ掛かりってる糸?・・・・!?どわぁぁぁぁ!」


恥ずかしそうに頬を赤らめ自分の胸を手で隠してる紅を視界にとらえた瞬間・・・・ブッ・・・視界が暗転した・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・


「・・・・様・・・」


「・・・な様・・起きて下さい・・」


「旦那様、起きて下さい何方か尋ねてこられました」


「ん、んん・・・あ、紅・・・!?」


俺は紅の柔らかな膝枕で寝ていたみたいだったが意識を取り戻し恐る恐る紅の恰好を確認する・・・・


「紅!?あ・・・良かった何時もの恰好だ・・・」


「はい、どなたか尋ねてこられたので着替えさせて頂きました」


ピンポン♪ピンポン♪


「先ほどからあの様な音が入り口から鳴っております・・・ドアの外に人の気配もします誰か尋ねてきたのかと・・」


「わ、分かった俺が出る」


俺は起き上がりドアの覗き窓から外の様子を確認すると・・・


「克樹(由利の父、笹本ホテルのオーナー)さん?」


俺はドアの鍵を開け


「克樹さんこんな時間に如何されました?」


俺は克樹さんを中に案内しようと手を差し出すが・・・


「いや、ここで構わないよ、君に渡す物があってね」


そう言うと克樹さんは布に包まれた物を俺に差し出す


俺は受け取ると布を捲り中を確認すると・・・・


「!?これは!!」


「ああ、オロチの牙だ君が探していると聞いてね、君に渡そうとこうしてもって来たんだ」


「で、でも此れは博物館に・・・」


「あぁあ、あれは我が家が博物館に貸し出ししていた物なんだ開館当初は大勢が訪れ展示物の目玉だったが今じゃ博物館に訪れる者も殆ど居ない」


「誰にも見られない展示物なら、娘の命の恩人である君に譲った方がこのオロチの牙も有意義だと思ってね博物館には話して引き上げさして貰ったよ」


俺はオロチの牙を眺めながら・・・・


「こんな貴重な物を無償では頂戴出来ません・・・何かお返しを・・」


克樹さんは手を前に拡げ静かに首を横に振る


「いや、これは私達家族から君へのお礼の品物だ・・・」


「お礼って・・・一体・・」


「あの時私らは時夜君の元に不本意ながら嫁ごうとしていた娘を引き留める言葉が見つからず手を差し伸べる事も出来なかった情けない親だ」


「そ、それは・・・借金で・・・」


克樹さんは首を振る


「それは由利には関係ない話だよ・・・黒原さんに借金したのは私らの先代の話だしかも笹本ホテルの運転資金だ」


「私らは、自分たちの経営するホテルを優先するあまり娘の幸せを棒に振らせる様な最低の親だよ・・・」


「克樹さん・・・・」


克樹さんは自分の事を自嘲する様に力なく笑う


「でも君は違う・・・聞いたよ友人でる由利の為に全財産を時夜君に渡そうとしたらしいじゃないか・・・そんな君に比べて私らのなんとあさましい事か・・」


「僕と克樹さん達では立場も責任も違います、克樹さんは大勢の従業員を抱えるこのホテルのオーナーです、ホテルの事を考えて行動するのは当たり前ですよ!」


「しかし、経営者で有る前に一人の娘を持つ父親だよ・・・経営者の責任を優先して父親の責任を放棄したんだ・・・」


「その上、君は由利を救う為に危険を顧みないで強敵に立ち向ったとも聞いてる・・・私は君に感謝してもしきれない恩がある」


「ちがいます、僕こそ居場所がなくなった時に由利さん達に助けて貰ったんです僕こそ感謝してもしきれない恩が有るんです!」


「・・・・君は誠実で真面目だな・・・だけどこれは受け取ってくれ・・じゃないと父親としての体裁も保てない、私の為と思って受け取って欲しい」


克樹さんからは強い意志を感じる・・・ここまで言われて断る事は出来ない


「解りました・・・克樹さん達のご厚意確かに・・・」


「有難う・・そして本当に有難う、娘が無事に戻って来てくれたのは君のお陰だ妻の分も合わせてお礼を言う・・・今後も何かあれば私達の出来る事は全力で力になる」


「君はこの国を救ってくれ、私らも救ってくれた英雄だよ・・・進君」


そう言うと克樹さんは再び深く頭を下げ帰って行った・・・


「旦那様・・・これで・・・」


「ああ、これで準備は整った、予定通り明日オロチとの対話を試みる」


俺の言葉に紅は強い眼差しで頷いた・・・・


























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