〇オロチの封印された岩の中 魂の牢獄内
『オロチ?我の名はオロチと言うのか・・・・それに龍道 進に紅・・・何処かで聞いたことが有る様な・・・』
「!?記憶が、記憶が無いのか?」
『記憶?分からぬ我は何故ここに居る・・・』
魂だけの存在となったオロチには俺たちの記憶どころか最愛の娘である紅の事も覚えてない・・・
しかし俺たちは諦める訳にはいかない・・・
「オロチ、お前に尋ねたい事がある・・・俺の質問に答えてくれ・・・」
俺はオロチが記憶を喪失してる事に不安を覚えたがこのまま引き下がる訳にはいかない
『今の我に何か答えれると思えないが答えれる事なら答えよう・・・こんな場所まで来た者に対するせめてもの手向けだ』
俺はオロチの言葉を聞き意を決しオロチの魂の炎にむかって語り掛ける
「オロチお前は三柱神について知っているか?」
『三柱神・・・・あぁその言葉を聞いて記憶が蘇てって来た・・・龍神、魔神、人神の3人の神だな・・』
「ああ、この世界の種族の始祖となる3人の神・・・しかし俺はその実態に疑問を持っている」
「!?旦那様?」
俺は手を横に広げ紅の言葉を制止すると紅は口を押え言葉を飲み込む
『つまり神など居ないと?』
「そうは言ってない、だがあの魔族の暴挙を止められない時点で神としての権威は無いと俺は考える」
『魔族の暴挙?・・・・すまないその事は覚えが無い』
「そうか・・・魔族は犯してはならない禁忌を犯し竜族の血を使い独自に超進化を遂げデモ・パンデモニウムという領域に到達した」
『超進化・・・成長による強化を許されてるのは寿命に制約がある人族に限るとされてるはず・・・それを魔族が・・』
「そう神の定めた制約であるならこの様な事態に神が手を下さない事自体に神という存在・・・いや神という仕組みが効力を持たない証明だろう」
『我は龍神より生み出されし始祖の竜・・・だが貴様の言う様に産みの親たる龍神をこの目で見た記憶は無い』
「やはりな・・・・」
『だが、神の居場所は分かる・・・・この世界の最北の地に神の住まうとされる都があると言う・・そこに行けばあるいは・・』
「神の住まう都か・・・」
『それで貴様はその事を確認してどうするのだ?』
「魔族が神の制約によるペナルティーを受けないのであれば、俺達人類やお前やここに居るお前の娘がご丁寧に守ってやる義理もない」
『何をする気だ?』
「俺は自分自身に力を封印する為のプロテクトが後2つ掛かってる、ついこの間デモ・パンデモニウムと化した魔物と戦った際に最初の1段階を解除した所だ」
『・・・・ほう』
「その状態で、デモ・パンデモニウム形態の魔族と互角・・・もしくは俺の方が若干能力が上回っていると考えている」
「その力を解除して敵対する魔族軍を排除するつもりだ・・・徹底的に・・・」
『なるほど、お前の中の竜の力とそれ以外の力が制御されてるのは人神の意志では無いかと考えているのだな?』
俺はオロチの問いに黙って頷く
『神の制約を無視して振舞う魔族に対するに、自らも制約を無視して挑もうと言う訳か』
「幸いにも俺に付いてきてくれる心強い仲間・・・お前の娘もその一人だが・・・その仲間達と共に神に頼らない力を手に入れ」
「何れお前の言う神の都に赴きそこで三柱神を排し、俺はこの世界に生きる者達だけの世界を手に入れる・・・不条理を正せない神は俺たちに要らない」
『それがお前の目的か・・・・・』
「ああ、オロチ俺は必ずお前を此処から連れ出す・・・・だから人類や魔族との遺恨はこの空間に閉じ込め、俺と共に俺たちの世界を勝ち取る・・俺の夢に手を貸してくれ」
俺はオロチの魂の炎に向け手を差し出す・・・ジュウっと俺の手を焼く音がし紅が俺の腕を慌てて引き抜こうとするが俺は紅の手に反対の手を重ね首を振る
『今の我には貴様らの記憶は無い・・・・』
「・・・・・・・・・」
『だが、今の貴様の言葉に我の魂が熱く熱を帯びた・・・・良かろう貴様の目指す世界の夢、我も見てみたい』
「オロチ・・・・」
『龍道 進・・・・お前の夢われも一緒に見てみよう』
オロチとの会談により、オロチの人類や魔族への遺恨が全て拭い去れたとは思えてない・・・確かに俺とオロチは主従契約を結び俺の意には従うだろう
だが、俺の居なくなった後は?死後は?俺の制御が無くなったオロチは再び人類や魔族に対し復讐のための侵略を始めるかもしれない・・・
だが3種族が共存できる世界が作れるなら・・・・そんな遺恨もオロチの胸の中に納め共に歩む事が出来るはずだ・・
俺はそんな優しい世界が・・・・必ず来ると信じてる・・・その為に不条理な事すら罰せれない三柱神は不要だ・・・
俺はオロチに夢を語り、協力を取り付け、神に関する情報も得た
「紅もう良いのか?」
俺は暫く紅とオロチの二人きりにして、暫しの別れの時間を作ったが・・・・
「はい、今の父上には私の事も母の事も分からない様なので・・・何れ此処から出た時に一杯お話させて頂きます・・・其れまでは・・」
「そうか・・必ずだ・・・お前にも約束する俺は必ずオロチを此処から連れ出す」
「はい・・紅もお供致します・・旦那様の行く所へ何処までも・・」
俺は紅の手を取り、手にした親水の瓶のふたを外すと自分達の足元へと撒く・・・
足元が輝き俺たちの身体が光の中に沈んで行く・・・・
『主様・・・紅・・・暫しのお別れです・・・それまでどうか・・』
「!?」
「父上!!記憶が!!」
最後に聞こえた声は空耳かそれともオロチの声なのか・・・・
俺たちは確かに聞こえた声を信じ強く手を握りながら光の中を通り元の富士山の火口へと戻って来た・・・・