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マンドレイクの正体。

 警察から吐古四会にガサ入れが入った。

 若頭である五寅は、冷や汗をかいていた。


 いよいよ、警察は吐古四会を詰めるかもしれない。

 処刑人である『マンドレイク』は、組の子飼いの拷問者であり処刑者だった。マンドレイクは、ちょうど、ブラッディ・メリーの参入時期を入れ替えに、引退した老人だった。


「どんな人間なんだ? そいつは?」

 氷歌は、気さくに五寅に訊ねる。


「よく、ポン中や部屋住みの世話をしていた気さくなじいさんだよ。普段はな。借金の取り立てでさ。闇金業者から顧客名簿を買い取って、パンク寸前の奴らを組は詰めていたんだわ。それで、本当に返せないつーなったら、処刑。鉄槌だよなー。工場から大量に手にしてきた人が入れる瓶に、人間を裸にして入れてさぁー。始末していたなあぁー」

 五寅は、くっくっ、と、笑う。



「ああ。我々のボスが。あんたら、ヤクザとは手を切るってさー。ひでーよねー。資金源としてズブズブに扱っていた癖にさ」


 腐敗の王は、株や仮想通貨の知識を与えて、吐古四会の儲けの何割かを得ていた。そして、拳銃などの武器や使い捨ての車、またはアジトなどを譲り受けていた。

 此処で吐古四会が一斉検挙される事になると、非常にまずい事になる。


「切るに切れねぇぞ……」

 五寅は、何とも言えない声音で返す。

 それは、組を舐められたくない、という組の威勢か、芋づる式に証拠が挙がる為に警察に検挙され腐敗の王は捕まるだろう、と言いたかったのか、五寅自身分からなかった。


「もう、日本は変わるんだってさ。お前らの処で世話になっていたブラッディ・メリー連れて、行動を起こすんだと。もう逃げも隠れもしない。国内で戦争が起こるんだと」

 氷歌……アンダイイングは、はあっ、と、深く煙草を吸う。


「ちなみに私も切られそうだ。私は役に立たないそうだ」


 ブラッディ・メリーとアンダイイングの二人で、仏教系団体であるエイプ関連の教団から盗んだ“サンプル剤”を組の者達に注射して実験経過を待っている最中だ。


 インテリヤクザである群青との実験をどうするか考えていた。

 腐敗の王は、今後、どう動いていくかは氷歌はある程度、見当が付いている。


「とにかく、おやっさんに何とか出来ないか掛け合ってみる。ウチの組長は、警察のお偉方とは親しい仲だ。とにかく吐古四会を潰したくねぇっ!」


 そう言って、五寅は叫んでいた。



 結局。

 マンドレイク一人を差し出す事によって、警察からの吐古四会への追及は収まった。


 組長である翠涯(ひすい)は、裏金作りに精通している警察上層部の事を知っている為に、持ちつ持たれつつであった。また他の暴力団組織や薬物犯罪に対しての知見も広い為に、警察側からも吐古四会の影響力は強いものだった。


 彩南と氷歌が、組員達を使って行い続けているひそかな人体実験。

 それは、この社会の“核心部”へと迫る事になる。

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