二人の男が、森の中を歩いていた。
わざわざこんなところに来たのは仕事のためだ。
「伝令の奴がいってたのこの辺だよな?」
「ああ、誰もいないな……っと待てよ、誰か倒れてるぞ」
男たちの前には木に寄りかかるように倒れている人がいる。
その躰の末端は腐り始めているようだ。
「タイオスか?」
「いや女だ……ありゃあいつの妹だな」
「なんでこんなとこで腹に穴開けて死んでんだ?」
「さあな。兄弟喧嘩でもしたか?」
男たちは顔を見合わせて笑った。
一人の男が女の近くに落ちている瓶に気がついた。
「おっと、ここに落ちてるじゃねえか」
「これが例の血ってやつか? ん、ちょっと少なくねえか?」
「知らねえよ。俺達はこれを受け取って運ぶのだけが仕事なんだからよ」
「まぁそれもそうだな」
*・*・*・*・*・*・*・*
「本当に行くのか?」
「そんな寂しそうな顔しないでください。昨日の夜いっぱいシタでしょ?」
「お、お嬢様……ついに初夜を……?」
なんか勘違いしているメリンダは無視しておく。
残念ながらキール様は私に手を出してくれないもの。
「ああ、あれは大変に美味だった……」
キール様は恍惚とした表情で遠くを見つめている。
私の血は彼にとって、相当美味しいものだったらしい。
抱きつかれて、首筋に吸い付かれたのは恥ずかしかった。
「ということで、行きます!」
「えー、やっぱりやめたってならないですかー?」
「ならない!」
私とメリンダはこれから東にあるホウノキという国の更に東を目指す。
そこに聖樹を祀っている女だけの国があるのだそうだ。
なぜか、そこへ行った女たちは帰ってこないらしいが、私とメリンダはその国でなんとしても聖樹の雫なるものを手に入れるのだ。
「じゃあせめてこの子を連れて行ってくれ」
「キュッキュー」
「キューちゃんを、ですか?」
「ああ、この子たちは伝令に使えるから何かあったら飛ばしてほしい」
「わかりました」
よし、じゃあ最終確認をしておこう。
荷物、よし。服装、よし。決意よしっ!
「キール様、それじゃ行ってきますねっ!」