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第114話 不可侵……条約??

 空の魔王ヴォーイングと、王国騎士団長フォルンマイヤーさんの交渉は特に問題なく進み、彼女の案内で空の魔王ヴォーイングはダイワ王と会う事になった。

 これは魔族と人間の不可侵条約を締結する為である。


 この条約が締結されれば、人間と魔族の対立は無くなるだろう。

 条約に署名するのは空の魔王ヴォーイングだけだが、残りの水の魔王ベクデル、雷の魔王ネクステラ、火の魔王エクソンは人間と戦おうという意思は無い。


 今の時点で人間と敵対する可能性があったのは空の魔王ヴォーイングだけという事だ。


 他にも魔族はいるが、この四大魔王以外にはそれほどの力を持ったのはいないと考えて大丈夫だろう、そうだとすれば……空の魔王ヴォーイングに対して人間の国が攻め込まない事を約束し、また、空の魔王ヴォーイングからも人間の国に攻め込まないとお互いが取り決めをすれば、不毛な争いをせずに済む。


 オレ達は飛竜騎士団に先導してもらう形でファイアドラゴンに乗せてもらい、空の魔王ヴォーイングを王都に案内した


 今回カシマールはゴーレムと一緒にいてもらわないと、ゴーレムの形を保てないので空港に残ってもらい、大型荷物の仕分けをしてもらう事にした。

 まあ、全国から珍しい甘いお菓子などが届くと聞いた彼女は嫌がる事無くその作業に取り組んでくれている。

 そのカシマールはジャルとアナ、それにトーデンとカンデンが協力してくれているので、人間と魔族のお互いの歩み寄りは上手く行っていると言えるだろうな。


 王都に到着したオレ達は、フォルンマイヤーさんのおかげですんなりとダイワ王に会う事が出来た。

 といっても、もし兵士達が食い止めようとしても空の魔王ヴォーイングの翼の羽ばたき一つだけで全員吹き飛ばされていただろうけどな。


「よ、よくぞお越し頂きました。儂がダイワ王です」

「我はヴォーイング、世間では空の魔王と呼ばれているようだがな! ダイワ王殿、こちらこそお招き頂き感謝する」


 あらあら、ダイワ王の一人称が変わってるよ、余って言ってたのが儂になってる。

 まあ、世界最強の空の魔王が相手にもなるとそりゃあ下手な態度は取れないよな。

 国王と空の魔王はお互い握手をし、書類に二人がサインをする事で人間と魔族の不可侵条約が締結された。


 これで当面の戦争は回避できたと言えるだろうな。

 安心したオレはダイワ王と空の魔王ヴォーイングに空港の事を伝えた。

 ここを拠点にすれば、世界中のどこでも荷物を楽に輸送できる場所だというと、ダイワ王は感心していた。


 今はまだ動き出したばかりだが、ここを拠点にすれば世界中から物を集め、また、世界中に物を送る事も容易に出来るようになると言った内容だ。

 ダイワ王も空の魔王ヴォーイングもこの話を聞き、全面的に協力してくれるとオレに約束してくれた。

 これで流通ルートをきちんと整備して、鉄道敷設を進めればこの世界はもっと便利になるだろう。


 オレがそう思い、少し安心していた時……いきなりドアの向こうから傷だらけの兵士が現れた!


「いったい何があった!? 今は調印式の真っ最中だぞ!」

「そ、それが……大変です! 王国のあちこちで、何者かによる攻撃で建物や町が壊滅状態です!!」

「な……何だと!? ヴォーイング! まさか、これはキサマの仕業か! 儂らを油断させ、その隙に攻撃とは!」

「何だと! 我はそのような命令を出していない! それでも我を疑うと言うなら……この条約は反故となるぞ!」


 オイオイオイ、いったいどうなってるんだよ!?

 王国のあちこちで何者かによる攻撃により町や施設が破壊されているとの連絡が相次いだ。

 空爆は飛空船から行われているが、どこの船かは不明という事らしい。


 これは……人間と魔族の戦争を勃発させる為にアイツが仕組んだ事に違いない!

 ここで下手にダイワ王と空の魔王ヴォーイングを決裂させるわけにはいかない。


「二人とも待ってください! これは人間と魔族を対立させたい何者かの企みです、これに乗っかってしまえば相手の思うツボです!!」

「何だと?」

「何者かの企み……だと?」


 とりあえず二人共お互いを敵と見ないで済んだかもしれない。

 ここできちんと話をしておかないと、後々ややこしい事になってしまう。


 それだけはどうしても避けなくては!


「はい、これは人間と魔族の双方を疑心暗鬼にさせて、お互いが歩み寄れないようにして戦争状態に持ち込んで、お互いが疲弊したところでどちらもを潰そうという何者かの策略に違いありません」

「策略……だと? それには根拠があるというのか」


 根拠はない。

 だが、話を聞く限りでは、爆撃されているのはどうもオレの色々と工事に携わった場所が多くみられるような感じがする。


 コレが根拠になるかどうかは、トーデン、カンデン、ジャル、アナ達に聞けば分かるだろう。

 それでもし、オレの建造物を狙い撃ちしていたとすれば、裏で手を引いているのはナカタで間違いないといえるだろう。

 それでアイツの建設していたスタジアムとかはどうなっているかダイワ王に聞いてみてもいいだろうな。


「ダイワ王、爆撃された場所にスタジアムは入っていますか?」

「う、うむ。どうやらスタジアムも爆撃されて壁に穴が開いているらしい。こんな時にナカタはいったいどこにいるというのか……」


 どうやらスタジアムも爆撃されているという事は、ナカタが自分に疑いの目が向かないように攻撃させたように感じる。

 伝令からの話だと、スタジアムへの攻撃に比べ、アンディ王子の離宮やダム等への攻撃が執拗なまでの破壊っぷりのようだ。


 だが不幸中の幸いといえるのは、オレはどの設備にも災害時の避難用のルートを用意しておいたので、爆撃での犠牲者はあまりいなかったというところか。

 爆撃した飛空船も流石に魔族の国に攻め込むのは無理があったようで、狙われたのは主にオレの手掛けた施設ばかりみたいだな。


 このやり口、間違いなく裏にいるのはナカタだろう。

 だが、ダイワ王を敵にしても問題ない後ろ盾を手に入れたとすれば厄介な存在になったともいえる。

 アイツの後ろにいるのはいったい誰なんだ!?


「申し上げます、上空から何か撒かれた紙を兵士達が手に入れたとの事です!」

「何だと? それは本当か」

「はっ、兵士が持ってきた紙には、人間を裏切り魔族の側についたダイワ王を許すな! と書かれているようです」


 何だと、その方法で攻めて来たか。

 つまり、人間の中には魔族との共存を嫌がる強硬派も存在する。

 それは宗教国家である隣国などがそういったものだともいえるだろう。


 エシエス帝国、オレが知っているのはこの国だ。

 このエシエス帝国はこの国の貴族連中が奴隷を売っていた相手でもある国で、人種差別の激しい国だ。


 多分だが、ナカタはダイワ王との関係を断ち切り、このエシエス帝国に自身の持つ技術等を売り込んで取り入ったのだろうな。


 そしてそのエシエス帝国が人間の裏切り者としてダイワ王を攻撃してきたってとこか。


「国王陛下、多分ですが……この件の裏にはナカタがいると思われます、そして、彼はエシエス帝国と組んでこの国に攻め込んできたのかと」

「何だと、ナカタが我が国を裏切ったというのか!」

「はい、確証は持てませんが、攻撃を受けた場所というのがオレの工事を手掛けた場所ばかりだというのがどうも気になるんです」


 実際空爆されたのがオレの手掛けたダムや離宮、温泉施設に鉱山といった場所ばかりで、普通ならあまり攻撃対象に選ばない場所ばかりだ。

 しかし、この攻撃がピンポイントにオレの手掛けた建造物ばかりというのがそれを証明しているといえる。


 これは早くどうにかしないと、困った事になってしまった!

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