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第123話 全員の……力??

 オレ達は古代遺跡の地下で壊れた動力炉を見つけ、修理する事が出来た。

 だが、いざ起動してみると、ウンともスンとも言わなかった。

 何故だ? どうして動かないんだ??


 オレはこの動力炉の周りに何か足りないものがあるのかを調べてみた。

 すると、何かをはめる穴のようなものがあった。


 ひょっとすると、ここのパーツが足りなくて動かないのか?

 しかし、この穴に当てはまるパーツって……。


「お兄さん、ひょっとしたら……あの遺跡のパーツ、使えるんじゃないかと思うのだ」

「遺跡のパーツ? それって、ひょっとしてコレの事か?」


 オレがバッグから取り出したのは、ウユニの遺跡の地下で手に入れたタブレットと宝石のような物だった。


 本当だ、丁度この大きさがここに嵌るようになっている!

 これか、コレが足りなくて動かなかったのか。


 オレはこの遺跡の動力炉のメインコンソールと思われる部分の欠けた穴にタブレットと宝石を嵌め込んだ。

 よし、これで今度こそ動くだろう。


 オレはタブレットと宝石を嵌め込んだ後、再度動力炉を作動させてみた。


 グググググググウウウウォォォォ……!


 成功だ! 長い間沈黙を保っていた古代遺跡の動力炉が動き出した。

 だが、それもすぐにぬか喜びで終わってしまった。


 ォォォ……オ……ォォ……。


 ダメだ、動力炉が動かず、こんどは何度電源を入れようとしても反応しない。

 どうやら、最後に残っていたエネルギーの残滓で一瞬だけ起動した形だったらしい。


「くそっ、失敗かよ……ここまでやってこれか……」

「コバヤシさん、諦めないで下さい。さっきの一瞬の起動でわかりました。この遺跡の動力についてそれで憶測にすぎなかった部分が、確信になったんです」


 オレに声をかけて来たのは、スイフト博士だった。


「確信……ですか?」

「はい、そうです。どうやらこのアスカ文明の遺跡は、古代の魔法技術で空中に浮いていた浮遊都市で間違いありません! そしてその動力炉が今わたし達の居るここにある物なのです! この巨大な動力炉から作り出されたエネルギーは、浮遊力となり、この大地全体を持ち上げるだけの力になっていたのです」


 いやいやいや、もしそうだったとしても、それだけのエネルギーをどうやって作り出していたってんだ?


「それって、ひょっとしてこの場所からあのウユニまで全部が一つの浮遊島だったって事ですか?」

「その通りです! ここはアスカ文明の時代に作られた超巨大人工島、ホーリュです! そうか、やはりわたしの研究は間違っていなかったんだ、コバヤシさん、貴方のおかげでそれが証明出来ました」


 いや、今は古代文明の真偽を論じている場合じゃないんだが、それよりもここがそんな巨大な人工島だとすれば、どうやってこの超巨大な土地を空中に浮遊させていたってんだ?

 今はその事を調べる方が重要、というか必須なんだけどな。


 もたもたしていると、ナカタと大魔王ガーファにここの事までバレてしまう。

 もしウユニの辺りが古代都市浮上前にナカタに見つかってしまえば、避難して集まっていた人達全員が犠牲になりかねない。


 ダメだ、このままでは古代都市浮上のエネルギーが確保出来ない。

 いったいどうすれば、この古代都市を浮上させる事が出来るんだろうか。


「コバヤシ、我が力を貸してやろう。魔力があれば動くのであろう」

「ヴォーイング様、残念ですが、風の力だけではこの島を浮かす事は出来ないみたいです」

「な、何だと!? 何故だ、なぜ出来ないのか言ってみろ!」


 空の魔王ヴォーイングがオレに協力してくれるようだ。

 だが、残念だが彼の全開の魔力ではここにある機械全てを吹き飛ばしかねない。

 それは他の魔王でも同じだ、つまり、魔王達の魔力を一度エネルギーにコンバートして、純粋な魔力だけのエネルギーに変換しなくては使えないと言う事だ。


 どうやらトミスモ鉱山で発掘される魔鉱石とは、そのエネルギーコンバートを済ませた後の魔力結晶という事になるようだな。

 まあ簡単に言ってしまえば、純粋に取り出した魔力を貯蔵した小型タンクといったところか。


「ヴォーイング様、残念ですがこのままでは魔力を使う事が出来ない様です」

「何だと、それではどうすればいいというのだ?」


 その時、スイフト博士がオレに悔しそうな声で伝えて来た。


「残念ですが、魔力炉を純粋なエネルギーに出来たとしても、それを伝達する方法がありません。オリハルコンやアダマンタイトではその魔力エネルギーを伝えるパイプを作るのがとても難しいのです」

「エネルギーのパイプ……ですか?」

「そうです、それがどうしても古代文明で解き明かせないロストテクノロジーで、オリハルコンやアダマンタイトを薄い板状にしたり、弾性のある柔軟性のある運用方法が見つからないんです」


 成程、ここに凄腕の技術者が集まっているが、彼等は硬い物や細かいものは作れても、それをいざパイプや回路にするとなると、オリハルコンやアダマンタイトは加工が難しいという事か。


 それなら何か、それに代わる高エネルギーを伝達できる大きな空洞のパイプになる物……。


 ――そうだ!! アレがあった!


「ベクデル様、お願いです、ネクステラ様に言ってトーデンさん、カンデンさんに、ナカタ達に壊された油田のサイロに使っていたラーバウォームの抜け殻を持ってきてもらうように頼めませんか!」

「え。ええ、わかったわ。ちょっと待ってなさいね」


 そう、以前火の魔王エクソンの土地で、油田を作る際に使ったラーバウォームの抜け殻、これなら高熱にも耐えられるし、柔軟性もある。

 オリハルコンやアダマンタイトで加工できないなら、ラーバウォームの抜け殻を使えば高熱のエネルギーを変換するコンバーターが作れるはずだ。


 水の魔王ベクデルは、瞬間移動の魔法でウユニに向かい、トーデン、カンデンの二人にラーバウォームの抜け殻を持ってくるように伝えてくれた。

 そしてどうやら燃え盛る火の中から物を取り出すのが出来なかったようで、そこは火の魔王エクソンが代わりに燃え盛る油田跡から焼け残ったラーバウォームの抜け殻を持ってきてくれたようだ。


 人間、魔族、技術者、魔王、考古学者、そしてオレとその仲間達、全員が一つの目標の為に力を合わせてくれている。

 オレ達に人類だけでなく魔族やこの世界に生きる全ての人達の命がかかっているんだ。

 だから、何が何でも失敗するワケにはいかない!


 そしてついに、全員が一丸となって努力した結果、ラーバウォームの抜け殻をパイプにして、考古学者のスイフトさんの監修のもとに文献を元にした魔力増幅炉、そして魔力の大型コンバーターが完成した。


 オレを含めみんなもう技術者全員がヘトヘトだ。

 だがやり切るだけの事はやった。


「ご苦労だった、コバヤシ。これからは我等が力を貸そう、魔王の力……見るがいい!」

「そうね、アタシも久々に頑張っちゃうから」

「そうじゃ、儂もお前には借りがあるからな、ここで返さんと気が済まん」

「安心しろッ! オレ様が力を出せば、こんな都市を持ち上げるくらいなんてことはないッ!!」


 四人の魔王がオレ達の為に全力を出してくれると言っている。


「皆さん、ありがとうございます!!」


 そして……四人の魔王は特殊な形に作られた魔力増幅炉に手をかざした。

 魔力が吸い取られ、純粋なエネルギーに変換され、太いパイプから動力炉に注ぎ込まれる。


 ズッ……ズゴゴゴゴゴゴッ!


 凄まじい地響きが起きている! どうやら本当に魔力炉が動き出したようだ。

 やった、成功だ!! 長い苦労の末、ついにオレ達は、全員の力で古代の浮遊都市を浮上させる事に成功した。

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