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第124話 世界の……破壊者??


 エシエス帝国、それはこの世界に存在する軍事国家の名前である。

 以前から世界征服の野望に燃える皇帝の下、各地で暗躍し、破壊工作や敵国の内部崩壊を企み、各地に刺客を送り込んでいた。


 そんなエスシス帝国に目を付けたのがナカタだった。

 ナカタはダイワ王の仕事をイツマの棟梁から奪い、国策の国家事業などを手掛けつつ、その建築設計図等をエスシス帝国やコフンユーゲン皇国にデータを売っていた。


 また、エスシス帝国やコフンユーゲン皇国の建築設計図もそれぞれ別の国に売り渡し、お互いの国の強硬派同士を争わせる事でどこかの国が戦争を仕掛ける状況を作り出そうとしていたのだ。


 戦争になれば街が破壊され、その場所を再建するには大金や資材が必要となる。

 だからナカタは各地で街を壊させ、その後に建て直す仕事を手に入れて大儲けしていた。


 だが、そんな彼の計画を悉く壊したのが小林(こばやし)太(たい)盛(せい)だった。

 小林は各地でゴーレムを使い、インフラの建て直しや災害地の復興などを手掛け、ナカタの利権や儲けるやり方を邪魔したともいえる。


 ナカタの手下にしていたはずのボリディア男爵やスエズ子爵、そして奴隷商人の悪事は全て小林と彼の仲間によって阻止され、ダイワ王国の貴族派は壊滅してしまった。


 その後、プライドの高いナカタは、底辺層と見下していたはずの小林が自分とは違い、この世界の脅威と呼ばれた魔王達を説得し、協力者にしていた事が許せなかった。


 それは、彼が生粋の血統主義の特権階級以外を認めない人種差別主義者だったのもあるが、それよりも人間より圧倒的な能力を持った魔王がたかだか何も持たないはずの底辺層の労働者でしかないはずの小林を認めたのが、何よりも彼にとって許せなかったのだ。


 その後、ダイワ王国に居場所の無くなったナカタは、空港建設の仕事にかこつけ、そこからもうこの国を裏切る算段を立てていた。

 それは、密かに部下達に調べさせていたエシエス帝国における古代遺跡の発掘で魔王を上回る世界最悪の大魔王の封印された石板の存在を確認していたからだ。


 そしてナカタは人間と魔族を戦争させようと、空港の造船デッキにあった大型飛行戦艦ヒンデンブルグを使い、空の魔王の部下に攻撃を仕掛けるように命令、彼の思惑通り人間と魔族は泥沼の戦争をするはずだった。


 だが……ここでも戦争を食い止めたのが小林だった。

 しびれを切らしたナカタは、別の空軍基地にあった飛行戦艦を奪い、それで魔族の村を空爆した後、ダイワ王国を離れてエシエス帝国に逃げた。

 そして、エシエス帝国で彼は今までの各国で荒稼ぎした全財産をつぎ込み、古代遺跡の発掘を急がせて封印されていた大魔王を呼び起こした。


 大魔王ガーファを封印から解き放ったナカタは、大魔王ガーファに取り入り、裏切り者の四魔王が人間と一緒になって大魔王を倒そうとしていると吹き込み、大激怒させた。


 こうして大魔王を掌の上で踊らせたナカタは、大魔王ガーファに対し、あなたに従わない下等な者しかいないこの世界を破壊しましょうと提案、世界中を飛行戦艦で移動しながら小林の造った建造物を見つけては全部破壊させていたのだ。


「アハハハハハ、最高ダ! あの雑草の造っタ建造物、全部がぶっ壊されていル。小林め、さぞ悔しがってるだろうナ。お前の造った物は何一つ残さなイ、それに小林に協力した奴らも全員ぶっ殺してやル」

「おい、人間。調子に乗るな、キサマは余の封印を解いたから生かしてやっているのだからな! この無能が、もし余の機嫌を損ねるなら、キサマもすぐに消してやる」

「そ、そんナ、勘弁してくださイ。それに、もしボクを殺してしまうト、ガーファ様も封印の石板にすぐに戻されてしまう事ヲ、お忘れですカ?」


 コレがナカタの抜け目の無さだ、彼は大魔王ガーファの封印を解く際、エシエス帝国並びにコフンユーゲン皇国の魔導士に命じ、彼の命と封印の石板を一体化させたのだ。

 つまり、ナカタがもし死んだり、殺されてしまった場合、大魔王ガーファが再び石板に封印されるように保険をかけておいた。


「この……人間が」

「まあそんな事言わないで下さイ、ボク達は他者を踏みにじる特権を持った特別な存在同士何ですかラ、金持ち喧嘩せずというじゃないですカ」

「まあいいだろう、キサマは余の封印を解いたから特別扱いにしてやる。だから裏切り者の魔王とそのコバヤシとやらをさっさと見つけ出せ。全てを滅ぼすのだ!」

「はイ、それではまず手始めにコフンユーゲン皇国に向かいましょウ」


 ナカタは飛行戦艦でコフンユーゲン皇国に向かった。


「大変です、チューテツ大皇猊下、空中戦艦がこちらに向かっています!」

「な、何じゃと。撃ち落とせ、魔法大隊全員で攻撃するのじゃ。朕を脅かす者は一族郎党全て皆殺しにせよ」


 コフンユーゲン皇国のチューテツ大皇は、いきなり現れた空中戦艦に皇都を襲撃され、憤慨していた。

 だが、宗教国家であるコフンユーゲン皇国の魔法大隊全部隊をもってしても、大魔王ガーファには傷一つ与える事が出来なかった。


「な、何故じゃ。朕の世界最強の魔法大隊が一時ももたず全滅じゃというのか、仕方ない……和睦じゃ、あの飛行戦艦に向けて和睦の使者を送れ、伝声魔法の使い手がおるじゃろうて」


 形勢の悪くなったチューテツ大皇は、ナカタと大魔王ガーファに和睦を申し込もうとした、だが……伝声の魔法で伝えられたのは、完全なる拒絶、処刑宣告だった。


「和睦なぞ認めん、全員死ね。最後くらいはせいぜい全員大きな悲鳴を上げ、大魔王への捧げものとせよ」

「ひ、ひいぃい、、嫌じゃ、嫌じゃ、朕は死にとうない……」


 だが、大魔王ガーファの絶大な魔力は、一瞬にしてチューテツ大皇もろともコフンユーゲン皇国を消滅させた。

 ここに長い歴史を保った宗教国家コフンユーゲンは歴史上から完全に姿を消したのである。


「フン、つまらん。肩慣らしにもならん。人間よ、もっと余を楽しませる事は出来んのか?」

「は、はイ、少々お待ちくださイ、すぐに用意しまス」


 ナカタは伝声の魔法で、エシエス帝国からの通信を受けていた。


「ナカタ殿、コフンユーゲンが滅びたと聞いたが、其方のした事なのか? 一度帝国に戻り、報告せよとの皇帝閣下のお達しだ」

「はイ、わかりましタ、すぐに帝国に向かいまス」


 ナカタは焦土と化したコフンユーゲン皇国を離れ、エシエス帝国に向かった。

 すると、エシエス帝国の機械師団が彼に銃口を突き付け、待ち構えていたのである。


「おっト、これはどういう事ですカ?」

「ナカタ、貴公はあまりにも強大な力を手に入れたようだな、その力は我等エシエス帝国に仇為すものとなるやもしれん、それ故に貴公をここで亡き者とさせてもらおう!」


 エシエス帝国の機械師団の銃砲撃がナカタの乗る飛行戦艦目がけて放たれた。

 世界最強の機械帝国の機械師団の全力での一斉射撃の前に、本当ならナカタの乗る飛行戦艦は空のチリになっているはずだった……。


 だが! 飛行戦艦には傷一つ付いていなかった。


「何故だ!? 世界最強国家エシエス帝国の機械師団の一斉射撃を受けながら、全くの無傷だというのか!!」

「のう、ナカタ。キサマの言っていた面白い事とはコレの事か?」

「はイ、コレが世界最強の軍事国家の全力の攻撃でス、どうですカ? 壊し甲斐ありますでしょウ」

「ふむ、確かにな。アレだけの数ならさっきの連中よりはよほど楽しめそうだ!」


 大魔王ガーファはエシエス帝国の誇る機械師団を次々と破壊し、ものの数時間も経たずに世界最強の機械師団は壊滅状態になっていた。


「そ、そんな……世界最強の機械師団が、ものの数時間もかからず全滅だというのか……」

「ふん、つまらん。そろそろ終わりにさせてもらおうか」


 大魔王ガーファは魔力のエネルギーを一か所に集め、一気にエシエス帝国の帝都目がけて解き放った。


 そして……この日で世界最大の国家が二つ、ナカタと大魔王ガーファによって消滅させられてしまった。


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