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第125話 終わる……世界??


 エシエス帝国とコフンユーゲン皇国、ダイワ王国以外の世界の二大国家と呼ばれた国は、ナカタと大魔王ガーファの手によって歴史上から姿を消した。

 その後もナカタと大魔王ガーファは飛行戦艦で世界中を飛び回り、全ての場所を爆撃していた。


 もし、小林や四魔王達が全員を避難させていなければ、世界中からありとあらゆる生命が消えていただろう。

 そして、その避難した人達がいたのが、ウユニと呼ばれる巨大な湖のあった場所、ボリディア元男爵の統治する盆地だ。


 幸いここはナカタが以前に実態が外から分からないように大量の煙や霧をまき散らし、内側が見えないようになっていた。

 だからナカタや大魔王ガーファに見つからずに済んでいたともいえる。


 また、誰も気が付いていなかったが、ナカタが工作していたのはあくまでも表側の山の下から見た際にここが見えなくなる小細工だったが、この古代文明で造られた人工超巨大島は元から敵からの攻撃に備え、島全体に認識疎外の魔法結界が施されていた。


 だからボリディア男爵の屋敷の近くの目視できる吊り橋には、ナカタは気が付いたがこのウユニの一帯の事は感知出来なかったともいえる。


 そして、この島に今大きな異変が起きていた。

 島全体が大きく揺れ、大地震が起きていたのだ。


「な、何だこれは!!」

「地震だぁー! みんな、気をつけろ、身体を低くするんだ」

「そんな、本当に世界は終わってしまうの?」


 大パニックになりそうな群衆だったが、それを落ち着かせたのは、四人の皇族、貴族だった。


「落ち着け、皆の者よ! 我等にはコバヤシ殿がいる」

「そうである、これは地震ではない、みんな冷静になるのである!」

「そうです、これはきっと、コバヤシ様が何かをしたに違いありません。皆さん、彼を信じましょう」

「その通りです。コバヤシ様はいつもわたくし達を助けてくれました。彼を信じれば、きっと皆さん助かります」


 パニックになりかけた群衆を落ち着かせたのは、ダイワ王、騎士団長フォルンマイヤー、アンディ王子、パナマ子爵の四人だった。


 彼等彼女等は全員が小林の世話になった人達だ。

 その王族達が小林を信じろと伝えると、群衆は落ち着きを取り戻す事が出来た。


 そして、地震が収まると、今度は島がいきなり上昇を始めた。


「な、何だ、これは……まさか、地面が上に上がっているのか?」

「し、信じられない、これはいったい何がどうなって……」


 地震で崩れた山が下に落ちていく、すると、山の崩れた部分から人々が見たものは、とても信じられない光景だった。


「なんなんだ、これは!?」

「じ、地面がどんどん空に持ち上がっている?」

「これは、夢じゃないのか? あまりにも馬鹿げている」


 そう、ウユニに避難していた人達が見たものは、山が崩れて外が見える状態になり、この大地がどんどん地上から離れていくといった光景だった。


 古代の浮遊都市は、その長い長い沈黙を破り、小林達の力によってついに浮上したのだ!

 人々は、自分達がいるのがかつての古代文明で造られた巨大人工島だという事がまだ理解できていないようだ。

 だが、この島が空に飛びあがった奇跡により、全員が焼き尽くされる世界から助かったという事だけはここにいる全ての人達が感じていた。


「奇跡だ、これこそ神の奇跡だ」

「いや、これは錬金術、または古代の技術の結晶だ」

「そんなのどうでもいいじゃないの、ここに来れたからみんな助かったんでしょう」


 人々は少し落ち着きを取り戻し、食事をする事にした。

 今まで爆撃から逃げたり、ここが見つかる危険性などを考えたりで誰一人落ち着いて食事をする事が出来なかったからだ。


 また、この人工島は、全長が数十キロ、下手すれば百キロ近くある物なので、十分自給自足できるだけの場所ではある。

 だからもし世界が滅びても、この島が無事なら人類、魔族達は生き残る事が可能ともいえるだろう。


 小林達の奮闘により、この古代文明の人工島は無事、地上のくびきから解き放たれ、大空に逃れる事が出来たのだ。



 オレはついにやり遂げた。

 この古代文明の浮遊都市は、魔王達の魔力で空中に舞い上がり、動力炉は順調に動き出したようだ。

 また、この浮遊都市の地下は巨大なエネルギータンクのようになっていて、そこには大量の魔鉱石に貯め込んだ魔力があるので、当分空を飛ぶ事は可能らしい。


「コバヤシさん! これは本当に素晴らしいです。まさに文献の通り、いや、それ以上です!」


 考古学者のスイフト博士が興奮気味にオレに話しかけて来た。


「そうなんですね、それで、その文献によると、この人工島ってどんな物なんですか?」

「お答えしましょう! この浮遊都市はホーリュ、古代アスカ文明によって作られた伝説の巨大都市です。アスカ文明はコンゴウと呼ばれた技術者達によって作られた古代都市で、空中に浮いて生活していたと聞きます」


 そうか、コンゴウってあのゴーレムの名前ではなく、技術者達の集団の名前だったんだな。

 まあ今はあの超巨大ゴーレムがコンゴウと呼ばれているけど特に問題は無いか。


 水の魔王ベクデルや雷の魔王ネクステラ達が世界中から避難民を集めた際、最後に残っていたコンゴウも一緒にウユニに移動させてくれた。


 残念だがカシマールが離れた際、魂の固定が出来なくなった五体のゴーレムは土に還ってしまったが仕方無い。


 もし仮に大魔王ガーファやナカタと戦う事になったら、この古代遺跡の建材を元にしたオリハルコン素材のゴーレムなら対抗できるかもしれない。

 だがそれよりも、この浮遊都市がいつまでも飛び続けていると仮定しない方が良いだろう。

 もし浮上する力が無くなれば、真っ逆さまに落ちて木っ端みじんになり、だれ一人助からない。

 だから浮遊都市のエネルギーが無くなる前に大魔王ガーファを倒し、ナカタの野望を止めなくては!


「皆さん、本当にありがとうございます。皆さんのおかげでこの古代都市が無事浮上しました。これで当分は動かす事が出来そうです」

「そうかッ! それは良かったなッ!」

「ふう、久々に本気で魔力を出したわい、おかげでまた子供の姿に戻ってしまったがな」

「あら、その姿可愛いじゃない、アタシはそれでいいと思うけどね」

「お前達、ふざけている場合では無いだろうが。大魔王ガーファ様をどうにかしなくては、このまま問題が片付かないんだぞ」


 四人の魔王が協力してくれたからこの古代都市は浮上出来た。

 だが、大魔王をどうにかしないと、問題解決にはならない。


「すみません、それで皆さんにお願いがあるんです」

「何? 今はちょっと疲れてるから後でよきゃ聞くわ」

「お願い? 儂に出来る事でたのむぞい」

「何だッ! 言ってみろ」

「それは今すぐにどうにかしなくてはいけない問題なのか? 大魔王様を抑える以外に何をしようというのだ」


 空の魔王ヴォーイングは最優先事項が大魔王ガーファの事だと分かっているみたいだ。


「そうです、ヴォーイング様の言った通りです。大魔王ガーファの脅威から世界を救ってほしいんです、どうかよろしくお願いします!」


 オレの頼みを聞いた四人の魔王はニッコリと笑いながら返事してくれた。


「勿論だッ! オレ様の力を貸してやろうッ!」

「アタシも協力するわね、でもちょっとだけ休ませて頂戴」

「儂も力を貸そう、そうじゃな、久々に大魔王様相手に本気を出してみるのも面白そうじゃ」

「そうか、コバヤシはまず最初に何をするべきか分かっていたのだな、我も協力しよう!」


 よかった、四人の魔王は全員がオレに力を貸してくれると言っている。

 これで大魔王を封印して世界の脅威を止める事が出来そうだ。


 それじゃあ最終作戦を実行する為、ここから出てまたウユニの所に戻るとしよう。

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