四人の魔王が大魔王ガーファを倒す為に力を貸してくれると言っている。
彼等にとっても魔族の存亡がかかった話のようだ。
どうやら大魔王ガーファは、以前に封印される前に自らを窘めた四人すら敵とみなしているようだ。
本来なら毛頭そんなはずない事なのだろうが、それでも結果として大魔王ガーファは四人の魔王達を敵にして戦った。
だから復活した大魔王ガーファにとっては、四人の魔王もその部下の魔族も全て敵だと考えているのだろう。
そして、その大魔王ガーファを封印の石板から解放したのがナカタというワケだ。
ナカタはダイワ王国を裏切り、世界最強の軍事国家エシエス帝国に味方すると、そこの遺跡に封印されていた大魔王の石板を見つけ、それを使って世界を破壊し始めた。
今はその大魔王ガーファのせいで世界が滅茶苦茶に破壊されている。
幸いオレ達は古代文明の浮遊都市を浮上させ、ナカタや大魔王ガーファの蹂躙から逃れる事が出来た。
だがそれも一時しのぎにしかならない、大魔王とナカタを倒さない限り、世界に平和は訪れないからだ。
「ベクデル様、ここからウユニに移動する事は出来ますか?」
「ちょっと待って、水が少なすぎて少し休まないと魔力が回復しないのよね」
四人の魔王は魔力の続く限り、この浮遊都市を起動させる動力炉にフルパワーの魔力を注ぎ込んでくれた。
おかげでこの浮遊都市が動き出したのだが、今度は魔王達が力を回復させる宇野に時間がかかりそうだ。
その時、考古学者のスイフト博士が良い事をオレ達に教えてくれた。
「コバヤシ様、実はこの遺跡、あまりにも大きいので転送装置が各箇所に作られているようです、それを使えばベクデル様の力を使わずとも移動できるかと」
「え、それは本当ですか! それはどこにあるんですか?」
スイフト博士の考察によると、この動力炉エリアにも古代都市の転送装置があるらしい。
また、その転送装置はメイン動力炉が動き出したから使えるとの話だった。
やった、これでこことウユニの行き来が出来る!
オレ達はいったん、全員で転送装置からウユニの場所に移動する事になった。
転送装置でオレ達が移動した先は、ウユニ側にあった古代遺跡の地下だった。
成程、どうやら本当にボリディア男爵領の盆地のほとんどが古代の浮遊都市だったみたいだ。
オレ達はウユニ側の遺跡の中で、この古代都市の全貌が分かる地図を見つけた。
透明の水晶板に映し出された古代都市の図は、この島が全長数十キロにもなる巨大島だという事をオレ達に再確認させてくれた。
「凄い、これならみんなの力を合わせればこの浮遊島を浮かせ続ける事が出来そうだ」
「そうだな、魔族の魔力持ちと人間の魔法使いでも大勢の人数であの地下の動力炉に力を注ぎこめば動かせ続ける事は可能かもしれんな」
これで四人の魔王にずっとあの動力炉を動かし続けてもらう必要が無くなった。
ここにある転送装置を使えば動力炉のエリアに移動する事が可能だ、それなら人間や魔族の中でも高い魔力を持った人達に魔力を注ぎ込んでもらえばこの古代都市を空中に浮かせ続ける事が可能かもしれない。
これなら浮遊都市がエネルギー切れで落下する前に大魔王を倒して世界を平和に出来る、さあ、四人の魔王とオレ達でナカタと大魔王ガーファを倒す為、作戦開始だ。
「皆さん、聞いて下さい。この浮遊都市はいつまでエネルギーが持つか分かりません、それなのでオレ達は今から大魔王を倒し、再び皆さんが元居た場所に住めるようにします。だから皆さん、どうか争わずに全員で協力して下さい」
オレがウユニから避難民全体にお願いをすると、全員の歓声が帰って来た。
そうか、みんなが生き延びる為に一丸になってくれているんだ。
そこには人間も魔族も関係無い、この世界に生きる全ての者が、力を合わせようとしているんだ。
「我は大魔王ガーファ様と戦う、さあ、我と思う者は共に来るがよい」
「儂もガーファ様と戦うつもりじゃ、無理強いはせん、来たい者だけ来るがよい」
「アタシも参加するからね、ついてきたい子はいらっしゃい」
「オレ様もいるぞッ! 大魔王様相手に勝てるワケの無い戦いッ! 燃えるじゃねえかッ!!」
どうやら四人の魔王は部下と共に大魔王ガーファと戦う覚悟を決めたようだ。
ここは下手にオレ達が一緒に行くというと、足手まといになってしまう。
魔族は空を飛べるが、人間は空を飛べないからだ。
仕方ない、ここは彼等を信じて待つしかなさそうだな。
次の日、魔力を復活させた四人の魔王は、大魔王ガーファとナカタのいる飛行戦艦目指し、戦いを挑んだ。
なんだか不安だ、本当に勝てればいいんだけど……。
◆
四人の魔王達は、部下と共にナカタと大魔王ガーファのいる空中戦艦を捜した。
大魔王ガーファの魔力は絶大だ、その力は全ての魔力、意思、エネルギーを司るモノであり、離れていてもどこにいるのかを感じる程だった。
それ故に四人の魔王は空を飛び、大魔王を見つける事が出来た。
その場所は、ダイワ王国の王都から少し離れた場所だった。
「見つけたぞッ! あそこにガーファ様がおられるッ!」
「そうね、アタシ達の力でどれだけできるか分からないけど、この戦いで勝たないと魔族にも人間にも未来が無いのよね」
「そうじゃな、数千年ぶりの死闘、勝てるかどうかわからんが、やってみるしかあるまい」
「総力戦だ、一気に行くぞ!」
火の魔王エクソン、水の魔王ベクデル、雷の魔王ネクステラ、空の魔王ヴォーイング、そしてその彼等の部下達は大魔王ガーファのいる飛行戦艦目がけ、総攻撃を開始した。
轟炎が吹き荒れ、濁流が押し寄せ、激しい稲妻が轟き、突風が飛行戦艦を襲った。
だが、それらの攻撃が飛行戦艦に届く事は無かった……。
「ガーファファファファファ、まさかこの程度で、余を倒せると思ったのか。身の程知らずの裏切り者共が、身の程を思い知らせてやるわ」
なんと、大魔王ガーファは四人の魔王の魔力、そして他の魔族達の攻撃を全て魔力として奪い取り、自らの物としてしまった!
そう、大魔王ガーファの力は、全てのエネルギーや意思そのもの、それなので魔力による攻撃は全て反対に彼のエネルギーになってしまったのだ。
「さあ、裏切り者共よ、これが余から下賜するものだ、ありがたく受け取るがよいっ!」
「う、うわああああっ!」
「バッ、バカなッ!!??」
「そんな、全く効かなかったっていうの」
「くっ、ここまで力に差があるとはのう……」
四人の魔王を残し、他の決死隊達は大魔王ガーファの魔力の前に完全消滅、もしくは吸収されてしまった。
魔族連合軍による大魔王ガーファへの特攻作戦は、完全失敗に終わってしまったのだ。
生き残ったわずかな魔族と四人の魔王は、仕方無く浮遊都市に撤退する事になってしまった。
「大魔王ガーファ、どうダ? 裏切り者への粛清は終わったのカ?」
「ふん、負け犬の裏切り者の魔王達は逃げ帰ったみたいだな」
「そうカ、早くそいつらを追いかけロ、きっとそこにあの雑草達が逃げ込んだ巣があるはずダ」
「偉そうな態度を取るな、キサマごとき人間、封印の石板さえなければ瞬時にくびり殺せるのだからな」
「……今に見ていロ、ボクを煩わせる連中を全て葬ったラ、キサマも再度封印してやるからナ!!」
大魔王ガーファとナカタは決して仲がいいのでも、信頼関係で結ばれているのでもない、お互いがお互いを利用しようとしているだけの関係だ。
だが、彼等にとっての敵が、同じコバヤシに関係する相手だから双方が手を組んでいるといっても間違いは無い。
ナカタと大魔王ガーファの乗る空中戦艦は、撤退した四人の魔王の魔力を追い、小林達の避難した空中都市を目標とし、航路を変えて飛んでいた。
そして今、この世界の住人達全てと、ナカタ、大魔王ガーファとの最終決戦が始まろうとしている。