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第127話 決死の……特攻作戦??


 四人の魔王達は、這う這うの体で逃げ出し、どうにか浮遊都市まで戻ってくる事が出来た。


「だ、大丈夫ですか皆さん!?」

「くッ! 残念だが作戦は失敗だッ!! ガーファ様を倒す事は出来なかった」


 火の魔王エクソンが悔しそうにオレ達につぶやいた。

 他の魔王も生き残った魔族達も五体満足の者はおらず、全員が満身創痍だ。


 どうやら魔王達による決死の大魔王ガーファ打倒作戦は完全敗北で終わってしまったらしい。

 魔王達と一緒に出撃したはずの多数の魔族は、出た時の五分の一以下に減っていた。

 多分全員戦死してしまったのだろう。

 生き残った魔族も現状戦えるのは指で数える程度しかいない。


 四人の魔王と生き残りの魔族達は、人間と魔族の魔力が使える人達の治癒魔法のおかげで回復は出来ているが、このまままた戦っても勝ち目は無い。


 さあどうしたものだろうか、オレ達は大魔王ガーファを倒す方法をみんなで考えた。

 だが、魔王達に聞いたところ、大魔王ガーファは魔力の攻撃の全てをエネルギーとし、自らの物として奪い、吸収してしまうそうだ。


 つまり魔法による攻撃は全く効果が無いといえるだろう。

 また、だからと言って攻撃で倒せるほど大魔王は弱くない。

 多分コンゴウの攻撃ですら受け止めてしまうだろう。


 オレ達は絶望感を感じていた。

 そんなオレ達に希望の光を見せてくれたのは、考古学者のスイフト博士だった。

 そうか、彼は古代文明研究のスペシャリストだった。

 スイフト博士は手持ちのメモを見ながら、オレ達に説明を始めた。


「コバヤシさん、実は古文書にある事が書かれていたんですが、コレって参考になりますでしょうか」

「スイフトさん、それは一体どういった内容ですか?」


 スイフト博士が教えてくれたのは、古代アスカ文明が大魔王ガーファと戦う事になった時、大魔王の力を石板に全て吸い込んだというものだった。

 スイフト博士が解読した古代アスカ文明の文献によると、全ての力を魔力にして奪い取る大魔王ガーファは、力押しや魔法を使って倒すよりも古代の叡智を結集した石板に封印した方が良いという結論になったようだ。


 つまり、大魔王ガーファはエネルギー系の攻撃全てを無効化してしまうが、吸い込む力にだけは抵抗できないという事らしい。


 それなら、オレ達は大魔王ガーファを倒す事を考えず、ナカタの持っている石板を奪ってしまえば再度封印出来る。


 それならオレ達でもあの大魔王ガーファと戦えるかもしれない!

 回復魔法で傷の癒えた四人の魔王に、オレは自分の考えた作戦を伝えた。


「ベクデル様、ネクステラ様、エクソン様、ヴォーイング様、皆様、オレの作戦を聞いてもらえませんか」

「何、コバヤシちゃん、何かいい手を考えたのかしら?」

「はい、オレ達も一緒に戦おうと思うんです」

「冗談! 人間ごときが大魔王様と戦おうなんて、いくらアンタでもお断りよ!」


 まあそう言われるとは思った、どう考えても非力な人間が大魔王相手に勝てるワケが無い。

 いくら真顔で話しても、冗談で水を差したと思われるだろう。だが、オレは食い下がらず、話を続けた。


「だから方法があるんです、それは……皆様の協力が無ければ成り立たない方法なんです」


 オレは、四人の魔王にスイフト博士に教えてもらった大魔王ガーファを封印する石板の事を伝えた。

 すると、オレの話を聞いた四人の魔王が全員、渋い顔をした。


「それしかないかッ! まあ、仕方ないなッ!」

「儂らもそろそろ覚悟を決めんといかんかのう、そうじゃな、ヴォーイング」

「うむ、我もそれ以外は無理だと感じた」

「残念だけど、それしか方法は無さそうなのよね」


 何故だろうか、大魔王を封印するという話を聞いた四人の魔王が覚悟を決めたような話し方をしている。


「皆さん、大魔王ガーファを封印するだけなのに、なぜ皆さんがそんなに思いつめているんですか」

「コバヤシちゃん、大魔王様ってのはね、存在する事で魔力を作り出せる存在、つまりアタシ達は大魔王様が封印されてしまうと、この世界にいる事が出来なくなってしまうのよ」


 そうか、大魔王ガーファを封印するという事は、この世界から魔力が失われるという事になるのか!

 だから四人の魔王は大魔王ガーファを封印すると聞いて、自らの消滅を感じていたのか。


「でもそれしかなさそうだから、アタシはもう覚悟を決めたわ、コバヤシ……行くぞッ! これが魔族と人間の最初で最後の共闘ッ、全てを賭けた戦いになるからなァ!!」


 水の魔王ベクデルが普段の砕けた話し方をやめ、オレに話しかけて来た。


「ベクデルさん、良いんですね……」

「あァ、これが本当の闘いだ、この戦いィ、勝たなければ人間だけでなく、我等魔族の未来も無いッッ。全てのこの世界に生きる者と大魔王との戦いだァ!」


 普段と態度の違うベクデルを見た他の魔王も決意を新たに表明した。


「フン、その姿を見るのは数千年ぶりか。それでは我も本気を出そう」

「そうじゃな、儂らの力、どこまで通用するか分からないが、陽動くらいにはなるじゃろうて」

「コバヤシ、オレ様達が大魔王ガーファを食い止めるッ! その間にあの人間から確実に石板を奪い、必ず大魔王を封印しろッ!!」


 そして、水の魔王ベクデル、雷の魔王ネクステラ、彼の部下のトーデンとカンデン、火の魔王エクソン、空の魔王ヴォーイング、その娘ジャルとアナによる魔族の決死隊と、人間側のフォルンマイヤーさん、モッカとファイアドラゴン、カシマール、それにオレとコンゴウ

のチームが出来た。


 このチームの編成は、魔族側は大魔王ガーファへの足止めを、そしてオレ達はナカタの持つ石板を奪う事が目的だ。


 出発前のオレ達に、魔技師の人達がある物を手渡してくれた。

 それは、金属で出来た筒で造られたコードのある魔鉱石で動く道具だった。


「これは?」

「これは、伝声の魔法を使った通話の出来る魔道具です。これがあれば離れた場所でも話が出来る物で、古代文明の産物として見つかった物を再現したものです」


 成程、これは古代の魔法で使える電話ってところか。

 これがあればオレ達でも離れた場所での会話が聞こえるって事か。


 そしてついに、オレ達のいる古代都市にナカタの飛行戦艦が狙いを定めて来た。


 大魔王の魔力が放たれる! だが、それは古代文明のバリアで防がれた。

 どうやら古代都市が起動した際、この巨大人工浮遊島全体にバイアフィールドが張られた様だ。

 このバリアフィールドは、大魔王ガーファの魔法を防いでくれた。


 ――今だ! オレ達はファイアドラゴンに乗せてもらい、大魔王ガーファとナカタのいる飛行戦艦目がけて上空から飛び降りた。


 さあ、今からが最終決戦だ! 何が何でも絶対にナカタの奴から大魔王を封印する石板を取り返してやる!!


 大魔王ガーファは四人の魔王が食い止めてくれている。

 オレ達はその間にこの飛行戦艦の中にいるナカタから封印の石板を手に入れるんだ!

 伝声の魔法道具からは、大魔王ガーファと対峙した四人の魔王の声が聞こえて来た。



「この裏切り者共が、そんなに貴様らは人間の尻を舐めていたいのか」

「何とでも言えばいいィ! オレ達はお前を倒す為にここに来たんだァ! 水の魔王の力、テメエに見せてやるぜェ!!」

「我は大魔王の地位になぞ何の興味も無い、ただ、友の為に戦うだけだ!」

「儂もあのコバヤシの為に力を貸してやろうと思っておるだけじゃ」

「オレ様もいるからなッ!! さあ派手に殺ろうぜッ!!」


 四人の魔王は空中に大魔王ガーファを呼び出し、その視線を自分達の方に向けさせた。

 そう、戦うのが目的ではなく、いかに小林に目を向けさせない時間稼ぎが出来るかだ。


 そして、最大の対決が始まった!

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