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第128話 大魔王の……封印??


 大魔王ガーファと四人の魔王。


 水の魔王、雷の魔王、火の魔王、空の魔王が部下と共に最強最悪の大魔王と戦っている。

 空は荒れ狂い、雷は轟き、火は燃え盛り、濁流が押し寄せる。


 だが、その全ての攻撃は、大魔王ガーファを傷つける事も出来ず、吸収されるだけだった。

 四人の魔王の攻撃を全て余裕で受け止め、エネルギーを吸収した大魔王ガーファは嘲るように魔王達を見下していた。


「ファファファファ、無駄だというのが分からんのか。所詮人間などと馴れ合いをする魔族など、その程度の力と知恵しか持たんか。愚かよのう」


 大魔王ガーファは圧倒的な上からの立場で笑っている。

 自らに攻撃をしてきた四人の魔王の攻撃は、彼を傷つけるどころか、全てをエネルギーに変えられ、吸収されているからだ。


「くそっ!! ジリ貧じゃねえかよォ……」

「こうなったら直接攻撃を叩きこんでやる! 行くぞ、ジャル、アナ!」

「はい、お父様!」

「わかりましたわ!」


 空の魔王ヴォーイングが魔法攻撃では無く、直接攻撃に切り替えた。

 彼は、ジャル、アナの二人の娘と共に、三方向から縦横無尽に大魔王ガーファ目がけて攻撃を仕掛けた。

 だが、大魔王ガーファはそれを余裕で笑って受け止めている。


 魔王と大魔王の能力差には、それほど決定的な差が有ったのだ。

 だが、それでも空の魔王ヴォーイングは自慢の翼を傷つけられてもなお戦い続けた。

 だがジャルとアナの二人が傷つき、飛行戦艦の甲板に落下してしまった。


 二人は雷の魔王ネクステラの部下、トーデンとカンデンに助けられ、一旦飛行戦艦の無事な場所に待機している。


 魔王達は自らが傷つきながらも、大魔王ガーファと戦い、時間を稼いでいた。

 それは、小林がナカタを追い詰めるのを待っているからだ。


 大魔王と四人の魔王の死闘が続いている頃、飛行戦艦の中では小林とその仲間達が縦横無尽に駆け回っていた。



「ナカタ、どこだ!!」


 オレの指示でコンゴウは飛行戦艦の壁を次々と破壊していた。

 この飛行戦艦、実はエシエス帝国が古代遺跡から発掘したものだったのだが、その頑丈さでもオリハルコンで造られたコンゴウを止める事は出来なかった。


 壁が次々とぶち破られ、逃げまどう兵士達の中をオレ、モッカ、ファイアドラゴン、カシマール、フォルンマイヤーさんが駆け回る。

 モッカはファイアドラゴンと共に、カシマールは大魔王とナカタの犠牲になった人達に力を貸してもらい、ナカタの手下の兵士達が次々となぎ倒されていった。

 投降した兵士達はフォルンマイヤーさんが一か所に集め、武器を没収している。


 そしてオレは甲板から艦内の通路を走り、ナカタを捜していた。


「ナカタ、どこだ! 出てこい!!」


 オレが叫ぶと、ナカタの部下の兵士が上部デッキの方に逃げ込んでいるのが見えた。

 どうやらナカタはそこにいるらしい。


 オレはついにナカタを追い詰め、飛行戦艦のデッキに到着した。

 ナカタはオレを見ると、涙目になりながら黄金でメッキした銃を撃って来た。

 アイツ、こんな時にまで貴族主義かよ。


 焦った素人の撃った銃の弾丸が当たるワケも無く、オレは一気に踏み込んでナカタの顔面にパンチを叩きこんだ。

 机の前に座ってずっと命令をしていただけの奴に、現場でずっと汗水たらして働き続けていたオレが負けるかよ!


 オレのパンチは思った以上にダメージがデカく、ナカタの奴は上部デッキの窓をぶち破り、甲板に落下した。


「コンゴウ、オレを降ろしてくれ!」

「グオォゴゴゴゴゴ!!」


 コンゴウが上部デッキに手を伸ばし、オレを掌に載せて甲板に降ろしてくれた。

 そして、オレはナカタの上に馬乗りになり、何度もパンチを叩きこんだ。

 顔面がボコボコになり、血だらけになったナカタはもうオレに逆らおうという気力すら失ったようだ。


 だが、いくら探してもナカタは石板を持っていなかった。

 何故だ、コイツの事だから大魔王を封印していた石板を持っているはずなのに。


「ハッ、どうせボクを倒せば石板が手に入るとでも思ったんだロ、残念だったナ、お前達は大魔王ガーファによっテ、全員殺されるんダ!」


 コイツ、こんな時までオレ達を煽り続けているのか。

 だが、コイツをいくら調べても石板が見つからない。


 いったいどこに石板を……。


 このまま石板が見つからなければ、足止めしてくれている四人の魔王も倒され、今度こそ世界が終わってしまう。


「お兄さん、見つけたのだ! ここに石板が隠されているのだ!!」

「な、何故ダ! 石板のアリかを知っている奴は全員処分したはずなのニ!!」


 そうか、ネクロマンサーのカシマールなら死人から話を聞き出す事が出来る。

 そこで証拠隠滅に殺されたクルーから石板のある場所を聞き出したんだな。

 これで形勢逆転だ、石板の力で大魔王ガーファを封印してやる!


 オレはコンゴウにナカタが石板を隠していた船の後部に運んでもらい、頑丈な金庫をぶち破った。

 金庫の中にあったのはスライド式になっている二枚の石板、これが大魔王を封印していたモノなのか。


「やった、ついに手に入れたぞ。コレが大魔王を封印する石板だ!!」


 オレは、前方で戦う四人の魔王と大魔王目がけ、封印の石板をかざした。


「大魔王ガーファ、お前を再び封印してやる! コレを見ろ!!」

「な、何だそれは!! ま、まさか封印の石板だと!? ……そ、そんな……嫌だ、嫌だあぁぁぁぁぁァァァァ!!」


 石板が光り輝き、大魔王が封印される。

 オレはバランスを崩さないようにモッカの連れたファイアドラゴンに体を支えてもらいながら、大魔王の力を石板に吸い込み続けた。


 凄い力だ、もしここで手を放してしまえば、大魔王の封印は不完全になり、作戦は失敗してしまう。


「コバヤシ、私もお前を支えてやるのである!」

「お兄さん、ボクも力を貸すのだ!」

「こばやしっ、モッカも、てつだうっ!!」


 フォルンマイヤーさん、カシマール、モッカ、そしてオレは、全員でお互いを支え合いながら、大魔王ガーファを石板の中に完全に封じ込めた。


 やった!! ついに、ついに大魔王を封印したんだ。

 力の抜けたオレ達は、その場に座り込んでしまった。


「あ、あれハッ! そ、そんナ、大魔王を封印した石板ガッ!! アレを小林に渡してたまるカッ!!」


 ドゴッ!!


 最後の魔力で重機を作り出したナカタはオレに体当たりをし、大魔王ガーファの封印された石板をオレから取り返そうとした。


 ――だがその時、大魔王ガーファが封印され、魔力の枯渇した飛行戦艦は大きく傾き、大魔王ガーファの石板を両手で抱えたナカタは、そのままバランスを崩し、甲板から滑り落ちていった。


「う、うわぁああああアアっっ!! 誰かッ!! 助けてくれぇぇエェエッ!!」


 だが、誰一人として……ナカタを助けようとする者はいなかった。

 そして、ナカタは大魔王ガーファの封印された石板もろとも、飛行戦艦から落下し、地の底深くに落ちていった……。


 ついに……ナカタ、そして大魔王ガーファとオレ達の戦いが終わった。

 安心したオレ達だったが、そうも言っていられないようだ。


 大魔王ガーファが封印され、魔力がどんどん失われていく。

 早くこの飛行戦艦から脱出しないと!


「ファイアドラゴン、みんなをのせてっ!」

「ギャオオオウウン!」


 オレ達は甲板でファイアドラゴンの背中に乗せてもらい、魔力を失い墜落していく飛行戦艦から脱出した。

 魔力が失われ、ファイアドラゴンも空を飛ぶのが難しいようだ。

 さらに、超巨大ゴーレムのコンゴウまで乗せているんだから、労力は普段の数倍以上と言えるだろう。


 だが、それでも彼女はオレ達を乗せて、浮遊都市まで運んでくれた。


「帰って来た! コバヤシさん達だ!!」


 助かった……オレ達は、ファイアドラゴンのおかげで無事、浮遊都市まで戻ってくる事が出来たんだ。


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