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第129話 コンゴウの……最後??

 古代の浮遊都市に戻る事の出来たオレ達は、ファイアドラゴンの背中から降ろしてもらったが、誰一人として、その場に立つ事が出来ない程疲れ切っていた。


 流石のファイアドラゴンも、オレ、モッカ、カシマール、フォルンマイヤーさん、それにあの巨体の超巨大ゴーレムコンゴウを乗せて飛んだんだ、もうまともに動くだけの力もあるまい。


 空中に浮遊している間に、浮遊都市の側面の山がどんどん崩れていた。

 そしてむき出しになった側面からは、遠くの方に飛行戦艦が見えた。


 ナカタと大魔王ガーファの乗っていた飛行戦艦は、大魔王ガーファが石板に封印され、その魔力を失い……どんどん地上に墜落していった。

 そして、地面に激突した飛行戦艦は、大爆発の末、完全に消滅した。

 飛行戦艦の……最後だ。


 今度こそ、本当に終わったんだ。

 この世界を脅かしていたもう一人の転生者ナカタ、そして世界を恐怖で支配しようとした大魔王ガーファ、この二人はもういない。


 だがオレには心残りがあった。

 そう、大魔王ガーファを倒す為に協力してくれた四人の魔王と魔族達だ。

 彼等は大魔王ガーファが封印されてしまい、全員が魔力を失い消滅してしまったのだろうか?


 オレがそんな事を考えていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえて来た。


「何しんみりした顔をしてるのよ、アタシよ」


 その声は……水の魔王ベクデル!?


「ふう、危機一髪だったわね、アタシの魔力が完全に枯渇する前に、ボロボロの全員を瞬間移動の魔法で送ってあげたのよ、でも、場所まで完全指定する前だったから、遺跡の中にいるかもね」


 この飄々としたしゃべり方、間違いない。

 水の魔王ベクデルは、水の魔力が尽きる前に瞬間移動の転移魔法で他の三人の魔王と魔族達をこの浮遊都市に送り込んだらしい。


 よかった、これで全員助かったんだ。

 だが、喜んでいられるのはそこまでだった。


 ガゴンッ!! ズゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!


 な、何だ!? 凄い地震が起きている。

 いや、おかしい。ここは浮遊都市、地震なんて起きるはずが無い。

 そうなると、ひょっとすると……!


「た、大変だ! 島が、どんどん下に落ちている!」

「な、何だって!?」


 なんと、大魔王ガーファが封印された事で、この世界の魔力が尽きようとしているのだ。

 この超巨大な普通都市を動かしていたのも、魔法によるものだ。

 だから、大魔王ガーファが封印されてしまった為、この古代都市は落下を始めた。


 どうすればいいんだ! このままでは、全てが地面に落下してしまい、今度こそ人類も魔族も全ての命がオシマイだ!


 この状況で、誰もがパニックになっているかと思ったが、意外にそんな事は無かった。

 どうやら、ダイワ王やパナマさん達が民衆を落ち着かせているようだ。


「皆の者、狼狽えるでない、今回の事、まさに人類だけでなく世界の危機だといえるであろう。だが、儂等にはコバヤシ殿がいる。彼ならきっとこの世界を救ってくれるに違いない」

「その通りですわ。わたくし達は何度も何度もコバヤシ様に助けて頂きました。彼はきっとわたくし達を救ってくれます、だから信じましょう。もし、仮にこの世界が終わるとしても、正しい事をしたわたくし達は……皆、神の国に召される事でしょう」


 頼む、そこまでハードルを上げないでくれ……。

 今回ばかりは、オレにもどうにも出来ないんだ。


 四人の魔王達は魔力を失い、誰一人として何も出来ない。

 また、いくら技術者がどうにかしようとしても、この超巨大な人工の浮遊都市の落下を食い止められる者はいない。


 今度こそ世界の終焉か、まあ……転生後色々やったよな。

 前の世界で、ブラック企業で過労死した後……この世界に転生したオレは、ゴーレムマスターのスキルで人々の為に色々と建造物を造り、悩みを解決してきた。

 まさか最後に古代の浮遊都市を修理する事になるとはとても思えなかったが、仕事内容としてはもう大満足だ。


 オレと一緒に過ごしてくれたカシマール、モッカ、フォルンマイヤーさん。

 全員と過ごした日々は楽しかったな……。

 そして、コンゴウ……彼が居なければ、オレはここまで……。


 アレ? コンゴウは? ファイアドラゴンに乗ってオレ達と一緒に帰ってきたはずのコンゴウが見当たらない。


 コンゴウはいったいどこにいるんだ!?


「コンゴウ! どこだ! いたら返事をしてくれ!」

「グオゴゴゴ……ゴゴ……ゴッッ!!」


 なんと、オレの持っていた伝声の魔法の魔道具から、コンゴウの声が聞こえて来た。

 どこだ、どこにいるんだ!?


 オレ達のいる浮遊都市はどんどん地上に落下、このままでは地面に激突した浮遊都市は衝撃で粉々に砕け、避難してきた人達は誰一人として助からない!!


 そして……ついに、浮遊都市は地面に落下、衝突してしまった!


 ズシィイイイインンッ!!!!


 凄まじい衝撃が地響きとなって、浮遊都市全体を揺らした。


 ……だが、浮遊都市は粉々に砕けず、安定を保っていた。


 ――何故だ!? 天空高くから落下したはずの浮遊都市が全く粉々に砕ける事も無く、安定している。


 だが、その理由はその後すぐに判明した。


 グラッ……地面が大きく傾いた。

 そしてその後、地面は、今度は反対側に傾いた。

 これは、いったいどうなっているんだ!?


 オレはとてつもなく嫌な予感がし、コンゴウに伝声の魔法道具で話しかけてみた。


「コンゴウ! どこだ! 今どこにいるんだ!!」

「グオォゴゴゴ……コバ……ヤシ、ワレ……ジメンニ……イル」


 地面にいるだって!?

 まさか、オレ達のいる浮遊都市が粉々に砕けなかったのって、コンゴウがたった一人でこの下で支えているのか!?


「コンゴウ、無茶はよせ! もう良いんだ、みんな無事だ、ここは守られた!」

「ヨカッタ……コバヤシ。コンゴウ、サイゴノ……シゴト、スル」


 最後の仕事……まさか!


「コンゴウ、もういいんだ、この状況なら浮遊都市が粉々に砕ける事は無い、もう降ろして戻ってくるんだ」

「ムリ……モウ、コンゴウ、ウデ、コワレテイル」

「何だって!? コンゴウ、どういう事だ!!」


 コンゴウは腕が壊れていると言っていた。


 四大魔王ですら傷をつける事が出来なかった古代文明最強のゴーレムの腕が壊れたって、ひょっとしてこの超巨大な浮遊都市をたった一人で両手で支えたからなのか。


 コンゴウは、ギリシャ神話に出て来た天空を支える巨人アトラスのように、この超巨大浮遊都市を両手で支えて壊れないようにし、オレ達を守ってくれた。


「コンゴウ、もう無理なのか……ここに戻ってこられないのか」

「コバヤシ……ハカイスルダケシカ……デキナカッタ……ワレ。コバヤシノ、オカゲデ……モノヲツクル、コト、デキタ」


 まるでお別れの言葉だ。

 コンゴウはもうオレ達の所に戻ってこられないと分かっているのだろう。

 だから最後にオレに感謝の気持ちを伝えようとしているか……。


「コンゴウ、モッカ、おっきなコンゴウのことっ、だいすきだったのだっ」

「コンゴウ、ボク、キミのおかげで、とても助かった、感謝しているのだ」

「コンゴウ殿、この国、いや……世界を守り続けた守護神として、其方の名前は永遠に語り継いでいくのである!!」


 モッカ、カシマール、フォルンマイヤーさんが、オレの持つ伝声の魔道具で、それぞれの気持ちを込めたお別れの言葉をコンゴウに伝えた。


「アリガトウ……ミンナ、ソシテ……サヨナ……ラ……」

「「「「コンゴウゥー!!!!」」」」


 ズズズズゥウウウウウンンッッ!!


 浮遊都市は、縦に大きく揺れ、そして沈黙し、地面に着地した。

 それは、コンゴウが力尽き、古代都市の下でバラバラに砕けた事を意味していた……。


 古代文明最強の黄金巨神、超巨大ゴーレムコンゴウは……人々を守る礎として、その最後を遂げたのだ。


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