コンゴウのおかげで、世界は救われた。
古代アスカ文明の最高の技術集団の名前、その名前を冠した最強の超巨大ゴーレム、それが超巨大ゴーレムのコンゴウだった。
そのコンゴウは、浮遊都市落下の際、衝撃を与えない為、自らの意思で人工島の外に飛び出し、その下で待ち構えて浮遊都市を支え、粉々に砕けないように支えてくれた。
だが、超巨大都市をたった一人で支えようとしたコンゴウは、その重みに耐えられず、接地した浮遊都市の下敷きになり、粉々に砕けてしまった……。
そう、コンゴウの犠牲のおかげで、この世界に住む人達は救われたんだ。
みんながコンゴウの事を思い返していた。
あの巨体、彼はオレの大事な相棒であり、共に苦楽を共にした友だった。
古代文明により、魔族と戦う為に作られた破壊の巨神、だが彼はオレの説得で壊す為の力では無く、造る為の力を発揮し、多くの建造物を造ってくれた。
みんながコンゴウの犠牲を悲しんでいる、そう、コンゴウはこの世界を救う礎として自らを犠牲にしてくれたんだ。
「コバヤシちゃん、大丈夫?」
「はい、大丈夫です。こんな事で悲しんでいたら、コンゴウに笑われますから」
オレを心配してくれたのは、水の魔王ベクデルだった。
だが、大魔王ガーファが封印され、魔力が枯渇した世界で、何故魔族が存在し続けているのだろうか。
「あら、その不思議そうな顔、どうしてアタシがここにいるかって言いたいみたいね。そうね、大魔王ガーファが封印され、アタシ達は全員魔力が枯渇して消滅すると思ってたんだけど、どうやらこの世界の神ってのに助けられたのかしらね」
そうか、大魔王ガーファの支配下から離れた魔族は、あのガチムキゴリマッチョの創世神の力で助けられたのか。
「どうやらそうみたいだな、我も魔力は失ってしまったようだが、最低限飛ぶくらいの力は残っているようだ」
「ふう、儂もおるぞい、しかしベクデルのきゃつ、時間が無かったとはいえ、何故昔のゴミ捨て場に儂を転移しおったんじゃ」
「ぼやくなぼやくなッ! 命があっただけ良しとしようじゃないかッ! アチチッ、何で炎の魔王のオレ様がこの程度の残り火で火傷するんだッ!?」
どうやら絶大な魔力は失ったようだが、四人の魔王と他の魔族達は、創世神の力で消滅せずに済んだみたいだ。
そうか、これからは彼等も亜人のような扱いの魔族という事になるのかな。
世界から魔力が失われた、これはモッカやカシマール達の力も失われてしまったのだろうか。
「カシマール、何か聞こえないか?」
「ダメなのだ……何も聞こえないのだ」
そうか、カシマールの魂と会話する力というのも、魔力で成り立っていたとするなら、その力も失われてしまったのかもしれないな。
「モッカ、ファイアドラゴンが何を言っているかわかるか?」
「うんっ、ふぁいあどあごん。もうそらをとべないかもって、ふあんがっているっ」
モッカの能力は魔力では無く、純粋に生き物の声を聞く能力だから失われたワケではなさそうだ。
だが、ファイアドラゴンの能力は最低限に激減しているらしいな。
オレがこの世界の事で分かった事は、大魔王ガーファが封印され、もう二度と復活する事は無いだろうという事と、大魔王の魔力で成り立っていた魔法の力は世界から失われたという事だ。
これからは魔力に頼らない世界を作っていかなければいけない。
そうなるとオレにはもうゴーレムを生み出す力が無いんだろうか。
「出てこい! ゴーレム!!」
オレはオリハルコンの床に向かい、スキルでゴーレムを生み出そうとした。
だが……オリハルコンの地面は何の反応も示さなかった。
どうやら、魔力が失われ、オレのゴーレムマスターの力も消えてしまったようだ。
まあ仕方無い、この世界を救う為の力を使い切ったんだ、これからはスキルに頼らないで生活していこう。
オレがそう決意を新たにしていた時、オレに語りかけてきた集団がいた。
「コ、コバヤシ。わ、わしらに、や、やらせてほしい事があるんじゃ」
「そうです、コバヤシさん、是非とも、僕達に貴方の為に力を使わせてください!」
「儂も手を貸す、コバヤシさんに是非とも贈りたいものがあるんだ」
「わたしも協力させて下さい、コバヤシさんにお礼をしたいのです」
なんと、魔技師の人達がオレに何かを作ってくれるそうだ。
それには考古学者のスイフト博士とカシマールも呼ばれていた。
オレには完成するまで見せないと言っていたが、何を作ろうとしているのだろうか?
世界が火の海になり二週間が過ぎた。
大魔王ガーファが消え、世界全体に降り注いだ雨は大地を濡らし、ようやく世界は平穏を取り戻した。
フォルンマイヤーさんやパナマさん、それにダイワ王やアンディ王子達は、避難してきた人達を元居た場所に帰す為、尽力してくれている。
四人の魔王も一緒になってこの古代都市から元居た場所に戻る人達を案内してくれているようだ。
モッカは一族と一緒に、シャウッドの森の焼け跡に戻った。
魔技師とスイフト博士、それにカシマールは、ウユニの古代遺跡の中で何かを作っているらしい。
そしてついに、何かが完成したようだ。
オレは、ウユニの遺跡の中に呼ばれ、魔技師達の製作品を見せてもらう事になった。
「さあ、コバヤシさん、どうぞ見てください!」
オレが見たのは……少し小さいとはいえ、オレと共に苦楽を共にしたゴーレム、コンゴウだった!
「こ……これは!?」
「これはコンゴウです。スイフト博士の古代の文献から、オリジナルの十分の一程度のサイズですが我々の力を全て使い、完成させました」
「お兄さん、ボク、そのコンゴウの疑似エネルギーコアというのに、元のコンゴウの魂がどんなものだったかを伝えてほしいと頼まれたのだ」
そうか、そういう事だったんだ。
魔技師達とスイフト博士、そしてカシマールは、この古代都市の下敷きになって粉々に砕けたコンゴウを、自分達の持てる最高の技術で再現し、オレに用意してくれたんだ。
「コンゴウ! オレの事が分かるか!?」
「グゴゴゴ……コバ……ヤシ、ワレ、コンゴウ。オマエノ……ナカマ」
本当だ、この新しいコンゴウはオレの事を知っていた。
疑似生命エネルギーのコアとはいえ、カシマールが前のコンゴウの事を教えてくれたから、このコンゴウはオレの事を認識できたのだろう。
「コンゴウ! これからもよろしく頼むぞ!!」
「グゴゴゴ……コバヤシ、サア、シゴト……シヨウ」
「そうだな、まずはこの遺跡の修理からだな!」
オレは、スキルを失った代わりに、最高の相棒に再び会う事が出来た……。
◆
数年後、オレ達は忙しく働いていた。
「はい。こちらゴーレムカンパニーなのだ。用件は何なのだ?」
「私である、コバヤシはいるか? 復旧した王宮に早くエレベーターを設置してほしいと王様がしびれを切らしているのである」
「そう言っても、鉄道の敷設の方がまだ終わっていないので、その作業の後になるからあと数か月後になると伝えておいてほしいのだ」
「コバヤシっ、こっちはゴゼンのサギョウおわったっ。ファイアドラゴン、がんばってくれたっ」
さあ、仕事を終えてお昼休みだ。
甘いケーキで糖分とエネルギーを補給して、また午後から頑張ろう!
オレ達は大魔王ガーファによって滅茶苦茶にされた世界をどんどん建て直している。
魔技師達とスイフト博士のおかげで疑似生体エネルギーコアの量産に成功し、小型ゴーレムは建築、建設に欠かせない物として世界各地で大活躍中だ。
そして異世界ゴーレムカンパニーは今日も営業中。
オレ、モッカ、カシマール、それに外回りのような感じであちこちに移動中のフォルンマイヤーさん、民衆にオレ達の事を伝えてくれているパナマさん、各地で活躍中の四人の元魔王、ゴーレムや機械類を製造してくれる魔技師のみんな、誰が欠けても困る大切な仲間達だ。
そして……オレの最高の相棒、ゴーレムのコンゴウ!!
「さあ行くぞ、コンゴウ! 次の現場へ!」
「グゴゴゴゴッ!」
ここは異世界ゴーレムカンパニー、建物を造り、街を造り、世界を造り、幸せを造る会社だ。
そして、オレと仲間達はこれからもずっと、この世界が快適に暮らせるように建造物を造り続けていくだろう。
完