「で、F16064……でしたっけ?」
俺は無数のサーバーラックが
「あー、これは列と階と入り口からの番号っぽいですね。十六階へ登りましょう!」
サーバーの位置が分かれば後は引き抜くだけの簡単な作業――――。
いよいよ見えてきたゴールに胸が高鳴る。ヌチ・ギとの死闘の決着まであと一歩。その想いが、全身の細胞を熱く震わせた。
しかし――――。
「十六階か……、間に合いそうにないな……」
レヴィアが
「へっ!? 時間制限があるんですか?」
思わず声が
「そうなんじゃ、使うサーバーは次々に変えられてしまうのじゃ」
レヴィアは顔をしかめて首を振る。
だが、後は引き抜くだけ。あと一歩なのだ。俺の中で何かが燃え上がる。
「上等じゃないですか! ダッシュですよダッシュ! 次変わったら走りましょう!」
俺はグッとこぶしを握って見せた。
レヴィアもキュッと口を結び、うなずく。もはや走るよりほかないのだ。
二人は顔を寄せ合い、画面を
静かなサーバールームには時折ポーンという電子音がどこかから響いていた。
◇
「キターー! B05104-004、B05112-120! GO!」
レヴィアは全力で走り出す。
「うわっ! 待ってーー!」
金髪が派手に波打つのを負けじと追いかける。
世界の存亡をかけたダッシュ――――。
無数の魂の光が見守る中、カンカンカンカンと床の金属が鳴る音が響き渡った。
しかし――――。
「アチャーー!!」
突如レヴィアは急停止。体が前のめりになりながら、必死にバランスを取る。
「か、変わってしもうた。はぁっはぁっ……。G21034-023、G21095-113!」
息を
無情にも運命の女神は二人の努力を無に帰してしまったのだ。
「はぁっはぁっ! 二十一階は……無理ですよ!」
俺は無念に苛まれながらひざに手をつき大きく肩を揺らした。どこかで唸りを上げる冷却ファンの音が、
「じゃあ休憩じゃ……、あ、A06023-075!」
疲れ切った表情から突如、レヴィアに緊張が走る。
「ろ、六階!? それなら行きましょう!」
俺はわれ先にダッシュした。筋肉が
だが――――。
「あぁっ! 変わってしもうた……はぁはぁ、D14183-132……」
「マジかよぉぉぉ! ぐはぁ!」
肺が
冷気に満ちたサーバールームで俺は全身汗だくなのだ。
「はぁはぁ……。追いかけるのは……無理……そうです。張りましょう」
こんなのいくら走っても希望のかけらすら感じられない。作戦変更だ。とてもじゃないけど足では解決不能である。
力づくではなく頭脳で挑むという選択。それは、かつてゲームハッカーとして培った直感が導き出した答えだった。
「は、張るって……どうするんじゃ?」
レヴィアの声には困惑が滲む。普段は全知全能に見える彼女が、今はただの人間のように不安げな表情を浮かべていた。
「サーバー変更の規則性を読むんです」
俺はレヴィアから端末を奪い取ると、ザっとスクロールさせ、過去の番号を表示させた。画面に映る数字の群れを脳にそのままガンガン読み込んでいく。それは、かつて攻略不能と言われたゲームの