「――っ」
科長・
「……」
飛び散った陶器の破片を、彼女は不思議そうに見つめた。
「なに? この感覚……」
胸騒ぎがする。
わき上がってくる焦燥感に、この女医はいらついた。
「これは確か、そう、あのときと同じ……まさか……」
デスクの上の端末が振動する。
「何よ? こんなときに……」
ディスプレイの文字列は
さきほどまでいた黒水小鷹と同じく、星川皐月の幼なじみだ。
現・内閣防衛大臣、そして
「ったく」
彼女は端末をふんだくり、乱暴にタップした。
「美吉良、珍しいじゃない」
「皐月、湾岸の倉庫で、ウツロくんと
「……」
甍田美吉良の声に、女医はぼう然とした。
「問題なのはそれよりも、
「は……?」
「朱利や
電話が切れる。
星川皐月が話の途中で指を落としたのだ。
「そうか、なるほど……あのクソッタレ
端末に力がこもる。
「雅ちゃん……」
彼女はこの世の終わりのような表情をしている。
「万城目日和……おのれえええええっ……!」
背後から毒々しい緑色の「手」が飛び出す。
「殺してやるっ、殺してやるううううう! 万城目日和いいいいいっ!」
手は女医の体をすっぽりと包みこみ、拳の形になった。
「雅ちゃあああああんっ!」
診察室の窓ガラスを砕き、その手は南のほうへと飛んでいった――