「アルトラ、プル・ミー・アンダー。俺の能力は、重力を自在に操ることができる」
「ぐ――っ!」
発動した魔人・グラウコンの力に、
「どうした、南柾樹? 減らず口を叩いた割にたいしたことはないではないか?」
「ぐ、この程度……!」
彼は思った。
親友であるウツロをもてあそばれた屈辱、それによって傷つけられた仲間たち。
いや、それ以上に、何もできなかった自分自身に腹が立ってしかたがない。
ここで引いたら俺じゃねえ。
アクタ、見てろ。
おまえとの約束は絶対に忘れてなんかいやしねえ。
俺は必ずウツロを、かけがえのないみんなを守る――!
「ぬ?」
わずかではあるが、術をかける手に負荷がかかってくる。
南柾樹はアルトラの力に逆らい、少しずつ地面から起き上がってきた。
「ほう、なかなか見どころがあるではないか。口だけではなくて助かったぞ? 俺としてもそうでなければ、面白くもなんともない――!」
「ぐぅ――!」
さらにパワーが加わる。
肉体が弾け飛びそうな激痛が走る。
しかしそれがなんだというのだ?
こんなもの、ウツロたちが受けた痛みに比べれば――!
「なめる、なあああああっ――!」
咆哮、それはまるで、世界そのものが消し飛んでしまうような。
うしろのほうで目を覚ました
「帝王」が、「覚醒」する……!
「ビッグ・サイクロプス――!」
南柾樹のアルトラ「サイクロプス」、その第二形態が発現した。