「何て言ったの?」
聞き間違いかと思って、思わず問い返してしまった。だって、そんなはずない、と思っていたから。
「好き、って言いました」
「…………」
「聞いてます?」
私はこくこくと頷くと、確認するように問う。
「松岡くんが、誰を?」
「月見里さんを」
「私?」
「そうですよ」
「でも、だって、友梨さんが好きって」
「はい」
ほらね、やっぱり友梨さんが好き。
じゃあ私への好きは、どういう意味?
「友梨の事は家族としての好きだと気付いたんです。気付いたのは、僕が本気の恋をしたから。気付かせてくれたのは月見里さんですよ」
「わ、たし?」
「友梨への好きとは比べものにならないくらい、好きで好きでたまらない。貴女が欲しいです。誰にも触れさせたくない、僕のものにしたいと、そう強く思います。でも月見里さんが見ているのは僕じゃないから――」
「なんで?」
「ごめんなさい一方的に告白して。でも、ありがとうございます。聞いてくれて」
「だから、なんで?」
「伝えられて良かった」
「良くない!!」
「月見里、さん?」
分からない、と首を傾げる松岡くんに私は、私もっ、と叫ぶ。
「私も」
言葉より先に涙が落ちて地面を濡らす。
「私も好きだよ」
「え……」
「私も! 松岡くんが好きです」
「え!? ……なんで?」
「『なんで』って……。松岡くんが好きだから。私も、誰にもあげたくないくらい松岡くんが好き」
「でも、元彼は?」
「元彼は元彼。ゴウへの気持ちはもうないよ。私の
「ホントに?」
「うん」
私の首肯に松岡くんの目が見開いた。そして、マジかー、と拳を握り締めて喜びを噛み締めている。そんな姿までが私にはとても愛おしい。
「……彩葉が好き」
「うん、歩くんが好き」
松岡くんの大きな腕が広がって、強く引き寄せられ、ぎゅうと抱き締められる。
望んでいた場所のぬくもりを感じて私も抱き締め返した。
「大事にする。幸せにする。だから僕の隣にずっといてください」
「うん」
嬉しい言葉に言葉が出ず、うん、と頷くので精一杯になり、言葉の代わりに涙がポロポロとこぼれていく。
「彩葉」
愛しい声が私の名前を呼ぶ、幸せに顔をあげると優しい唇が降りてきた。しっとりと重なる柔らかな唇に応える内にゆっくり甘く溶けていく。
「彩葉」
「歩くん」
愛おしい人の声で自分の名前を呼ばれる特別に酔いしれながら、私たちは何度も何度も唇を重ね合った。