目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第41話 作戦会議

「よく知らないんだけど決闘って剣とか使ってもいいの?」


 今日の晩ご飯はミレッタだけでなく、セシリーとミオも混ざって食べている。

 いつも二人の晩ご飯は執事やメイドさんが作った物を食べているらしいので夜はラウンジに顔を出すことはほとんどないのだが、今回は状況が状況なので私を心配して自ら対策を立てたいと言う前に集まってくれた。


「殺傷性が無ければ持ち込みは可能ですわ。でも魔法学園に通う学生たちで剣術を学んでいるだなんてあまり聞いたことはありませんわね」


 ゴウが剣を使ってくるか訊ねていると思っているのかセシリーは首を傾げてこの学園に通う学生たちは剣術を心得ていないことを教えてくれる。

 そりゃそうだよね。魔法が使えるんだから剣術は他の誰かに任せればいいんだし。


「それだけ分かれば十分だよ。ありがとう、セシリー」


 我が強いお嬢様だから最初は意地悪なのかと思ったが、第一印象とは全然違い彼女は実に献身的だ。


 木剣の使用は認められているみたい。

 でも私が使っていた木剣は持ってきてないし、明日辺り買いに行く必要がありそう。


「き、気を付けた方がいいと思います」

「ミレッタ?」


 辺りを見渡し、ゴウが居ないのを確認したのかミレッタはゆっくりと口を開き、私が首を傾げていると続けて話し始めた。


「マリアが何処の国のお姫様か知りませんが、ひと一人殺めてしまってもハシズさんなら罪に問われることはないと思います」


 ビクビクしながら小声で伝えられた。


 権力を振りかざしちゃう感じね。

 私が死んだとしても「不慮の事故でした」で済ませてしまいそうだよね。

 それに私は何処のお姫様でもないので彼は誰からも咎められることもない。

 そのことを知れば彼にとって好機でしかない。


「死なないように頑張るよ。でもどう攻略したらいいものか」


 一度は死んだし、転生してから何度も死にそうな目に遭遇している。

 なのであの苦痛は極力味わいたくない。

 だけどどうやって上手いこと回避したらいいものか。


「わたくしも決闘の経験がある訳ではありませんが、お父様が仰るには威力でねじ伏せるのが一番だとか」


 悩んでいると、セシリーがアドバイスをくれる。


 威力ね……ハハッ。乾いた笑いしか出ないよ。

 単純な魔力だけでは私は一瞬でおじゃんだ。


「後は相手の魔法を見てこちらが有利になる魔法を使うとか」


 ミオが補足してくれる。


 判断力も大事になってくる訳ね。

 でもボーボーと燃える炎に向かって、蛇口の閉め忘れ程度の水しか出せない私が適う訳がないのは明白だ。


「後は毒を盛る、と言うのもあるみたいです」


 オイオイオイ。ミレッタは少々サイコパスなのではなかろうか。

 だけど戦わずにして勝つ、実に理にかなった戦法ではあるね。


「……流石に毒は盛らないけどやれることはやってみるよ」


 画して私は来る決闘の為に先ずは木剣から用意することに決めた。

 魔法はどう足掻いても彼に傷一つ与えることは出来ないんだから剣術でカバーするしかない。


 ☆


「木剣を使うのか?」


 晩ご飯を済ませ部屋に戻るなり私の肩に乗っているシロムが訊ねてきた。

 どうやら私の考えはお見通しだった。


「それしか勝ち目は無さそうだからね。セシリーたちにはあえて聞かなかったけど何処に売ってるか知ってる?」

「作った方が早かろう。どのくらいの大きさがいいんだ?」


 敵を欺くならまずは味方から、なんて考えたのであえてセシリーたちに武器屋が何処にあるか聞かなかった。

 ラウンジには他の生徒も居るので中にはゴウを味方する人も居るかもしれないからね。

 なのでシロムに木剣が何処にうっているか訊ねてみたが返ってきた答えは予想とは違ったもので、ひょいと肩から飛び降り、私と向かい合う形になりどのくらいの大きさの木剣を作ったらいいか訊ねられた。


「短剣でお願いできるかな? これぐらいの長さで」


 作ってくれるなら行く手間が省けるので正直嬉しい。

 両手を使って私は長さを伝える。

 するとシロムは早速制作をするのか私の机に備え付けてある椅子に飛び乗り口を開く。


「──クリエイト」


 机の表面が一瞬白く光り輝くと、そこにはリクエスト通りの大きさの木剣が顕現していた。


「何その魔法。めっちゃ便利やん」


 関西人ではないのに関西弁が出てしまうほどの驚きだった。


 早速木剣を手にして素振りをする。

 グリップ部分も柔らかく、長時間使っても疲れなさそう。


「うん、悪くない。ありがとう、シロム」

「魔法で作った物なら文句も言われまい」

「なるほど。そういうのもあるんだね」


 もしかしたら武器屋で買いに行った物だったら文句を言われていたのかも知らない訳ね。

 魔法学園だからこそって言うのもありそうだけど、何も知らない私にそれとなく教えてくれるシロムは私にとって大切な存在なのかもしれない。


「当日、ワタシは観戦しないからせめてもの力添えだ」

「見に来てくれないの?」

「主の負ける所など見たくない」


 何か用事があるとかそういうことではなく、ただ単に私が負ける姿を見たくないらしい。


 てかそんなに私って弱いと思われてる!?

 でもまぁ仕方ないか。魔法は全く使えないし、剣術もルナの足元にも及ばない。


「まだ負ける思ってたんだね。まぁ当日にならなきゃ分からないとは思うけどね」


 負け惜しみ、とも取れるセリフを吐き私は部屋の中で素振りをしたりして数日間やってなかった剣術の練習をした……と言っても何から何まで自己流で正しいのか間違ってるのかすら分からないんだけどね。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?