とは言ったもののこの世界に除草剤なるものが存在しているのかも分からないし、存在していたとしてもあのくそ花には何らダメージを与えることは出来ないでしょうね。
逃げた生徒たちが魔物を倒せる人を呼びに行ってくれるのを願うしかない。
どうしてこんな大変な時にシロムは戻ってきてくれないのか。
それにどうして私はここまで必死になってくそ花を止めようとしているのか。
……答えは簡単か。後ろには腰を抜かしたミレッタが居るから自分だけおちおちと逃げてられないんだよね。
大切な友達を置いて逃げるほど私も薄情じゃない。
「根こそぎ切り裂いてやる!」
そう宣言すると私は縦横無尽に駆け回る。
蔓は多いけど私の動きにはついてきていない。
一つ、また一つとくそ花の蔓をぶった斬る。
感覚としてはセラミックの包丁で生肉を切っている感じだ。
たまに切りづらい部分もあるけれど力を入れれば切れないこともない。
何分経過したか分からないが、くそ花の蔓は全てなくなり可哀想な茎と花が残される。
「魔物なのに大したことないね。まだプリティラビットの方が苦戦したよ」
まぁプリティラビットには負けたんですけどね!
あれが強すぎたのか、それともひょっこり現れたくそ花が弱すぎたのか。
どちらにせよ動きは封じた。
後は茎を──
「んなっ!?」
後は茎をどうにかすれば何とかなるとそう考えていた。
しかし、私の考えは浅はかなものでくそ花ら背を反らすと全て切った蔓が元通りに……いや、さっきよりも増えていた。
「マリア、危ない!」
くそ花の再生力に驚いていると、後ろからセシリーの声が聞こえた。
何が危ないのだろうか?
一瞬、油断をしていた。
その油断が命取りに。
くそ花は花びらを一度咲く前のように折りたたむとすかさず思いっきり広げ、私に向かって何かを振りかけた。
黄色い色の粉末、花粉かと思ったがどうやら違う。
私はそれを浴びてしまったのだ。
すると、身体全体が針を刺すような痛みに襲われ思うように身体が動かなくなってしまった。
「痺れ粉ですわ! 今すぐわたくしが──」
「セシリー、あの速度じゃ間に合わない! それどころかセシリーも」
後ろでは何やら揉めているがミオの言う通りだ。
セシリーが走ってきても私がやられるだけだろうし、やられた私の後にやられるのはセシリーでしょうね。
しっかりとミオがセシリーのことを抑えていると信じてるよ。
くそ花の蔓と蔓を叩き人間のように気味の悪い笑いをしているのがよく見える。
悔しいけど私の負けだよ……結局くそ花も倒せないなんてやっぱり転生させられても私はなんの力も持たせてもらうことはなく弱いままだった。
考えてみればおかしな話だよね。
漫画やアニメなんかではみんなチートスキルが当たり前なのに何の知識も力もない日本人である私が異世界だなんて適応出来る訳がない。
二つの蔓が勢いよく私に向かってくる。
やられると覚悟をして潔く目を瞑りその時を待った。
「──ファイアーウォール!」
だがそれを阻止するかのように聞き覚えのある声が私の耳に入った。