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第50話 クラスメイトとして

「つかれた~」


 朝一番、自分の教室に着くなり私は自分の席で突っ伏して魂の抜けたような状態になる。

 どうやらくそ花の魔物を倒したことはビリネコや決闘のように学園中へ瞬く間に広まっており今ではマリア様、マリア様と呼ばれる時の人になっていた。

 それと同時にビリネコとは呼ばれなくなったのは素直に嬉しいんだけど、様付けで慕われるのもそれはそれで居心地が悪い。


「大変でしたわね」

「おはよう、マリア」

「セシリー、ミオ、おはよう。見てたなら助けて欲しかったんだけど……」


 今日も今日とてツヤツヤで金髪の縦ロールの髪を揺らしセシリーが労いの言葉を、今日もよく似合ってる青髪のショートにピンク色のカチューシャを装着したミオが朝の挨拶をしに私の席にやってきた。

 どうやら二人は朝の惨状を目の当たりにしていたようでそれならそうと早く助けて欲しかった。

 なので嫌味ではないが自然にそう口にする。


「王族たる者、常に人気であれ。ですわ!」

「セシリーはマリアが人気だから少しヤキモチを妬いてる」


 右手の人差し指をビシッと立てて私を指し満面の笑みを浮かべるセシリーの通訳かの如くミオはボソッと少しだけ口角を上げて教えてくれる。

 セシリーの言っていることもあながち間違っていないので今慕ってくれている人たちの信頼を損なわないよう現状維持すべきだよね。


「……ま、マリア」


 私たちが楽しく談笑? をしていると見覚えのある三人組がやってきてその一人が声を掛けてくる。


 ゴウだ。

 彼は身体が大きいにも関わらず身体を小さくしてその行動や表情から申し訳なさそうにしているのが伝わってくる。


「おはよう。どうしたの?」


 理由はそれとなく理解していた。

 だが知らない雰囲気を醸し出す。

 でもこれで察していない方がおかしいよね。


「この前はすまなかった。それと助けてくれてありがとう」


 ゴウは私に向かって深々と頭を下げたのだ。

 それをセシリーとミオも目を丸くして声を押し殺しながらも酷く驚いた。

 まさか王族がそこまで深々と頭を下げるとは思わなかったので予想を裏切られ私も二人と同じように驚いてしまったよ。

 だけどゴウの取り巻きであるモルとグレイルは驚いてはいないので初めから分かっていたのでしょうね。


 はぁ、そこまで頭を下げられると怒るに怒れないし、私が思考を働かせている間もずっとゴウは頭を下げたままなのだ。

 それだけで彼の誠意は伝わってくる。


「ううん、大事はなかった?」


 なので私は彼の身体について訊ねるだけ。

 私の記憶がさなかならばゴウも私と同じように痺れ粉を浴びていたはずだ。


「あ、あぁ。多少痺れはしてたがこの通りだ」


 今朝も紫髪の女の子がしていたようにゴウも力こぶを作ってみせる。

 だが全く鍛えてなさそうなポヨンポヨンの二の腕が動きに合わせて揺れるだけだ。


「そう。なら良かった。決闘は私が勝ったんだし改めてこれからはクラスメイト・・・・・・としてよろしくね?」


 クラスメイト、と言う言葉を強調して右手を前に出し握手を求める。

 気があると思われたくないし、かと言ってクラスメイトなので避けては通れない。


「あぁ!」


 果たして私の気持ちは伝わっているのか分からないが元気に返事をして私たちは握手を交わした。


 決闘を通して私たちは仲直り? をして今日も一日が始まる。

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