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21. 王都のクエスト


 さてトリントン村でのクエスト挑戦でいい思いをした。

 高補正アクセサリーは更新していく武器と違って一生ものだ。

 だから高値がついたのだ。

 バザール界隈では、幸運の最強アイテムとして、ざわついていた。

 バザールで売っぱらって、俺もそしてハズキさんもホクホク顔というわけ。


 気をよくした俺たちは王都トライセンのクエストにもレア品が眠っているのではと仮説を立てた。


「王都のクエストを改めて、次は受けてみよう」

「うんっ!」


 といっても冒険者ギルドでやってるクエストは魔物討伐したらオマケがちょっと貰えるとかその程度の初心者用だ。

 そうじゃないやつ。

 いわゆるスポット依頼と言われるタイプのものだ。

 場合によっては「ユニーククエスト」ともいう。


 王都中央の冒険者ギルドへ行って、クエストボードを眺める。

 うーん、これはなんか違う。これも違う。


「倉庫整理、これなんかどう?」

「倉庫整理……」

「まあ、王都だから」

「そっか、それでいいよ」

「了解」


 ということで男爵家の倉庫整理の仕事を請け負った。

 比較的小さな貴族柄の家なのだけど、横に古い日本の倉みたいな倉庫があったのだ。

 たぶん歴史は古い家なのだろう。

 家も倉庫も相当な古い感じで、なんというかちょっとボロい。


「この倉庫の整理と掃除をお願い」

「はーい」

「了解しました」


 男爵家の使用人という人に倉庫の中に入れてもらう。

 特になにも変な物はない。

 クエストだからって変なこともないと思うんだけど、なんだかソワソワする。

 そうして中で埃をはらいながら掃除をどんどん進めていく。


「この短剣とかかっこいい」

「おおお」


 剣なんかも置かれていたので、見物する。


「この槍ながーい」

「ウルさん、遊ばない」

「はーい」


「このフルフェイスヘルム。前とか見えるのかね」

「さぁ、ウルさん、どうだろうねぇ」

「ケケケケケ、前見えね」

「だろうね」


 と順調に進めていったのだけど。

 夕方、やっと終わらせることができた。


「よーし終った。終わった。こんなもんでいいだろう」

「そうですね」

「そんじゃ、外に出、ででで、出れないやんけ」


 扉が閉まっていたのだ。

 ぎゃふん!

 入口が閉じられちゃっている。

 急ぎではないけれど、これでは。

 まぁ、ここでログアウトして<外の世界>で助けを求めてもいいんだけど。


 もう一度二人で引き戸を思いっきり引っ張ってみたけれど開かないのだ。


「ハズキさ~ん」

「よしよし、大丈夫よ」

「そうだけど」

「時間になったらきっと開けてくれるでしょ」

「うん」


 ハズキさん意外としっかりもの。

 俺はこういうときダメダメである。

 ハズキさんに慰めてもらい、いい子いい子してもらう。

 なんだかママみたいだ。

 ハズキママ、ぐすん。


「おやつにでもしようか」

「うん」


 ハズキさんの提案でおやつとお茶だ。

 ということで二人でお茶を出して、ゆっくりする。

 こういうときはアイテムボックスで色々持ち歩いているので便利だ。


「もうハズキさんとはこうして、長いもんね」

「うむうむ、もぐもぐ」

「美味しい」

「美味しいねぇ」


 二人で買い置きのクッキーをいただく。

 砂糖の甘さと、表面についている少しの塩が甘じょっぱくて美味しい。

 バターの風味が利いていて、なかなかの逸品だ。


 露店にはこういう嗜好品なんかも溢れていて、たまに買って歩いていた。

 お金は結構持っているしね。


 話も弾んできて、なんだかいい雰囲気になってきてしまった。

 ちょっと間が持たない。

 顔なんか近づけちゃったりして……。

 ハズキさん、まつ毛長いなぁ。


 ガラガラガラ。


「大丈夫ですか?」


 二人して飛びのいて、顔を離す。


「あ、開いた~~」

「あれ、もしかしてお邪魔でした?」


 二人して顔を赤くする。

 なななな、なんでもありませんよ。本当ですよ。

 ちょっといい雰囲気だったとか、そんなんじゃないですよ。


「そそそ、そんなことないから、開けてくれて助かりました」

「そうですね、すみません。ここ中から開けるの大変で失念してました」


 とまあ、なんとか開けてもらい脱出できた。

 あぁあいい雰囲気だったのに、吹っ飛んじゃったよ。

 報酬はお金。悪くはないけど、普通だった。


 俺はハズキさんとちょっぴり親密になれた気がして俺得ではあったと思う。



 それからおばさんの依頼、子供のお使い、商人のトリントン村のお使いなんかもこなした。

 おばさんの依頼というのは王都の中の知り合い五軒をハシゴしてクッキーを置いてくるというもので、家がそれぞれバラバラだったのでいくのにちょっと苦労した。

 とくに三番目のおばさんの話の長いこと長いこと。クッキー置いてくるだけで予定外に時間が掛かって参ってしまった。

 子供のお使いは、子供がお使いに行くのを見守るというもので、ハラハラしながら冒険者ギルドへ薬草を納品する子供の後を追って、知らない顔でずっと見守ってついて歩いた。

 そういう依頼に付随ずる依頼みたいなものもあるんだな、とちょっと感心した。

 トリントン村へまた行けるのはけっこううれしい。

 道中モンスターをぶった斬りながら街道を進んで、戻ってきた。

 本当に行って帰ってくるだけのお使いクエストでちょっと笑っちゃった。

 荷物ははんかよく分からない書類だったので、見るものはない。


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