「次はどんなクエスト受けるの?」
「えっと、地下水道の掃除」
「うへえ」
ハズキさんがいつもよりイヤそうな顔をする。
「なんか出てきたりしない?」
「するかも?」
「うへぇうへぇ」
「臭くて汚かったりしない?」
「するかも?」
「うへぇうへぇ」
オバケとか嫌いなのかな、ハズキさん。
まあネズミとかでしょ。出てくるったって。
地下通路といえばスライムかネズミだもんねぇ。
係の人に案内されて、地下水道を進んでいく。
入口のすぐは何者かが生活していたのか、雑貨が落ちていたりする。
「これは使いかけのロウソク」
「だね」
たまに上から水滴とかが落ちてくるから要注意。
背中に当たるとヒヤッとして心臓に悪いのだ。
「こっちはメモの破片」
「なんって書いてある?」
「字が汚くて読めないわ」
「そっか」
普通の掃除よりはマシだ。
というのもアイテムボックスに放り込んでいけばいい。
どんどん回収していく。
このゲームのアイテムボックスはかなりの容量で、限界まで余裕がある。
「えいやぁ、これは暴走したスライム」
「ふむ」
「ふむじゃないでしょ」
「ハズキさんだって、普通のスライムはあっちで大人しくしてるし」
「そうね」
下水道にはスライムが住んでいて水を浄化してくれる。
というのが常識らしいので、まあそういうものらしい。
栄養を摂取して結構な数のスライムが住んでいるそうな。
最後にゴミ捨て場に行って、中身のごみを捨ててくる。
これだけ綺麗にしたんだから、報酬はよろしくお願いしますよ!
って公共事業だから報酬はしょぼいんだって。残念。
それで次は「貴族の家のオバケ探し」だ。
「お、オバケ?」
「うん。大丈夫だよね? どうせレイスでしょ」
「そっか、モンスターなんだ」
「そういうこと」
モンスターだと思えば何ということもないような気がする。
ということでこの前の男爵の知りあいという侯爵家のオバケ捜索だ。
なんでも侯爵家は家が広くて、西館は普段まるまる無人なんだとか。
その西館で夜中に火の玉とかが目撃されているとかなんとか。
「ひゃんっ、ウルさん」
「大丈夫、ただのモンスターだから」
「そうだけどぉぉ、でもほらぁ」
「まあ、そういうところもかわいいけど」
「にゃあ」
とまあちょっといちゃついたりして夜の侯爵家の西館探索をした。
誰もいない廊下をひたすら歩いていく。
特に何もいない。
「あ、あれ!? ウルさん!」
「なに?」
「今、火の玉通らなかった?」
「それってウィル・オ・ウィスプってやつ?」
「あぁそうそう、それ」
そうして三階から順番に歩いて回ったところ、二階、一階と降りて、地下にそれはあった。
なんか地下に魔法陣がありまして、それが低級のレイスを召喚していることが判明。
一生懸命お掃除して魔法陣を消して、事件は無事解決となった。
なんか魔法のインクとかで描かれてて、消すのにちょっと手こずった。
まったく変なことするのやめてほしいよ。
誰かのイタズラなのか、それとも恨みがあるのか知らないけど。
そういう原因とかは専門外なので、後で調査してもらうことになった。
「な、訳もちゃんとあったでしょ」
「うん」
ハズキさんもうるうるしちゃって、かわいいんだからもう。
家主であるベッドバルン侯爵に挨拶をして、事の顛末を説明した。
「――というとがありました」
「うむ、分かった。褒美にミスリルのハーフアーマーをやろう」
「うおぉお、ありがとうございます」
「二人分ですか?」
「もちろんだとも。なに、長年の懸念だったのでね」
ミスリルですよ。ミスリル。
魔法銀と言われる、逸品。
この世界でも魔法金属は鉄製武器より優れているとされる。
硬くて丈夫、武器にも防具にもヨシ!
この前、ゴブリン鉄のハーフアーマーにしたばっかりだけど、更新しちゃお。
俺もハズキさんも自分で装備することに決めた。
これ見たら鉄製品なんていつまでも使ってられない。
「へへへ、格好いい」
「かっこかわいいです」
ちゃんと女性用はそれっぽいやつでよかった。
男性用と違って下がスカート型になってるのね、なんというかちょっとお洒落でかわいいのだ。
羨ましいとは思わないけど、これを見て毎日過ごせるので、俺得でしょう。
白銀に光るミスリルのハーフアーマーはなんというか黒鉄の砂鉄由来のものより銀ピカでカッコいい気がするのだ。
もうよろこんで着ちゃうよ、俺。
じゃじゃじゃーん。剣士ウルさん参上、なんちって。