俺はクラーケン戦も終わり、ハズキさんとのデートも攻略した。
のんびり遊んでいたところ、ゲーム内で声を掛けられた。
ゲーム内ではちょくちょくあることとはいえ、女性に声を掛けられることは珍しい。
まあ一応、女性人口のほうが少ないので。
「なあ、お兄ちゃん!」
「あ、なんだ、もしかしてヒカリか?」
「うんっ」
元気いっぱいの女の子は、よくみれば見覚えがある顔つきをしていた。
そりゃそうだ、この子は俺の妹らしい。
「いたいた、私もゲーム始めたから」
「ほーん」
「といっても、実はお兄ちゃんがゲーム始めた後すぐに実はやってたから、レベルだってそんなに違わないと思うよ」
「そうなのか?」
「うん」
ということで、俺の妹が俺のフレンドに加わった。
「そういえば、ギルド入るか?」
「はいる、はいる」
だそうで、さっそくギルドに加入させる。
妹だし、便利に使おう。
「武器構成は?」
「私はワンド、魔法使い」
「お、珍しい」
「でしょ、えへへ」
そう、このゲームでは直感的に攻撃できる剣類が人気だ。
魔法使いはなんというかピーキーで扱いにくいとして不遇職扱いされていて、あまり人気はない。
それでも魔法職は憧れの一つなので、一定数の人が魔法使いをしていた。
「いひひ、ぐりぐり」
「お、おい」
「いいのいいの」
胸を当ててぐりぐりしてくる。
周りの男性たちが羨ましそうに見てくるが、そういうものではない。
別にまったくうれしくはない。
というか金属製のハーフアーマーなので当たって痛い。
頃合いを見てメンバーにも紹介しないとな。
うちでは貴重な遠距離職だ。
胸部以外は布装備で普通のミニスカートのワンピースみたいな服を着ていた。
まあ身内びいきではあるが、それなりにかわいい。
足は黒いニーソックスにしていた。
なにげにニーソックのほうが広範囲を防御できるらしい。
「んじゃ王都観光一緒にするか?」
「うんっ」
「そかそか」
「今まで、適当に戦闘ばかりしてたから、あんまり見て回ってないし」
「そうなのか?」
「こういうゲームって戦闘をするってのが常識だと思ってたし」
「まあ、色々のんびりしたりしてもいいんだ、ゲームは色々できる」
「そうなんだね、ふーん」
ワンドはなんというか短い棒の先端に緑色の魔石が組み込まれたもので、いかにも魔法使いっぽい装備だ。
「先にハズキさん呼んでいい?」
「いいよ、待ってる」
「お、おう」
別々で露店を見ていたので、別行動をしていたのだ。
露店巡りは俺たちアイテム売買を生業としている者にとって相場を見るために死活問題なので、毎日必ず見て回っている。
ハズキさんが来るまで妹と一緒に露店を見る。
「まあ、あんま掘り出し物とかはないな」
「そんなもんでしょ」
「だな。ゴブリン鉄は最近増えてきたな」
「最初、お兄ちゃんたちゴブリン狩りまくってたらしいもんね」
「何で知ってるんだ?」
「風の噂で聞いた」
「ふーん」