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31. 国墓ダンジョン


 後日。国墓ダンジョンへ行くことになった。

 ついでに王宮の中も見せてもらえることになっている。


 今日も俺、ハズキさん、妹のハイジの三人だ。

 あの跳ね橋を通り、城門を通過する。

 事前に通行許可証を貰ってあったので、すんなり通ることができた。

 なんというか、強そうな門番がいる。

 レベルいくつくらいなんだろう。

 これ倒して悪役とかしたら、どんな感じかな。

 今のレベルじゃ敵わなそうなので、もちろんやらない。


「御城、おっきぃー」

「だな」

「本当、すごいですね」

「うん」


 三人で門の中に入って、お城を見上げる。

 西洋風のお城というか居城というか、そういうものだ。

 王宮なので、けっこうでかい。

 何個も建物が連なっていて、通路で繋がっていた。


 いくつかの建物を見せてもらう。

 まず通路にも壁に絵とか台があって花瓶に花、それから壺の展示などをしてある。

 お客様をもてなすためだろう。

 外国からも人が来るから、国内の産業の製品を見せてアピールするのだ。

 けっして裕福自慢をしたいわけではないのだ。

 このゲーム内にも村々で窯があって陶器などを焼いているらしい。

 そういうのを運んでくるクエストもあるが、まあ趣味クエストだな。


 通路を渡った先には豪華な宮殿があった。


「冒険者様入ります」


 ガードマンが声をあげて中に通してくれる。

 なんと、そこには国王様がいたのだ。


「我はドルイド・ハインリッヒ四世、国王である」

「ははっ」


 あわてて俺もハズキさんもハイジも頭を下げる。


「国墓ダンジョンを調査してくれるそうだな。ありがたい」

「は、はい」

「なに、気を付けて行ってきてくれ。前回の調査からだいぶ経っているがまあ、大丈夫だろう」


 そっか、過去にもちゃんと調査されてるのね。

 それである程度は大丈夫と確認は取れていると。

 でもダンジョンは変化したりすることがあることが知られている。

 ボスが変わったり、敵の配置や構成が変ったり、といったことだ。


「わかりました。注意して調査します」

「うむ」

「すまん、あまり時間がなくてな、これで終わりだ。頼んだよ」

「はいっ」


 王様、忙しいんだな。

 まあ、王政だと、国王のワンマン経営なので王が決めなきゃならないこと、会わないといけない人などがたくさんいるのだろう。

 当たり前である。

 大臣とか配置してあれば軽減できるんだけどね。

 その辺どうなってるかは知らない。


 案内役の役人に連れられて、ドアから出て、裏庭を通り、その先の森へと入っていく。


「お兄ちゃん、森だけど」

「うん、まあこの中にお墓があるんだろう」

「ですね」

「なんだかお墓があると思うと、ちょっと不気味です」

「まあなんだ、ハズキさんに同意」

「でしょ、ふふふ」


 鳥というかカラスが鳴いたり、小動物の気配がしたりと、ちょっと魔女の森みたいで、怖い。

 たぶん気分の問題なのだろうけど、ゴブリンの森はこんな感じの雰囲気ではなかった。

 深い森といっても色々と表情が違って、それはそれで楽しい。


 ここは王都のど真ん中、一応王宮の庭の延長上だ。

 ゴブリンとかはいないらしい。

 いたらいたでびっくりではある。


「ここが国墓ダンジョンの入口です。王家のお墓ですね」

「なるほど」


 案内の人が教えてくれる。

 俺たちは中へと入っていく。


 最初は石室があって、石棺が並んでいた。


「へぇ、これがお墓ですか」

「うん」


 ハズキさんの関心顔を見つつ、眺める。

 そういえば別にお墓は怖くないんだな。

 幽霊は怖いのかな。よくわからない。

 まあお墓そのものは物理的なものだし、そういう人もいるだろう。


「お兄ちゃん、ちょっと暗いね」

「ああ」


 ここにもヒカリゴケが生えているが、少し暗いのだ。

 見えないほどではないが、なんとなくやはり不気味な気配がする。


 部屋を出ると、次は薄暗い廊下が繋がっていた。


「すみません、案内できるのはここまでです」

「いえ、ここまでありがとうございました」

「では、私は戻りますので、帰りは行きに寄った執務室までお願いします」

「わかりました」

「ではでは」

「では~」


 案内の人が戻っていく。

 ごくりと喉を鳴らす。

 俺たちだけが残されて、薄暗い廊下が目の前にある。

 なんとも不気味な気がしてくる。

 ダンジョンったってゲームだろ、と心で唱える。

 幽霊もしょせんゲームデータにすぎない。

 いや、ここはスケルトンかもしれない。

 スケルトンというのは骸骨のホネホネのモンスターだ。

 敵によっては、剣や盾を持っていることもあるし、なにより人型なのでスキルを使ってくることさえある。

 だから普通のRPGだと雑魚だったりするが、VRゲームでは案外、侮れない存在だ。


「では、いきますか?」

「はい……」


 薄暗い廊下の先にも部屋があった。

 ここはもう墓地ではなくダンジョンなのだろう。

 ヒカリゴケで何となく見える。


「やっぱり、スケルトンか」


 先の部屋に入るとスケルトンがいた。

 嫌な予感というのは当たるものなのだろうか。


「えいやー」


 剣で斬りつけると、バラバラになる。

 一応、不思議な力でくっついているだけらしく、剣で砕けたらそのまま元に戻らなかった。

 そのうちバラバラになった骨が粒子になって消えていく。


「これで、倒したのか」

「思ったよりあっけなかったですね」

「簡単だね!」

「ああ、腑に落ちないが、まあいいか」


 釈然としないが、そういうものなのかもしれない。

 なんというか、手ごたえがないのだ。

 今までのモンスターはもっと倒した感じがちゃんとあった。

 よく分からない不自然さを感じて、ちょっと寒気がする。

 アンデッドで怖いという恐怖心のせいなのだろうか。


「お。今度は団体様だ」

「剣とかも持ってるよ」

「お、おう」


 妹の指摘に、俺も頷く。

 剣持ち、盾持ち。そしてロッド持ち。

 魔術師までいるらしい。


「魔法は厄介だ。先に叩く」

「うん!」


 三人で突撃していって、剣で斬りつけていき、奥の魔術師を攻撃する。

 無言のスケルトンはこれはこれで、やはり不気味だ。


「おいやーーー」

「ていーー」

「わははー」


 なぜか妹は笑っているが、火魔法を放つとスケルトンに燃え移り倒していた。


「よし、全部倒したな」

「うんっ」

「他にはいないようですね」


 みんなで部屋を注意深く見るが、特に変な場所はない。

 ギミックが残っていたり、宝箱があったりする場合もある。


「次の部屋へ行きましょう」

「おう」

「うん!」


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