後日。国墓ダンジョンへ行くことになった。
ついでに王宮の中も見せてもらえることになっている。
今日も俺、ハズキさん、妹のハイジの三人だ。
あの跳ね橋を通り、城門を通過する。
事前に通行許可証を貰ってあったので、すんなり通ることができた。
なんというか、強そうな門番がいる。
レベルいくつくらいなんだろう。
これ倒して悪役とかしたら、どんな感じかな。
今のレベルじゃ敵わなそうなので、もちろんやらない。
「御城、おっきぃー」
「だな」
「本当、すごいですね」
「うん」
三人で門の中に入って、お城を見上げる。
西洋風のお城というか居城というか、そういうものだ。
王宮なので、けっこうでかい。
何個も建物が連なっていて、通路で繋がっていた。
いくつかの建物を見せてもらう。
まず通路にも壁に絵とか台があって花瓶に花、それから壺の展示などをしてある。
お客様をもてなすためだろう。
外国からも人が来るから、国内の産業の製品を見せてアピールするのだ。
けっして裕福自慢をしたいわけではないのだ。
このゲーム内にも村々で窯があって陶器などを焼いているらしい。
そういうのを運んでくるクエストもあるが、まあ趣味クエストだな。
通路を渡った先には豪華な宮殿があった。
「冒険者様入ります」
ガードマンが声をあげて中に通してくれる。
なんと、そこには国王様がいたのだ。
「我はドルイド・ハインリッヒ四世、国王である」
「ははっ」
あわてて俺もハズキさんもハイジも頭を下げる。
「国墓ダンジョンを調査してくれるそうだな。ありがたい」
「は、はい」
「なに、気を付けて行ってきてくれ。前回の調査からだいぶ経っているがまあ、大丈夫だろう」
そっか、過去にもちゃんと調査されてるのね。
それである程度は大丈夫と確認は取れていると。
でもダンジョンは変化したりすることがあることが知られている。
ボスが変わったり、敵の配置や構成が変ったり、といったことだ。
「わかりました。注意して調査します」
「うむ」
「すまん、あまり時間がなくてな、これで終わりだ。頼んだよ」
「はいっ」
王様、忙しいんだな。
まあ、王政だと、国王のワンマン経営なので王が決めなきゃならないこと、会わないといけない人などがたくさんいるのだろう。
当たり前である。
大臣とか配置してあれば軽減できるんだけどね。
その辺どうなってるかは知らない。
案内役の役人に連れられて、ドアから出て、裏庭を通り、その先の森へと入っていく。
「お兄ちゃん、森だけど」
「うん、まあこの中にお墓があるんだろう」
「ですね」
「なんだかお墓があると思うと、ちょっと不気味です」
「まあなんだ、ハズキさんに同意」
「でしょ、ふふふ」
鳥というかカラスが鳴いたり、小動物の気配がしたりと、ちょっと魔女の森みたいで、怖い。
たぶん気分の問題なのだろうけど、ゴブリンの森はこんな感じの雰囲気ではなかった。
深い森といっても色々と表情が違って、それはそれで楽しい。
ここは王都のど真ん中、一応王宮の庭の延長上だ。
ゴブリンとかはいないらしい。
いたらいたでびっくりではある。
「ここが国墓ダンジョンの入口です。王家のお墓ですね」
「なるほど」
案内の人が教えてくれる。
俺たちは中へと入っていく。
最初は石室があって、石棺が並んでいた。
「へぇ、これがお墓ですか」
「うん」
ハズキさんの関心顔を見つつ、眺める。
そういえば別にお墓は怖くないんだな。
幽霊は怖いのかな。よくわからない。
まあお墓そのものは物理的なものだし、そういう人もいるだろう。
「お兄ちゃん、ちょっと暗いね」
「ああ」
ここにもヒカリゴケが生えているが、少し暗いのだ。
見えないほどではないが、なんとなくやはり不気味な気配がする。
部屋を出ると、次は薄暗い廊下が繋がっていた。
「すみません、案内できるのはここまでです」
「いえ、ここまでありがとうございました」
「では、私は戻りますので、帰りは行きに寄った執務室までお願いします」
「わかりました」
「ではでは」
「では~」
案内の人が戻っていく。
ごくりと喉を鳴らす。
俺たちだけが残されて、薄暗い廊下が目の前にある。
なんとも不気味な気がしてくる。
ダンジョンったってゲームだろ、と心で唱える。
幽霊もしょせんゲームデータにすぎない。
いや、ここはスケルトンかもしれない。
スケルトンというのは骸骨のホネホネのモンスターだ。
敵によっては、剣や盾を持っていることもあるし、なにより人型なのでスキルを使ってくることさえある。
だから普通のRPGだと雑魚だったりするが、VRゲームでは案外、侮れない存在だ。
「では、いきますか?」
「はい……」
薄暗い廊下の先にも部屋があった。
ここはもう墓地ではなくダンジョンなのだろう。
ヒカリゴケで何となく見える。
「やっぱり、スケルトンか」
先の部屋に入るとスケルトンがいた。
嫌な予感というのは当たるものなのだろうか。
「えいやー」
剣で斬りつけると、バラバラになる。
一応、不思議な力でくっついているだけらしく、剣で砕けたらそのまま元に戻らなかった。
そのうちバラバラになった骨が粒子になって消えていく。
「これで、倒したのか」
「思ったよりあっけなかったですね」
「簡単だね!」
「ああ、腑に落ちないが、まあいいか」
釈然としないが、そういうものなのかもしれない。
なんというか、手ごたえがないのだ。
今までのモンスターはもっと倒した感じがちゃんとあった。
よく分からない不自然さを感じて、ちょっと寒気がする。
アンデッドで怖いという恐怖心のせいなのだろうか。
「お。今度は団体様だ」
「剣とかも持ってるよ」
「お、おう」
妹の指摘に、俺も頷く。
剣持ち、盾持ち。そしてロッド持ち。
魔術師までいるらしい。
「魔法は厄介だ。先に叩く」
「うん!」
三人で突撃していって、剣で斬りつけていき、奥の魔術師を攻撃する。
無言のスケルトンはこれはこれで、やはり不気味だ。
「おいやーーー」
「ていーー」
「わははー」
なぜか妹は笑っているが、火魔法を放つとスケルトンに燃え移り倒していた。
「よし、全部倒したな」
「うんっ」
「他にはいないようですね」
みんなで部屋を注意深く見るが、特に変な場所はない。
ギミックが残っていたり、宝箱があったりする場合もある。
「次の部屋へ行きましょう」
「おう」
「うん!」