ランチタイムの設定は午後2時までだ。午前11時からのオープンなので営業時間は3時間になる。初日はスタートこそ遅かったが、午後1時過ぎても来店があった。もちろん、数は少なくなるが初日にしては、というよりは初日だからだったのかもしれないが、予想よりも多い来客数だった。
そのため、準備していた食材が心配されたが、夜のメニューにも使えるように大目に仕入れていたので何とか間に合った。
初めて体験に心地良い疲れを感じながら後片付けと夜の部の準備をしながら、ランチタイムのことを3人で話した。
「最初の出足が遅かったため心配しましたが、結果的には良い感じでしたね」
矢島が言った。自分が企画したことの結果に手応えを感じていたのだ。それは私も同様だった。
「きちんと数えたわけではないけれど、男女比は大体半々くらいだったかな?」
私は2人に確認した。その感じは同じだったようで、伝票を確認しても女性用で設定したメニューが約半分を示していた。印象として設定通りのオーダーだったし、女性が男性メニューを注文したり、その逆というパターンもなかった。そのことも3人で確認したので、間違いはないだろう。
「女性客をしっかり呼び込めればこれまでとは異なった客層にもアピールできるので、夜の居酒屋のほうの様子も変わるかもしれませんね。それで客足が変わってくれれば良いのですが・・・」
矢島の言葉だったが、それは私も同じ思いだ。新型コロナのおかけで自粛ムードが出ているためか、以前よりは数字が下がっている。このランチタイムが定着して伸びてくれば少しは減収分もある程度はカバーできるかもしれないが、初日の様子だけでは分からない。
「お客さんの様子はどうだった? メニューの満足度とか、リピートの可能性なんかだけど」
私は再び2人に尋ねた。
「メニューの満足度は高かったように思います。おいしいという声が聞こえていました」
アルバイトが言った。矢島は厨房に入っていたので客の声を直接聞くことはなかったが、カウンター席の様子は分かるはずだ。ここは男性の1人客が多かったため、会話として聞くことは少なかったが雰囲気は分かる。その上での答えだが、概ね良好だったようだ。
「明日の日替わりは何かなんてことを耳にしましたので、そういう人はリピーターになってくれるんじゃないですか?」
アルバイトが各テーブルにサービスしている時に耳にしたようだが、これはリアルな声だし、確かにリピーターの可能性が大だ。
「良い話を耳にしたね。となれば、ますます日替わりのメニューが大切になるけれど、女性用は2号店のみんなに頑張ってもらわないといけないよね。今晩、よく話しておくよ。俺たちはその分、男性用の日替わりメニューを考えよう。1号店は男ばかりだけど、2号店は店長が女性だし、アルバイトにも女の子がいる。自然にそれぞれの役割ができそうだね。今日スタートしたことだから、今後やっていく中で自然に役割分担ができると思うが、俺が感じたことはそんなところかな」
他の2人も私の言葉に頷いていた。