私と美津子はお互い顔を見合わせていた。突然のミーティングなのに、きちんと売り上げアップのためのアイデアを考えていた中村に驚いていたのだ。
それは矢島も同様で、つい中村に話しかけた。
「中村君、いいアイデアだね。俺は昼前、店長と今日のミーティングのことを聞いていたけれど、具体的なアイデアまでは考えていなかった。さっき話したことは精神論的なことだったけど、どうすれば良いのかまでは言えなかった」
「俺も良いと思う。来店されるお客様の数には限りがあるし、営業時間も同様だ。きちんと経営していくには売り上げの意識が必要だけど、それが値上げといったことではお客様は離れていく。満足感を持っていただきながら売り上げもアップさせる、というのは良いアイデアだと思う。美津子はどう思う」
私は中村のアイデアを評価し、美津子の考えを聞いた。
もちろん同じであり、このアイデアは即採用になった。
となれば、具体的な内容について考えていかなければならない。ただ、ランチの小鉢についても夜の部の組み合わせについても、すでにメニュー化してあるものから選択することになるので、比較的容易だ。
「でも、女性向けのランチの場合、選べる小鉢について居酒屋メニューだけで良いかしら? せっかく女性用ということでメインの料理を考えているのだから、場合によっては何か考えてもよさそうね。評判が良ければ、それが夜の部のメニューの一つになるかもしれないので、このこともきちんと考えましょうよ」
美津子が言った。中村のアイデアを活かし、矢島のランチ企画も活かした上での話になり、2人が考えたことを大切にした工夫の例になった。
突然のミーティングではあったが、現況をどう打開していくかという思いは一緒だったようだ。そして、複数の人が集まることでアイデアが相乗的に影響し合い、良いクオリティに昇華していく。
夜の部の組み合わせメニューについては、どういうグループ分けにするのかということが話のテーマになり、やはり原価率の関係から、表示額が近接しているところに組み合わせることをなった。
ただ、その組み合わせは店側の事情だし、客の好みを前提した場合は必ずしも効果的ではない、という意見も出てきた。ではどうするかということだが、明日、ここ3ヶ月の伝票を確認し、どのようなオーダーの分布になっているかを確認した上で、改めて考えることにした。
ランチについては女性用の小鉢ということで、メインのメニューとの関係性を考え、これも日替わりではどうかという話が出た。複数のメニューがあり、その中からいくつかセレクトするとすれば良いのでは、ということになり、具体的にはアルバイトの女性スタッフにも意見を求め、早急にメニュー化しようということになった。
早くできるようであれば宣言解除前からスタートしても良いし、最悪、解除までにできればということになった。