こういうことは話だけでなく、皮膚感覚としても掴みたいところだ。
ミーティングが進む中でいくつか具体的なプランが出た。新しいメニューとしてサイドメニューを作っていくのは時間を要するし、そもそもそのニーズがあるかどうかは分からない。でも、何かやっていかなければ今以上のことは望めないというところから、とりあえず夜の部で提供しているメニューからいくつかピックアップしてサイドメニューの候補を見つけたらどうか、という話になった。
そういうことならすぐに実践できるし、原価率も把握している。だから後は組み合わせの問題だけだ。具体的に250円まで、350円まで、500円までの価格帯の中から2つ以上のメニューを合わせてはどうかということになった。具体的な組み合わせについては客が選ぶということでカスタマイズしている意識になり、メニューの個性化が図れる。好きなおかずでランチが楽しめるということで喜ばれるのではいうことになった。
新しいランチのためのサイドメニューについてはその様子を見て考えれば良いし、実利とマーケティングが同時に行なえるメリットがある。
その上でこういうことは早いほうが良いとなり、早速明日から行なうことを考えたが、まだ心に引っかかることがある。
やるとなると、そのための準備をしなければならない。今日はそこまで時間を取ることができないため、とりあえず準備の準備という意識でいることにした。
そんなことを話していると、また別の話が出てきた。
具体的にはドリンクのことだ。この話は矢島から出てきた。
「店長、今話していて思ったんですが、俺たちの商売は居酒屋ですよね。料理メニューも大切ですが、原価率として収益につながるのはドリンク類です。とすれば、料理にプラスしてオーダーしていただく場合、ランチタイムサービスとして、例えば1杯100円くらいにしてはどうかと思うんです。もちろんアルコール類ではなくソフトドリンクに限りますが、今、飲み物としてはお冷だけじゃないですか。そこにはもう少し選択の幅を広げ、夜の部よりも安い価格で提供できれば、お得感もあるんじゃないでしょうか? ドリンクサーバーを導入してフリードリンクという方法もあるでしょうが、導入に際してのコストがかかるかもしれませんので、そこは店長たちで考えていただきたいと思っています。でも今、できることでそういったサービスをスタートして様子を見ても良いかもと思っています。もちろん、全体を見渡し、経営として成り立つかどうかは検討していただければと思っています」
また矢島からの積極的な意見が聞けた。これでは誰が経営者か分からない、といった感じになったが、私はこういう雰囲気が欲しかったので、この意見についてもすぐに賛意を示した。それは美津子も同様で、私たちは目を合わせて返事と共に頷いていた。
この雰囲気に中村も飲まれていたが、その眼には良い意味のライバル心が見られ、今後のミーティングではその結果が期待された。
ただ、この日はそこまでは話が及ばす、ここまでで終了し、全員帰宅の途についた。