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新企画立案 7

 私たちには弁当販売の経験はない。しかも今回は居酒屋のランチタイム企画の延長としての仕事になる。料理を作ることについては厨房もあるし、調理することもできるが、きちんと販売するスタッフも必要になる。お店の営業も一緒に行なうとなると、人手が別枠で必要になる。

 でも今、新たな雇用は経営の圧迫になりかねない。

 となると、1号店・2号店一緒にスタートすることは難しい。まずは1号店でスタートし、とりあえずは夜の部のスタッフと2号店からもヘルプをお願いし、試験的に行なうことになった。弁当の容器についてはある程度のロットで注文しなければならないし、食材のオーダーもこれまでよりも多めにしなければならないが、見込みが読めない分、難しい。

 しかし、何もやらなければ数字は望めないし、今後の感染者の数字も気になる。また再度、緊急事態宣言が出れば経営はより苦しくなる。支援金の申請にしても初めてのことなので税理士の先生と相談しながらだが、おそらく相当数の申し込みがあるだろうから、いつ支給されるかも分からないと先生が言っていた。となると、手持ちの資金で何とか遣り繰りしつつやっていくことになるが、当然限界がある。だが、今は消極的になるのではなく、逆に積極的に攻めることにしている。これはみんなで行なったミーティングで決めたことだし、応援してくれる常連客もいるからだ。ファンの人たちがついているという心強さが私の気持ちを支えている。有難いことだ。

 だからこそ、今回は事前に私なりにリサーチを行なった。ランチタイムの忙しい時はさすがに店を離れることはできないが、出かける時にはアルバイトを補充した上でさりげなく弁当屋さんを回り、客としてその店の人と世間話的なことをしつつ情報を集めた。1店2店では分からないので、1日に2~3軒回り、またコンビニなども見て回り、売れ筋のメニューや売れ方などを見た。

 そこで得た感触だが、せっかくの料理なんだから、少しでも温かいものを提供したい、という思いがより強くなった。

 もちろん、今はレンジで温めることもできるが、メニューによっては水っぽくなったり食感が変わることがある。でも、その場で作る弁当屋さんの場合、ご飯もおかずも温かいものをその場で詰めてくれる。もちろん、季節によっては食材が痛むことがあるので、そこは十分注意することが必要だが、食のプロとしてその点はいつも注意している。もちろん、渡してから一定の時間内で食べてもらうことが必要になるが、その点は渡す時に十分声がけして徹底することになるだろう。こういう点はメニュー構成にも反映させることが必要になり、場合によってはランチタイムで提供しているものをそのまま弁当にできない料理もあるだろう。

 この点はランチタイムとは別の視点で新たなメニュー開発が必要になるかもしれないが、仕事として成功するためにはやれることはやる、という意識で行なわなければならない。

 ただ、いつまでもリサーチをやっているわけにはいかない。実際に次の行動に移らなければただの絵に描いた餅だ。それではいつまで経っても数字に結びつかない。

 だから私は時の流れの一つの区切りである1週間を目安にリサーチを終え、具体的な弁当企画の内容を美津子や矢島、中村と練ることにした。本当は全員でやりたかったが、スタートに際しては話が通る人数に抑え、本格的な企画の目鼻がつきそうな時点で改めて全員に声をかけ、意見を求めることにした。


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