この日、ランチタイムの仕込みは私が早めに店に出て済ませていたので、矢島が店に着いた時には何もやることが無かった。私が休んだ時は矢島が孤軍奮闘していたわけだから、こういう時にそのお返しをする、ということで準備していた。
だからオープン時間までは施術の様子を尋ねることにした。2号店でも同じような展開になっていることは想像に難くなかった。矢島たちの基本的な身体の条件によって、またそれぞれの感性によって具体的なところでは違いがあるだろうけれど、そういう違いも含めて様子を聞くことにした。
「で、矢島君、施術を受けた感想はどう?」
矢島の様子から大体の見当はついていたが、当人の口から話を聞きたかった。
「俺の場合、骨盤の歪みがあるそうです。中村君の場合、腰椎がわずかに曲がっていたそうで、その話は施術後に聞きました。施術中は気持ち良くて、半分くらいは記憶がなく、はっきり覚えていないんですが、中村君も同じようなことを言っていました。でも、眠い中でも覚えていることを比べるように話していると、俺と中村君の施術内容は違っていたようです。身体の狂い方が違うからだと思いますが、以前4~5回くらい同じところに通ったことがあるんですが、そこでは何を相談しても同じことしかやってもらえず、満足感は今一つでした。でも、今日行ったところは自分の問題点にしっかりフォーカスとしているようで、施術の前後の違いがはっきり分かりました」
私は矢島の話を頷きながら聞いていたが、最後のほうの話を聞き、ちょっと得意げな感じの顔になったことを感じながら内容を膨らました。
「そうだろう。俺、以前言ったじゃないか。奥田先生のところはクライアント一人一人の状態に向き合い、その時の状態に合わせた施術をする、ということを。だから効果を感じられると思うんだけど、どう?」
「おっしゃる通りです。以前は整体やリラクゼーションというのはこんな感じなのかと軽く見ていたところがありましたが、今回は全く違う経験をさせていただきました。ありがとうございます」
「そうか、良かったね。これからも定期的に通えるようにするから、普段から体調をキープして頑張ってくれ」
「はい、ありがとうございます。そしてもっと頑張ります。それからもう一つ感じたんですが、手がとても柔らかかったんです。身体の奥に圧が浸透するのは分かるんですが、力んだ感じがせず、自然に入ってくる感じでした。それは中村君も言っていたんですが、以前行ったところは結構グイグイ力を入れられたので、次の日に揉み返しが来ていました。そういうことも行かなくなった理由の一つですが、今日のところはそういうところがなかったので、次の日の心配もないような感じです」
「そうそう、奥田先生のところの施術はそうなんだよ。さっきも言ってけど、俺たちもいくつか通ったけれど今、矢島君が言ったようなことを経験した。でも、奥田先生のところではこれまでそういうことは1回もなかった。そういうことも信頼の理由の一つだよ」
「今回、業種は違いますが、サービスというのはどういうことかを学んだような気がします。これを参考にしながら、ますます頑張ります」
これまで以上に爽やかに話す矢島の顔は、私にとってまぶしく映った。