その日の夜、私は昼間に考えたことを美津子に話した。
「昼、矢島君と話した時に弁当のデリバリーサービスの話が出たんだ。だけど俺はそのシステムをよく知らない。街で複数の業者が配達しているところを知っているけど、手数料が必要になるはずだから、当然その価格は上乗せになる。それを利用していただけるお客様がどう考えるかということが分からないんだ。だから、この件について中村君にも考えてもらい、近いうちにみんなでミーティングをするというのはどうだろうと思った。もし賛成なら明日、中村君に話してもらえないかな」
私は美津子のほうを見ながら話した。美津子は特別に何か考えることもなく賛成した。
「分かった。私ももう少し何か手を考えないといけないと思っていたところなんだ。具体的なプランはないけれど、デリバリーサービスというのは一つの方法よね。でも、私もあなたと同じく、そのシステムの概要は分からないわ」
「そうか。それで一応俺もその後、もし行なうならばということを少し考えてみた。矢島君や中村君も似たようなことを考えると思うけれど、俺たちの間でも何か腹案を考えておく必要があると思う。それも含め、今話したんだけど、基本的には2つのパターンがあると思う。その一つはウチの店でデリバリースタッフを用意し、そのサービスを行なう場合がある」
「あっ、そのこと、私も今、話を聞いた時に考えた。でも、具体的に何人必要かとか、デリバリーのための容器も必要だろうし、自転車やバイクも必要でしょう。そのための予算を使い、結果的にどうなったかという時点で採算が取れない、ということにでもなったら目も当てられないわ。そしてもし、デリバリーの時に事故にあったら、店としての責任もあるし、その後が大変よ」
「そうだな。確かにそういうリスクがある。でも、人数的なことだけであれば、夜の部になかなかシフトが組めないアルバイトスタッフに頑張ってもらうことができる。みんなの給料も捻出できるかもしれないし、他で頼まない分、価格の上乗せもなくて済むので、お客様からは喜ばれるだろうな」
「そうね。お客様にしても買いに行った時とデリバリーの場合の価格に開きがあった場合、抵抗を感じるでしょうね。そう考えると自分のところでデリバリースタッフを揃えることが良いようにも思えるわ」
「でも、繰り返しになるけれどトラブルがあった時の問題点は残る。ということでもう一つの方法だけど、デリバリーの業者と契約する、ということがある。この場合、確実に価格がアップする。お客様がデリバリーだから仕方ないということで納得していただければ良いけど、常連の方には負担だろうな。となると、デリバリーサービスを導入する場合、それによる販路の拡大を考え、二重価格を設定するとか、互いにぶつからないようにメニューそのものを変えるということも必要だろうな。ただ、そうなると仕込みが大変になるし・・・。いずれにしても業者のシステムの詳細が分からない以上、先には進めない。でも、想像できることを挙げてみても、裏方の部分は忙しくなりそうだ。矢島君にしても中村君にしても、これまでのことを考えると、たぶん自分たちでいろいろリサーチしてアイデアを出してくるだろうから、その上でみんなで考えてみよう。それでミーティングの予定だけど、1週間後の夜9時、というのはどうだろう」
「そうね、やっぱり考えてもらうにも時間が必要だろうから、1週間くらいがちょうど良いかもね」