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無限ループは怖い

 何百歩と螺旋らせん状の階段を登る二人。ラミッタは手を頭の後ろで組んで言う。


「何よこれ、どれだけ登らせるつもりなのよ!!」


「まぁ、そう言うな」


 やっとのことで扉が現れ、マルクエンは重いそれを開く。


 部屋の中を見た二人は驚いた。先程のエントランスそのままの部屋が目の前には広がっていたのだ。


「これは……」


「さっきの部屋じゃない」


 動揺する二人だが、また更に階段が続いている。


「この先をまた進めば良いのか?」


 マルクエンがそう言った時に、ラミッタはポーチから傷薬を出して通路に置く。


「何をしているんだラミッタ?」


「おまじないよ」


 またも階段を登る二人、そして扉が待ち構えていた。


 それを開いてマルクエンは驚愕する。


「この部屋!!」


 ラミッタは冷静にスタスタと通路まで歩いた。


「完全に同じ部屋ね」


 ラミッタは床に置かれた傷薬を指さして言う。


「これは……。どうなっているんだ!?」


「知らないわよ」


 ラミッタは片目を閉じてため息をつく。


「試練はもう始まっているって所かしらね」


「なるほどな」


 部屋を見渡すマルクエン。ラミッタは魔力を感知しながら部屋の隅から隅まで怪しい場所がないか調べる。


 十数分後、ラミッタがため息を吐いてマルクエンに近づく。


「ダメね、魔力の妨害が激しくて、全然分からないわ」


 そう言って壁にもたれかかると、なんと一部が崩れてラミッタは尻もちを付く。


「いったぁ……、何よこれ……って!!」


 ラミッタの尻には魔力が込められ、一気に射出される。


「いやああああああ!!!」


 宙を飛ぶラミッタ。そのまま向かい側の壁にぶつかりそうになる。


 とっさに防御壁を張り、激突は免れた。その衝撃を与えた壁からは光が漏れる。


「大丈夫か!? ラミッタ!!!」


 マルクエンは落下するラミッタを受け止めようとするが、顔面でラミッタの尻を受けてしまう。


「ぶぐほっ」


「な、何してんのよ!! このド変態卑猥野郎!!!」


 理不尽に殴られるマルクエン。地面に降り立ったラミッタは赤面していた。


「っつ……。ったく、この塔の神様はいい趣味をしているみたいで」


 そこでラミッタは異変に気付く。壁に小さなヒビが入っていることに。


「なるほどね……。宿敵!! この壁に思いっきり体当たりしてみて」


「体当たり? あぁ、やってみる!!」


 何のことか分からないマルクエンだったが、言われた通りに壁にタックルを決めた。


 壁は崩れ落ち、マルクエンは向こう側へ勢いよく倒れる。


「なっ、壁が!?」


「どうやら、こっちが正解みたいね」


 マルクエンが突き破った通路をくぐり抜けるラミッタ。目の前には上へと続く階段が待っていた。


 階段を登ると、扉が見える。


 これでまた同じ場所だったら嫌だなと思いながらマルクエンが押して開けると、先程までとは別の部屋が広がり、安堵した。


 だが、部屋の中は薄暗くよく見えない。


「行き止まりか?」


「いえ、さっきと同じく何か仕掛けがあるはずよ」


 ラミッタが照明弾を打ち上げようとした、その瞬間。部屋の燭台へ一斉に火が灯る。


 パァッと明るくなり、照らし出されたのは人形ひとがたの石像だ。


 そして、マルクエンは目を疑う。石像が台座から降りて、剣や槍を構えだした。


「戦えって事かしらね?」


 ラミッタは剣を抜き、マルクエンも同じく両手で剣を握る。


「行くわよ!!」


「あぁ!!」


 数十体居る石像が一斉に襲いかかってくる。


 ラミッタは地面を踏みしめ、岩を飛ばす。1体へ直撃し、首がもげた。


 その他数体にも岩は襲いかかり、手や足を粉々にする。


「はあああ!!!!」


 マルクエンは大剣で石像をねじ伏せる。斬るというよりは砕くに近い。


 遠くから弓兵がマルクエンを狙うので、石像の1体を掴み、盾にした。


「ラミッタ!! 頼む!!」


「任せなさい!!!」


 ラミッタは岩と雷を飛ばして弓兵を倒す。


 マルクエンは掴んでいた石像を蹴り飛ばし、顔を踏みつけ粉々にした。


 そのまま剣で周りを取り囲んでいた像を薙ぎ払い、振り下ろされた槍の柄を手で受け止め、こちらに引っ張る。


 よろめいた石像を剣で下から斬り上げ、砕く。


 ラミッタも剣で武器を弾き、至近距離で雷を発射し、石像を倒していった。


 あらかた倒し終えると、ラミッタが何かに気付く。


 破壊した像の欠片が宙へ浮き、合体し始めた。


「何よアレ!!」


 そのまま十倍はあろうかという大きさの1体の石像になりマルクエン達を見下ろす。


「デカいのが来たな」


「ちょっと時間稼いで」


「あぁ、分かった!!」


 ラミッタは気を集中させて詠唱を始めた。マルクエンは巨像の足元にタックルを食らわせてみる。


 グラリと、体勢を崩しそうになるが、仕返しとばかりに剣を振られる。


 飛び退いてかわしたマルクエンは、気を引くために付かず離れずで距離を取っていた。


「今よ!! 離れて!!」


 ラミッタに言われ、全力疾走するマルクエン。


「弾け!!」


 ピシッと巨像の片足が何かに弾かれ、転倒する。


 すかさずラミッタは二撃目を入れた。


「凍てつけ!!!」


 瞬時に巨像は氷漬けになり、自由を奪われ、仰向けに固定される。


 くるりと方向転換したマルクエンは、高く飛び上がって巨像の額に大剣を突き立てた。


「ぐおおおおおお」


 そんな音が響いて、体がサラサラと砂になっていく巨像。


 それと同時に、壁も崩れ、階段が現れた。


「これで、終わったのか?」


「そうじゃない? 知らないけど」


 マルクエンとラミッタは、上の階を目指して歩き始める。

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