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第15話

「|◉〻◉)あちょー!」


 魚類が奇抜なポーズでマグマドラゴンを威嚇してる間、俺たちは見えない精霊の音に注意しながら進めていく。


 しかし此方がマグマ耐性を載せた水魔法を展開すると、同時にブレスで邪魔してくる。

 完璧に対応されるというのは面倒だ。


 何か上手い手はないか?

 虎の子の魚肉ソーセージを貪りながら考え続ける。


 再度ブレス攻撃。

 おかしい、今誰も水魔法を使ってないのに、何に反応した?


「おい、お前ら。今マグマドラゴンが何に反応したかわかる奴居るか?」

「リリー殿が鬱陶しかっただけでは?」


:草。

:村正ちゃんの中でのリリーちゃんほんと悪者だよね

:でも確かに水魔法対策用のペットとしてはおかしな動きしてた

:俺も思った。もしかしてあれ、音精霊の操作入ってたり?

:完全フリーじゃない訳か


 なるほどな、だとしたら完全独立ではない。

 攻撃パターンが固定化してくれるんならありがたい。

 目に見える分やりやすいからな。


「パスカル、お前このエリアの天井を水で満たせるか?」

「時間はかかるが可能だ。まだダークマターはあるからな」

「この際氷結させられるかどうかは関係ない。なるべく天井を水で満たしたい、頼めるか?」

「了解」


:何をする気だ?

:何か仕掛けるんだろう?

:相変わらず仲間への信頼が高いな

:否定から入らず頼れるってすごいことだよ

:頼らざるを得ないんだよなぁ、この場合

:危険地帯に連れてこられた憂さ晴らしもあり得る

:それだ!!


 若干、それもある。

 毎度毎度上級精霊の場所にまで案内しやがって。


 お陰でこっちはぶっつけ本番で苦労のし通しだ。

 案内役だけして、戦闘にはあまり参加しないパスカルを如何に扱き使うかが俺の命題になりつつある。

 後ジャスミンもだな。

 お前この中で一番強いんだから前に出ろ。

 というか援護ぐらいしてもバチはあたらねぇぜ?


「オメガキャノン、リリーの援護を頼む」

「対価は?」

「リリーからアキカゼさん経由でなんでも強請れ! 俺は何も出さん!」

「了解」


 仕方ないな、と言わんばかりに重い腰を上げて冷凍ビームを噴霧した。若干リリーも巻き添えになっている。


 滑った体表は熱には弱いが寒さには弱いらしい。

 尾鰭が凍って動きを悪くしたところでマグマドラゴンの体当たりを食らっていた。


「|◉〻◉)ちょっと! 僕にも当たってますよ!」

「回避してくれ」

「|◉〻◉)この人、敵だ!」

「ちょっと掠めたぐらいで大袈裟な奴だな」


 腰から長筒を取り出して構えるオメガキャノン。

 大砲以外の攻撃もあったのか。

 冷凍ビームは知ってたが、それ以外のはあまり見たことがなかったので新鮮だ。


 ぶしゅう、と紫色の霧がリリー毎マグマドラゴンに向かって吹き付けられる。

 すごく嫌な予感がした。


「|◎〻◎)ぐえー」


 リリーはその場で昏倒し、泡を吹いて手足を痙攣させていた。

 不死になったとは言え、そんな非人道的な攻撃使ってんじゃねぇ!


「おい、今の攻撃なんだ?」

「毒ガス」

「仲間の! 居る場所で! なんてもん使ってんだ!」


 握った拳がオメガキャノンの横面を撃ち抜く。

 本当こいつ、人の迷惑考えないな!

 自作の武器さえぶっ放せればなんだっていいのか?


:正論パンチ

:いやぁ、相変わらず出禁レベルの攻撃で草

:オメガキャノンにとって唯一誘ってくれる友達だもんな

:俺なら即行フレンド外すぞ?

:モーバでさえ手に余るからな

:配信の賑やかし役に呼ぶメンツじゃねぇんだわ


「何しやがる。こいつはお前の為に張った煙幕だぜ、モーバ」

「俺の為?」

「そうだ。意図的に視界の見えない状況を作り出してやったんだ。大技を決めるつもりだろ? 俺はそのサポートをしたのに、みんなしてひどいぜ」

「前衛はリリーの他に村正も居るんだが?」

「あー、そうだっけ?」


 そうだっけ、じゃないんだよなぁ。

 縮地で移動距離は稼げるが、突然の行動に対処できないこともままある。


 だが、こいつなりのサポートだと言うのならせいぜい利用してやろう。

 霧は風で払えるが、もう一つ。

 局地豪雨でも払うことが出来るんだぜ?


 俺の水魔法のとっておきを見せてやる。


「──妖精誘引+スコール+アイスレイン!!」


 アキカゼさんの開拓してくれたシステムにはスキルを同時に扱うダブルスキルと言うものがある。

 本来なら一つづつ選択して発動する魔法。


 だがこれのおかげで俺は新しい魔法の開発に着手できていた。


 パスカルの用意してくれた媒介があるので、SP消費はそこまででもない。


 エリア攻撃ができるのはお前だけじゃねぇんだぜ? 音精霊。


「パスカル、こんだけ濡れてりゃ氷製作は容易か?」

「俺の作った水だからな。それに氷結範囲が狭ければ狭いほど効率も上がる。任せてくれ!」

「オメガキャノンも冷凍ビームを頼む」

「おっしゃ!」

「村正!」

「ここに」


 天井からシュタッと飛び降りてくる村正。

 華麗な身のこなしは相変わらずだが、どこに潜伏していたのか謎だ。


 見た目は侍なのに、相変わらずアクロバティックな奴だよ。

 忍者かなんかなの?


「再度アタックチャンスだ。抜かるなよ? 俺の魔法はあくまで足止めにしかならん。トドメはお前にかかってる。いいか?」

「承知!!!!!!!」


 満面の笑顔。

 花が咲いた様な笑みとは程遠い、強敵に挑む笑みが村正に張り付く。


 そう言うところだぞ、お前。

 色気以前の問題なんだわ。


「ジャスミン、あんたもナビゲートフェアリー役が無くなって暇だろ。攻撃に参加しちゃくれないか?」

「いやぁ、あの場所に飛び込むのはちょっと」


 戦場の様子に顔を顰めるジャスミン。

 何言ってんだこいつ?


「毛皮が濡れるのはそんなに嫌か?」

「頗る嫌だな。それにこの大雨、匂いが消えるから自慢の鼻も活かせない」

「本当、ハーフビーストって面倒くさい奴らだよな!」


:村正ちゃんもハーフビーストな件

:パスカルもだぞ?

:そもそもパーティーメンバーの半数ハーフビーストなのだが

:何を今更そんなわがまま言うんでしょうねぇ、この人

:地上じゃなきゃ本領発揮できないのかな?

:居るよな、過去の栄光に縋るハーフビースト達

:その分、どんな場所でも怯まず立ち向かえる人は強いよ

:猪突猛進なだけ

:ある意味それがこの戦場でメリット以外の何者でもない件

:パスカルに至っては安全地帯からの遠隔攻撃だしな

:この肉食獣、やたら消極的じゃないですか?

:ハーフビーストの風上に置けない奴って思われてそう

:だが貢献度は高いぞ?

:その貢献度を上位精霊の案内で塗り替える奴!

:本当にその点だけはクソ


 俺の魔法が決め手となり、音精霊の契りを結ぶ。


 地(視覚+)  _3

 水(妖精誘引) _3

 火(マグマ耐性)_3

 風(スキル+) _2

 音(聴覚+)  _2


 これで風と音がリーチになった。


 後は地下じゃまるで役に立たないジャスミンと、役には立つがいちいちフラグを立てないと気が済まない陸ルートの三つ目を決めれば後は契りを重ねるだけだ。


 そして5に上げるべき契りも考えてある。


 妖精誘引は俺にとっての生命線になりつつある。

 他にはマグマ耐性か。

 この二本で進む予定だ。

 5に至れるのは2つまで。

 もう一個は4まで上げる事は出来るがそれ以上進めないのだ。

 だからこそのチーム戦。


 早々に種族の壁が出てきたが、後は慣れてもらうしかないな。

 パスカル任せはこれからやめて、次はどこに行くか、上位か下位か決めてから行くことになった。


 軽く舌打ちしたパスカルが印象的だった。

 本当、そう言うところだぞお前。

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